Natalie Gagliordi|コンテンツ・ストラテジスト| 2023年6月5日
好き嫌いにかかわらず、スプレッドシートは不滅です。エクセルやスプレッドシートが今後もビジネスに不可欠なツールであることに変わりはないものの、それらの機能では対応できないほど複雑な分析を行うビジネス・ユーザーがとても増えてきています。多くのチームではたとえばスプレッドシートのデフォルトの機能を使って、仕事の整理、プロジェクト管理、データのレポート作成などのために使用しています。分析を行う場合、ビジネスグループは、必要な無数のソースからデータを収集するための総合的な受け皿として、スプレッドシートを利用することがよくあります。しかし、このような複雑な分析タスクにスプレッドシートを使用すると、手作業が多くなり、人為的ミスのリスクが生じます。また、適切なツールがあればつかめたはずのチャンスを逃してしまう可能性につながりかねません。
スプレッドシートは、多くのビジネス活動において有能なツールですが、本来想定されていない業務に誤った方法でスプレッドシートを使用することで、リスクが生じます。本来の機能の域を超えたタスクにスプレッドシートを使用すると、データ入力ミス、計算ミス、セキュリティの脆弱性、スケーラビリティの問題、コンプライアンスの不備などのリスクが生じます。複数のスプレッドシートを使用している場合、データは多くのファイルにまたがっていることが多く、意思決定者が頼りにできる、一貫性と信頼性を備えた単一のビジネスビューを作成することが困難になります。また、スプレッドシートには一般的にガバナンス・プロセスがないため、意思決定者は気付かれないエラーにより誤ったデータを提供される可能性があります。また、スプレッドシートの分析や推奨の機能にも限界があります。これらの問題が重なると、スプレッドシートが拡散し、情報が古くなり、ヒューマンエラーのリスクが高まって分析が信頼できなくなる「スプレッドシート地獄」と呼ばれる状況に陥る可能性があります。
主なポイント
スプレッドシートは多くの産業で使用されており、適切で対象を絞った仕事には有効です。しかし、手作業によるデータ入力やアクセス制御の欠如によって引き起こされるセキュアでないデータのエラーなど、スプレッドシートの広範な使用には多くのリスクが伴います。また、スプレッドシートはパフォーマンス上の限度があるため、ビジネスが長期的に成長するにつれて拡張性を失い、部門をまたぐチームで利用する際の複雑さや、多面的な業務、高度な相互利用、コラボレーションや調整の必要性に直面すると、すぐに限界を迎えます。
スプレッドシートは、分析追跡にチームが必要なデータをまとめるために使用するデフォルトのオプションとされることがよくあります。その際、考慮しなくてはいけない問題点があります。まず、スプレッドシートは手軽に使い始めることができますが、最新のデータを維持するのは困難です。データセットの拡散が多いため、最初のデータセットに複数のバージョンが存在することが多く、意思決定者によるデータと結論への信頼が失われることになります。それから、スプレッドシートは数値データの処理には適していますが、非構造化データには適していません。スプレッドシートに依存していると、多くの企業がデータの意味を理解するのに苦労し、詳細なデータ分析を通じて有用なインサイトを得る機会を逃す可能性があります。
スプレッドシートは、柔軟性があり、導入も使用も簡単で、ビジネス・ユーザーにとっては基本的に無料と、他のツールに比べて総じて安価であるため、ビジネス・ツールとして人気があります。また、スプレッドシートは、ITサポートや特別なソフトウェアを必要とせず、迅速かつ簡単に作成できるため、多くの部門で利用しやすいツールとなっています。ユーザーは、複数のソースやシステムからデータを取得する必要がある場合が多く、前述のような理由から、データ収集のためにスプレッドシートの利用を選択します。
また、スプレッドシートは、大規模なIT戦略を立案しなくても、ビジネス・チームが十分な情報に基づいた意思決定を行うために必要なデータを並べ替えたり、計算を行うといった作業ができる環境を提供します。業界を問わず、財務および財務関連部門において、スプレッドシートは財務モデルやレポートの作成といった中核業務に不可欠です。分析作業にスプレッドシートを用いるもう一つの大きな理由はデータ準備です。 ほとんどの分析ツールは、データ準備データ準備 およびエンリッチメント機能が組み込まれていません。そしてデータは分析に最適でない形式で保存されていることが多いため、ビジネスマンが使用できる形に加工するためにエクセルやスプレッドシートにエクスポートされています。
スプレッドシートは、会計、データ管理、財務分析などのビジネス目的で使用されます。そのような業務には便利ですが、より高い規模や機能を求めるとリスクが生じます。中堅以上の企業では、スプレッドシートの管理はますます難しくなります。データ・ガバナンス、セキュリティとアクセス制御、データの整合性、および規制コンプライアンスに関連する問題は、その量とユーザー数が増えるにつれて、対処がますます複雑化します。ここでは、企業がスプレッドシートを使用する際に直面する最も一般的なリスクを紹介します。
1.エラー:手入力によるミスであれ、古いデータの使用であれ、スプレッドシート・ベースの分析は、特に分析が大規模で複雑なデータセットに基づいている場合、エラーが発生しがちです。たとえ小さなミスであっても、特にそれが長期間発見されなければ、重大な結果をもたらす可能性があります。また、分析などの目的でデータを操作する場合にもエラーが発生する可能性があります。
2.データの安全性:スプレッドシートは簡単にコピー、共有、配布できるため、不正アクセスやデータ侵害のリスクが高まります。スプレッドシートに保存された機密データは、分析や視覚化などのタスクのために他のシステムに移植された場合にも危険にさらされる可能性があります。
3.限られたスケーラビリティ:スプレッドシートは、レポートやユーザーの急増は容易に管理できますが、大量のデータや複雑な計算、またビジネス分析を処理する機能は備えていないため、パフォーマンス不足やエラーにつながります。
4.透明性の欠如:スプレッドシートのデータの出所を追跡したり、計算の背後にあるロジックを理解することは、特に多くのソースからのデータを使用して他の誰かが作成した場合、困難な場合があります。
5.ワークフローの効率化:スプレッドシートを介したデータ共有には問題や制限があるため、スプレッドシートの使用はビジネス・プロセス全体にわたる手作業や反復的なプロセスにつながり、同じ問題や類似した問題を解決するために重複した作業を行う原因となります。
6.仕事のサイロ化: スプレッドシートは通常、個人やチームごとに作成および使用されるため、情報のサイロ化が発生し、データに矛盾やエラーが生じる可能性があります。
7.バージョン管理:複数のユーザーが同一のスプレッドシートを編集している場合、そのスプレッドシートが適切に使用されていないと、最新のバージョンの追跡が困難になる可能性があります。これにより混乱が生じ、異なるバージョンのスプレッドシートで作業が行われることになる恐れがあります。スプレッドシートはクラウド・バージョンを使ってリアルタイムのコラボレーションをサポートすることができますが、多くのユーザーは、頭痛の種となるデスクトップ・バージョンを好んで使用しています。
8.時間の無駄:スプレッドシートの維持と更新は従業員の時間を費やし、特に大量のデータをインポートする場合は、より重要なビジネス活動からリソースと時間を奪う可能性があります。
9.限られたデータ範囲:スプレッドシートは、分析作業に重要なデータ タイプ、特に大きなテキスト・ドキュメントなどの非構造化データを扱うには限界があります。
10.信頼性の欠如:これらの要因のいずれかにより、ビジネス・リーダーは、意思決定のために利用している情報が古い、不正確、または偏っていると考えるようになる場合があります。データを信頼しないリーダーは、真のデータドリブンではなく、経験に基づいた直感的な意思決定に立ち戻ります。
企業は、スプレッドシートに関連する潜在的なリスクを慎重に検討し、コントロールとプロセスを確立してそれらを管理することが重要です。これには一般的に、現在のスプレッドシートの使用方法への対処、適切な是正措置、リスクの可能性を継続的に低減するためのベストプラクティスと新しい企業方針の導入が含まれます。そのためには、スプレッドシートでは対応できないニーズに応える新しいアプリケーションが必要になる可能性があります。次に、スプレッドシートのリスクを軽減するための手順を示します。
1.スプレッドシートの使用方法の特定:企業内でどのようにスプレッドシートが使用されているかを確認し、リスクの程度を把握します。
2.リスクの特定:組織でどのスプレッドシート・リスクが最も重要であるかを評価します。それらのリスクには、データ入力ミス、不正アクセス、データ損失、不完全または古い情報などが含まれます。
3.コントロールの実施:パスワード保護、バージョン管理、データ検証の実施は、スプレッドシートのリスク軽減に役立ちます。
4.スプレッドシートのベストプラクティスに関するスタッフのトレーニング:スプレッドシートを使用するスタッフ全員に、計算式の監査、エラーチェック、バージョン管理などの技術に関するトレーニングを確実に実施します。これには、スプレッドシートがツールとして不適切な場合についてのトレーニングも含まれます。
5.重要なスプレッドシートのレビューとテスト:重要な意思決定プロセスで使用されるスプレッドシートは、正確性と妥当性を確保するために定期的に監査する必要があります。この方法を広範囲に拡大することは現実的ではありませんが、重要なシステムのエラーが深刻な損害を引き起こす前に特定し、修正する上で役立ちます。
6.代替策の検討:ビジネスの複雑さに応じて、スプレッドシートの使用に関連するリスクを減らすために、専門の分析ソフトウェア、特にクラウドベースのプラットフォームといったスプレッドシートの代替策を検討します。
使い方を誤ると、瞬時に多額のコストが発生してしまう結果を招くこともあります。スプレッドシートにおける間違いは、時間とお金の面で大きな代償を払うだけでなく、評判を落とし、仕事を失うことにもつながりかねません。ここでは3つの実例をご紹介します。
今後もスプレッドシートは常にその役割を担っていくでしょう。しかし、複数のデータ・ソースを組み合わせたり、機械学習機能を使ってデータ内の隠れたパターンを繰り返し検出するなどの技術を使って、データから価値ある情報を発見しようとする場合には、スプレッドシートは役に立ちません。同様に、プロジェクトのステータスを追跡するためにスプレッドシートを使用している場合は、専用に構築されたプロジェクト管理ツールがより適切なオプションとして考えられます。もちろん、これらのオプションはすべて費用がかかりますが、スプレッドシートを起用することで費用が増加することはありません。しかし、もし予算項目の設定が可能であれば、次にスプレッドシートに代わる方法をいくつかご紹介します。
スプレッドシートは多くのユース・ケースで強力なツールとなり得ますが、分析に使用する場合はその限界と潜在的なリスクを認識することが重要です。これらのリスクを軽減するために、ビジネス部門は信頼できるデータに基づいて構築された分析ドリブンな文化を取り入れ、より多くの機能性、セキュリティ、およびガバナンスを備えた代替ツールの導入を検討する必要があります。
セキュアな 分析プラットフォームは、スプレッドシートよりも優れた機能を提供し、物理的なファイルに分散しているロジックを一元化して、アクセス可能で管理された場所で誰もが使用できるようにすることで、データ・エクスポートの必要性を減らすことができます。Oracle Analytics は、社内およびサードパーティのデータセットを組み合わせて、追跡可能、共有可能、反復可能なビジネス・プロセスで活用するために必要なすべてのデータ操作機能を提供します。AI、機械学習、自然言語処理などの最新のデータ分析テクノロジーを提供するOracle Analyticsは、ビジネス・リーダーが理解し信頼できる、よりタイムリーで正確なデータに基づいて、企業がより適切な意思決定を行えるように支援する完全な分析ソリューションです。
Gartner Magic Quadrant for Analytics and Business Intelligence Platforms
スプレッドシートを使うことのデメリットとは
スプレッドシートの主な欠点は、データの不安定性、スケーラビリティの制限、コストのかかるヒューマンエラーに対する脆弱性です。
分析にスプレッドシートを使う上での欠点とは
スプレッドシートは管理が難しく、データ管理機能がないため、複数のデータ・ソースを使用する複雑な分析には適していません。
スプレッドシートの一般的な問題の例とは
スプレッドシートのよくあるエラーには、手作業での更新によるコピー&ペーストの失敗やデータの陳腐化などがあります。
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