Oracle Data Platform for Financial Services

Fraud prevention and anti–money laundering

シームレスな顧客サービスを提供しながらリスクを最小化

金融詐欺は、金融サービス業界にとって大きな課題となっています。さまざまな形態があるだけでなく、エンティティ間の関係が複雑で隠れたパターンがあるため、検出が困難な場合が多々あります。また、金融機関は、不正行為を検知した場合、リアルタイムで顧客に通知し、顧客のクレジットカードをブロックするなど、不正行為を阻止するための即時措置を講じる必要があります。

金融サービス業界も規制の対象となっており、マネーロンダリング防止(AML)活動を報告し、Know Your Customer(またはKYC)プロセスを使用して顧客に対するデューデリジェンスの完了を義務付けられています。それには多くの場合、商品、市場、地域をまたいだデータを分析し、AMLに必要な関係やパターンを特定することが必要となります。

マネーロンダリングの概念としてはシンプルです。簡単にいうと、汚れた資金を転々と移動させて合法的な資金と混ぜ合わせ、有形資産へと変えます。実際はそれよりもはるかに複雑で、多くの場合、電子メールや住所といった同様の情報(しばしば盗まれた)をもとに合成されたIDを使用して作られたアカウント間で、正当な送金を長期にわたり複雑に繰り返す方法がとられます。つまり、膨大な量のデータを扱うため、AMLプログラムには、グラフ分析などの高度な分析技術をサポートする統合データ・プラットフォームが不可欠です。

機械学習で顧客と金融機関の両方を保護

金融サービス業界は引き続き厳しい監視と規制下に置かれていますが、マネーロンダリング対策やテロ資金対策ほど、これほど規制の目が厳格化してる分野はないでしょう。巨大な犯罪ネットワークによって引き起こされる金融詐欺は、巧妙かつ増大する課題であり、企業や全世界にインサイトを提供するアンチ・マネー・ロンダリングソリューションが必要とされています。

次のアーキテクチャは、高度なアナリティクスや機械学習などのオラクルのコンポーネントと機能を組み合わせて、データ分析のライフサイクル全体をカバーし、不正行為の兆候となる行動の異常なパターンを特定するためにAMLチームが必要とするインサイトを提供するデータ・プラットフォームを構築する方法を示しています。

不正防止およびAMLの図解と説明

この図は、金融サービス向けOracle Data Platformを使用して、不正防止やAML活動をサポートする方法を示しています。このプラットフォームは、以下の5つの柱を掲げています。

  • データソース、検出
  • 接続、取込み、変換
  • 永続化、キュレーション、構築
  • 分析、学習、予測
  • 測定、行動

データソース、検出の柱には、2つのカテゴリーのデータが含まれます。

ビジネス・レコード(ファースト・パーティ)データは、クレジットカードの取引、口座情報、ATMイベント・ストリームから構成されます。

サードパーティ・データにはソーシャルフィードが含まれます。

接続、取込み、変換の柱は、4つの機能で構成されます。

一括転送には、OCI FastConnect、OCI Data Transfer、MFT、OCI CLIを使用します。

バッチ取り込みには、OCI Data Integration、Oracle Data Integrator、DBツールなどを使用します。

変更データの取得には、OCI GoldenGateとOracle Data Integratorを使用します。

ストリーミングの取り込みには、OCI StreamingとKafka Connectを使用します。

4つの機能はすべて、永続化、キュレーション、構築の柱の中でのクラウド・ストレージやデータ・レイク機能に一方向で接続されます。

さらに、ストリーミングの取り込みは、分析、学習、予測の柱の中で、ストリーム処理に接続されます。

永続化、キュレーション、構築の柱は、4つの機能で構成されます。

サービング・データストアには、Autonomous Data WarehouseとExadata Cloud Serviceを使用します。

クラウド・ストレージやデータレイクにはOCI Object Storageを使用します。

バッチ処理にはOCIデータ・フローを使用します。

ガバナンスにはOCI Data Catalogを使用します。

こうした機能は、柱の中で接続されています。クラウド・ストレージやデータレイクはサービス・データストアに一方向に接続され、バッチ処理にも双方向に接続されます。

分析、学習、予測の柱につながる機能は1つあります。サービング・データストアは、分析と可視化、AIサービス、機械学習の機能に一方向で、ストリーミング分析の機能に双方向で接続します。

分析、学習、予測の柱は、4つの機能で構成されます。

分析および可視化には、Oracle Analytics Cloud、GraphStudio、およびISVを使用します。

AIサービスには、OCI Anomaly Detection、OCI Forecasting、OCI Languageを使用します。

機械学習には、OCI Data ScienceとOracle Machine Learning Notebooksを使用します。

ストリーミング分析には、OCI GoldenGate Stream Analyticsを使用します。

測定、行動の柱は、ダッシュボードおよびレポート、アプリケーション、機械学習モデルの3つの利用方法で構成されます。

人とパートナーは、地理的ヒートマップ、規制レポート、高リスク・エンティティの予測分析、不正の傾向で構成されます。

アプリケーションは、トランザクション異常検出、テキスト・マイニングおよび自然言語処理(NLP)で構成されます。

機械学習モデルは、ネットワーク分析、行動分析、ウォッチリスト・スクリーニングで構成されます。

3つの中心的な柱である、取り込み、変換と永続化、キュレーション、構築と分析、学習、予測は、インフラ、ネットワーク、セキュリティ、IAMでサポートされます。


金融サービス機関が不正の可能性のある行為を特定できるようにするために、アーキテクチャにデータを取り込む方法は、主に3つあります。

  • まず、トランザクション・システムやコア・バンキング・アプリケーションから得られるデータが必要です。このデータは、例えばソーシャルメディアからの非構造化データを含む、サードパーティ・ソースからの顧客データで強化することができます。変更データの取得を必要とするリアルタイムまたはほぼリアルタイムの抽出が頻繁に行われることは一般的であり、データはOracle Cloud Infrastructure (OCI) GoldenGateを使用して取引、リスク、および顧客管理システムから定期的に取り込まれます。OCI GoldenGateは、進化するデータ・メッシュ・アーキテクチャの重要なコンポーネントでもあり、「データ・プロダクト」は、エンタープライズ・データ台帳とポリグロット・データ・ストリームを介して管理され、継続的な変換よびロード処理を実行します(モノリシック・アーキテクチャで使用されるバッチ取り込みや抽出・変換およびロード処理ではない)。
  • 現在ではストリーミング取込みを用い、IoTセンサー、Webパイプライン、ログ・ファイル、POSデバイス、ATM、ソーシャルメディアなどのデータソースからOCI StreamingやKafkaを介してリアルタイムにデータを取込むことができます。このストリーム・データ(イベント)は取り込まれ、データがクラウド・ストレージに保存される前に、基本的な変換と集計がいくつか行われます。取り込みと並行し、ストリーミング分析を利用して、複数のソースからの大量のデータをリアルタイムでフィルタリング、集約、相関、分析することができます。これにより金融機関は、例えばATMで何度も取引を繰り返すような不審な取引など、ビジネスの脅威やリスクを検知できるだけでなく、全体的な不正防止効率に関するインサイトを得ることができます。相関するイベントと特定されたパターンは、生データのデータ・サイエンス調査のために(手動で)フィードバックすることができます。さらに、イベントの発生に応じて、EメールやSMSで詐欺の可能性を顧客に通知したり、漏洩したデビット・カードをブロックしたりといった対応をとることができます。Oracle GoldenGate Stream Analyticsは、ストリーミング・データに対してリアルタイムに分析計算を行うインメモリ・テクノロジーです
  • リアルタイムのニーズは進化していますが、銀行、顧客、金融のコア・システムからの抽出は、抽出、変換、ロードのプロセスを使用したバッチ取り込みが最も一般的です。バッチ取り込みは、ストリーミング取込みをサポートできないシステム(たとえば、古いメインフレーム・システム)からデータをインポートするために使用します。マネーロンダリング防止と顧客身元確認プロセスでは、当座預金およびクレジット口座の取引処理システム、カスタマー・インテリジェンスを提供する第三者のデータ・フィードなど、さまざまな業務システムからデータを入手します。データは、製品や地域を超えて提供されます。バッチ取込みは、10分や15分といった頻度で行うことができますが、個々のトランザクションではなく、トランザクションのグループを抽出して処理するため、性質的にはあくまで一括処理です。OCIは、ネイティブのOCI Data Integrationサービスや、OCI Computeインスタンス上で動作するOracle Data Integratorなど、バッチ取り込みを処理するさまざまなサービスを提供しています。データの量や種類によっては、オブジェクト・ストレージにロードしたり、構造化されたリレーショナル・データベースに直接ロードして永続的に保存することが可能です。

データの永続化と加工は、3つの(オプションとしては4つの)コンポーネントの上に構築されています。

  • 取り込まれた生データは、アルゴリズムのためにクラウド・ストレージに保存されます。主要なデータ永続化層としてOCI Object Storageを使用します。OCI Data FlowにおけるSparkは、トランザクション、ロケーション、アプリケーション、ジオマッピングなどのデータに対する主要なバッチ処理エンジンです。バッチ処理には、基本的なノイズ処理、欠損データ管理、定義されたアウトバウンド・データセットに基づくフィルタリングなど、複数の作業が含まれます。結果は、必要な処理と使用されたデータ・タイプに基づいて、さまざまな層のオブジェクト・ストレージまたは永続的なリレーショナル・リポジトリに書き戻されます。
  • これらの処理されたデータセットは、その後の永続化、キュレーション、分析のためにクラウド・ストレージに戻され、最終的には、Oracle Autonomous Databaseが提供するサービング・データストアに最適化された形でロードされます。データは現在、キュレーションとクエリのパフォーマンスのために最適化されたリレーショナル形式で保持されています。また、アーキテクチャの好みによっては、マネージドHadoopクラスタとしてOracle Big Data Serviceで実現することも可能です。このお客様事例では、機械学習モデルのトレーニングに必要なデータはすべて、オブジェクト・ストレージから生の状態でアクセスされます。モデルをトレーニングするために、過去のパターンと取引レベルの記録を組み合わせ、潜在的なリスクを特定および分類します。これらのデータセットとデバイス・データや地理空間データなどを組み合わせることで、データ・サイエンスの技術を適用して、潜在的な不正行為に対する予測精度を高めるために既存モデルの改良や新しいモデルの開発を行なうことが可能になります。このタイプの永続性は、外部表やハイブリッド・パーティションを介してアクセスされるデータストアの一部であるスキーマのデータを保存するために使用することもできます。

分析、予測、行動をする機能は、3つのテクノロジー・アプローチに基づいて構築されています。

  • Oracle Analytics Cloudなどの分析および可視化サービスは、サービング・データストアからキュレートされたデータに基づいて分析を提供します。これには、記述分析(現在の不正識別の傾向やフラグを立てたアクティビティをヒストグラムやチャートで説明)、時系列分析などの予測分析(将来のパターンの予測、トレンドの特定、不確実な結果の確率の決定)、規範分析(最適な意思決定につながる適切な行動の提案)が含まれます。こうした分析は、今期において実際にフラグを立てた不正行為の前期との比較などといったことを明確化する上で利用することができます。
  • 高度な分析とともに、機械学習モデルの開発、トレーニング、導入が行われます。トレーニング済みのこれらのモデルは、現在および過去の取引データに対して実行され、取引や行動のパターンを照合することでマネーロンダリングを検出することができ、結果をサービングレイヤーに戻して保持し、Oracle Analytics Cloudなどの分析ツールを使用して報告することができます。また、モデルのトレーニングを最適化するために、モデルとデータをOCI Data Scienceなどの機械学習システムに提供し、より効果的なマネー・ローンダリング防止パターン検出のためのモデルをさらにトレーニングしてからプロモーションをすることも可能です。こうしたモデルは、API経由でアクセスしたり、サービング・データストアに導入したり、OCI GoldenGateストリーミング分析パイプラインの一部として組み込むことができます。
  • さらに、クラウド・ネイティブな人工知能サービスの高度な機能を利用することも可能です。
    • OCI Anomaly Detectionは、重要なインシデントにフラグを立てるビジネス固有の異常検知モデルを簡単に構築し、検知と解決を迅速化する人工知能サービスです。このお客様事例では、トランザクションのライフサイクル中、監査中、またはベンダー、業者、トランザクションの種類に基づく特定のコンテキストなど、さまざまなシナリオで不正を検出するためにこうしたモデルの導入を行います。OCI Anomaly Detectionは、過去のデータを利用し、適切な異常検知モデルを構築することで、このようなタイプの不正をすべて特定することができます。例えば、データセットに取引の種類と金額、場所(緯度と経度)、ベンダー名などの詳細が含まれている場合、OCI Anomaly Detectionは、不正行為が取引金額、取引口座、取引発生場所、取引を行ったベンダーに関連しているかを特定できます。
    • OCI Forecastingは、次の日、週、月のトランザクション数、トランザクション金額などの指標を予測するために、現在の指標と影響する市場環境の関数として使用することができます。こうした予測は、マネーロンダリングやその他の不正行為に対する安全対策のための、計画や基本的な予想の設定に利用することができます。
    • OCI LanguageとOCI Visionは、不正検知やAML活動のためにデータを強化するために役立つドキュメントやテキストを取り込むことができます。
  • データ・ガバナンスもまた、重要な要素です。これは、データレイクハウス・エコシステム内のすべてのデータソースに対して、データ・ガバナンスとメタデータ管理(技術メタデータとビジネス・メタデータの両方)を提供する無料サービスであるOCI Data Catalogによって実現されます。また、OCI Data Catalogは、Oracle Autonomous Data WarehouseからOCI Object Storageへのクエリにおいて、保存方法に関係なくデータを迅速に検出する方法を提供する極めて重要なコンポーネントです。これにより、エンド・ユーザー、開発者、データ・サイエンティストは、アーキテクチャ内のすべての永続データストアで共通のアクセス言語(SQL)を使用することができます。
  • 最後に、現在のキュレーションおよびテスト済みの高品質で統制されたデータとモデルは、データメッシュ・アーキテクチャ内でデータ製品(API)として公開し、金融サービス組織全体に提供することができます。

適切なデータ・プラットフォームで不正防止とAML活動を強化

Oracle Data Platformは、マネーロンダリングをより効果的に検出し、金融犯罪調査の精度と効率を高め、報告プロセスを合理化してコンプライアンス・コストを抑えることができるよう、組織を支援します。

関連リソース

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一般的なアーキテクチャ

  • Apache TomcatとMySQL HeatWave Database Service
  • Oracle Weblogic on KubernetesとJenkins
  • 機械学習(ML)およびAI環境
  • Tomcat on ArmとOracle Autonomous Database
  • ELKスタックによるログ分析
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