Oracle Data Platform for Financial Services

Improve risk calculations and regulatory reporting

規制レポートの課題

世界中の規制当局によるレポート要件の複雑化に伴い、規制レポートのコストとリソースの負担は近年急増しています。絶え間ない変化のペースへの対応に苦戦している金融機関は、拡大するデータ要件をより効率的かつ正確に満たす方法を見出すとともに、データ・アーキテクチャを戦略的に発展させてパフォーマンスを向上し、成長を促すことが求められます。

多くの金融サービス機関は、規制レポートの作成に多大な時間と熟練した人材を浪費しています。データの品質チェックを行い、データのサイロ化を排除する自動化システムがなければ、銀行は膨大な時間をかけてレポートを見直さなければ、規制当局への提出書類が正確であると確信することができません。例えば、ローン・システムは口座およびトランザクション・レベルで、ローン組成システムは照会レベルで、クレジットカード・システムはカードおよびトランザクション・レベルでデータを取得するというように、システムによってデータを取得するレベルが異なるため、望ましい粒度でデータにアクセスすることもまた課題です。一貫した粒度でデータを分析することで、金融機関は業務、顧客、市場を全方向から理解することができます。これにより、一貫性のない方法で集計または分解した場合に見落とされる可能性のある、関連性、パターン、傾向を特定しつつ、文脈に沿ってデータを見ることができます。

こうした問題に対処するため、金融サービス機関はリスク計算、規制レポート、コンプライアンスへのアプローチを包括的なプロセスとして再定義し、データの取得と分析から規制当局への最終提出書類を含むレポートまで、エンドツーエンドの自動化とガバナンスを目指しています。

機械学習とAIによるコンプライアンスおよびリスクのより効果的な管理

次のアーキテクチャは、高度な分析、AI、機械学習などのオラクルのコンポーネントと機能を組み合わせることで、データ統合、データ品質、標準化、処理、系列化、および俊敏性を促進する、規制レポートとリスク計算のための包括的なデータ・プラットフォームを構築する方法を示しています。このデータ・プラットフォームは、金融機関が規制要件を満たし、タイムリーで正確なレポートを作成し、効果的なリスク計算を行うために役立つ堅牢な基盤を提供します。

リスク削減と規制レポートに関する図と説明

この図は、ヘルスケア向けOracle Data Platformを使用して、パフォーマンス監視により価値ベースのケアをサポートする方法を示しています。このプラットフォームは、以下の5つの柱を掲げています。

  1. 1 データソース、検出
  2. 2 取込み、変換
  3. 3 永続化、キュレーション、構築
  4. 4 分析、学習、予測
  5. 5 測定、実行

Data Sources、Discoveryの柱には、3つのカテゴリーのデータが含まれます。

  1. 1.Oracle Appsには、Fusion SaaS、Oracle E-Business SuiteおよびEPMが含まれます。
  2. 2. ビジネス・レコード(ファーストパーティ・データ)は、トランザクション、収益、マージンから構成されます。
  3. 3. サードパーティーには、外国為替レート、マーケット・フィード、商品価格からのデータが含まれます。

取込み、変換の柱は、4つの機能で構成されます。

  1. 1. 一括転送には、OCI FastConnect、OCI Data Transfer、MFT、OCI CLIを使用します。
  2. 2. バッチ取り込みには、OCI Data Integration、Oracle Integration Cloud、Data Studioを使用します。
  3. 3. 変更データの取得には、OCI GoldenGateとOracle Data Integratorを使用します。
  4. 4. ストリーミング取り込みには、OCI Streaming、Kafka Connect、DB Toolsを使用します。

4つの機能はすべて、永続化、キュレーション、構築の柱の中でのクラウド・ストレージに一方向で接続されます。

永続化、キュレーション、構築の柱は、5つの機能で構成されます。

  1. 1. サービング・データストアには、Autonomous Data Warehouseを使用します。
  2. 2. Compute Farmsには、HPCを使用します。
  3. 3. クラウド・ストレージには、OCI Object Storageを使用します。
  4. 4. バッチ処理には、OCI Data Flowを使用します。
  5. 5. ガバナンスには、OCI Data Catalogを使用します。

こうした機能は、柱の中で接続されています。クラウド・ストレージやデータレイクはサービス・データストアに一方向に接続され、バッチ処理にも双方向に接続されます。

2つの機能が、分析、学習、予測の柱に接続します。サービング・データストアは分析と可視化機能に一方向に、AIサービス機能には双方向に接続されています。クラウド・ストレージは、AIサービス機能に接続します。

分析、学習、予測のピラーは、3つの機能で構成されています。

  1. 1. 分析、可視化は、GraphStudio、Oracle, Analytics Cloud、GraphStudio、およびISVを使用します。
  2. 2. AIサービスには、OCI Anomaly Detection、OCI Language、OCI Forecasting、OCI Visionが含まれます。
  3. 3. サービング・データストア、分析と可視化、オブジェクト・ストレージは、OCI Data Catalogにメタデータを提供します。

測定、行動の柱は、データ分析がリスク計算および規制レポート・ソリューションをサポートするために適用される方法を捉えます。これらのアプリケーションは、2つのグループに分けられます。

  1. 1. 第1のグループ「人とパートナー」には、コンプライアンスと規制レポートならびにリスク集約とレポートが含まれます。
  2. 2. 第2のグループ「アプリケーション」には、信用リスク分析と市場リスク分析、バリュー・アット・リスク、オペレーショナル・リスク分析、流動性リスク分析、ストレステストとシナリオ分析が含まれます。
  3. 3つの中心的な柱である、取り込み、変換と永続化、キュレーション、構築と分析、学習、予測は、インフラ、ネットワーク、セキュリティ、IAMでサポートされています。



金融サービス機関がリスク計算と規制レポート・プロセスを合理化しつつ精度を向上させることを可能にするために、アーキテクチャにデータを注入する方法は主に3つあります。

  • まず、トランザクション・システムやコア・バンキング・アプリケーションからデータを取り込む必要があります。このデータはその後、例えばソーシャルメディアからの非構造化データを含む、サードパーティ・ソースからの顧客データで強化することができます。変更データの取得を必要とするリアルタイムまたはほぼリアルタイムの抽出が頻繁に行われることは一般的であり、データはOracle Cloud Infrastructure (OCI) GoldenGateを使用して取引、リスク、および顧客管理システムから定期的に取り込まれます。OCI GoldenGateは、進化するデータ・メッシュ・アーキテクチャの重要なコンポーネントでもあり、「データ・プロダクト」は、エンタープライズ・データ台帳とポリグロット・データ・ストリームを介して管理され、継続的な変換よびロード処理を実行します(モノリシック・アーキテクチャで使用されるバッチ取り込みや抽出・変換およびロード処理ではない)。
  • ストリーミング取り込みを使用して、リアルタイムの取引データを取り込むことができるようになりました。例えば、取引が実行されると、その取引に付随するすべての情報が取り込まれ、口座や元帳の更新、リスクの再計算、決済プロセスの開始などに利用されます。このデータは、長期保存のためにHDFS/S3コネクターを経由して生の(変換されていない)状態で取り込まれ、データがクラウド・ストレージに保存される前に、いくつかの基本的な変換や集約が実行されます。取り込みと並行し、ストリーミング分析を利用して、複数のソースからの大量のデータをリアルタイムでフィルタリング、集約、相関、分析することができます。これは、金融機関がビジネスの脅威やリスクを検出する上で役立ちます。相関するイベントや識別されたパターンを(手動で)フィードバックし、OCI Data Scienceを使用して生データを調べることができます。さらに、アクションのトリガーとなるイベントを生成することもできます。これらのアクションは、EメールやSMSで不正の可能性を顧客に通知したり、漏洩したデビット・カードをブロックするなど、直接顧客に焦点を当てたものから、潜在的な問題が検出されたことをコンプライアンス・チームに通知するなど、内部プロセスを合理化できるものまでさまざまです。OCI GoldenGate Stream Analytics isは、ストリーミング・データに対してリアルタイムに分析計算を行うインメモリ・テクノロジーです。
  • リスクを正確に理解し予測するためには、過去のパフォーマンスデータ、トレンド、パターンへのアクセスが必要です。これには通常、OCI Data Transfer Serviceなどの一括転送方法やサービスを使用して、オンプレミスのデータストアから大量のトランザクション・データやその他の業務メトリックおよびデータセット(市場データや商品価格など)をロードする必要があります。
  • リアルタイムのニーズは進化していますが、銀行、顧客、金融のコア・システムからの抽出は、抽出、変換、ロードのプロセスを使用したバッチ取り込み が最も一般的です。バッチ取り込みは、ストリーミング取り込みに対応できないシステム(古いメインフレームシステムなど)や、ローンや住宅ローンのデータなど、必ずしもリアルタイムで分析する必要のないデータからデータをインポートする場合によく使用されます。このデータは高度に構造化され、高度なデータ品質/整合性を備えており、多くの場合、トランザクション・アプリケーション/システムによって、毎時15分過ぎや毎日正午などの特定のスケジュールに基づき、一括処理されます(複雑な処理に対応する場合は、これよりも長い期間になることもあります)。ソース処理が完了した後の一括取り込みは、最も計算効率とネットワーク効率の高い取り込み方法です。バッチ取込みは、10分や15分といった頻度で行うことができますが、個々のトランザクションではなく、トランザクションのグループを抽出して処理するため、性質的にはあくまで一括処理です。OCIは、ネイティブのOCI Data Integrationサービスや、OCI Computeインスタンス上で動作するOracle Data Integratorなど、バッチ取り込みを処理するさまざまなサービスを提供しています。データの量や種類によっては、オブジェクト・ストレージにロードしたり、構造化されたリレーショナル・データベースに直接ロードして永続的に保存することが可能です。

データの永続化と加工は、3つの(オプションとしては4つの)コンポーネントの上に構築されています。

  • 取り込まれた生データは、アルゴリズムのためにクラウド・ストレージに保存されます。主要なデータ永続化層としてOCI Object Storageを使用します。OCI Data FlowにおけるSparkは、トランザクション、ロケーション、アプリケーション、ジオマッピングなどのデータに対する主要なバッチ処理エンジンです。バッチ処理には、基本的なノイズ処理、欠損データ管理、定義されたアウトバウンド・データセットに基づくフィルタリングなど、複数の作業が含まれます。結果は、必要な処理と使用されたデータ・タイプに基づいて、さまざまな層のオブジェクト・ストレージまたは永続的なリレーショナル・リポジトリに書き戻されます。
  • 処理されたデータセットはクラウド・ストレージに戻され、永続化、キュレーション、分析が行われ、最終的にはOracle Autonomous Data Warehouseが提供するサービング・データストアに最適化された形でロードされます。データは現在、キュレーションとクエリのパフォーマンスのために最適化されたリレーショナル形式で保持されています。また、アーキテクチャの好みによっては、マネージドHadoopクラスタとしてOracle Big Data Serviceで実現することも可能です。このお客様事例では、機械学習モデルのトレーニングに必要なデータはすべて、オブジェクト・ストレージから生の状態でアクセスされます。モデルをトレーニングするために、過去のパターンと取引レベルの記録を組み合わせ、潜在的なリスクを特定および分類します。これらのデータセットとデバイス・データや地理空間データなどを組み合わせることで、データ・サイエンスの技術を適用して、リスクをより適切に管理および予測するために既存モデルの改良や新しいモデルの開発を行うことが可能になります。このタイプの永続性は、外部表やハイブリッド・パーティションを介してアクセスされるデータストアの一部であるスキーマのデータを保存するために使用することもできます。
  • 取り込みのセクションで説明したように、金融サービス機関は、過去の市場データ、リアルタイムの取引データ、経済指標など、大量のデータを扱っています。ハイパフォーマンス・コンピューティング(HPC)により、大規模な データセットを効率的に処理および分析できるため、包括的なリスク評価が可能になります。金融リスク予測には、モンテカルロ・シミュレーション、オプション・プライシング・モデル、リスク・ファクター・モデルなどといった複雑な数学的および統計的モデルが用いられます。これらのモデルは、計算やシミュレーションを正確かつ迅速に行うために、かなりの計算能力を必要とします。コンピュート・ファームのHPCシステムは、クラウド・コンピューティングの原理を利用することで、これらの複雑なモデルを扱うために必要な計算リソースを極めてリソース効率の高い方法で提供します。

分析、学習、予測機能は、3つのテクノロジーで構築されています。

  • Oracle Analytics Cloudなどの分析および可視化サービスは、サービング・データストアからキュレートされたデータに基づいて分析を提供します。これには、記述分析(現在のリスク識別の傾向やフラグを立てたアクティビティをヒストグラムやチャートで説明)、時系列分析などの予測分析(将来のパターンの予測、トレンドの特定、不確実な結果の確率の決定)、規範分析(最適な意思決定をサポートする適切な行動の提案)が含まれます。こうした分析は、今期においてフラグを立てたリスクの前期との比較などといったことを明確化する上で利用することができます。
  • 高度な分析とともに、機械学習モデルの開発、トレーニング、導入が行われます。トレーニング済みのこれらのモデルは、現在および過去のトランザクション・データに対して実行され、例えば、マネーロンダリングを検出するためにトランザクションと行動のパターンを照合することによって、金融機関によるリスク予測と管理の改善を支援し、結果をサービング・レイヤーに戻して保持し、Oracle Analytics Cloudなどの分析ツールを使用して報告することができます。モデルのトレーニングを最適化するために、モデルとデータをOCI Data Scienceなどの機械学習システムに送り込み、モデルをさらにトレーニングすることで、より効果的にリスク分析を行います。これらのモデルは、API経由でアクセスしたり、サービング・データ・ストア内に導入したり、OCI GoldenGateストリーミング分析パイプラインの一部として組み込んだりすることができます。
  • さらに、クラウド・ネイティブな人工知能サービスの高度な機能を利用することも可能です。
    • OCI Anomaly Detectionは、重要なインシデントにフラグを立てるビジネス固有の異常検知モデルを簡単に構築し、検知と解決を迅速化する人工知能サービスです。このユース・ケースでは、IFRS第9号やIFRS第17号、CECL、LDTI、OECD、バーゼル、その他の基準や要件に対するコンプライアンス違反を特定し、非遵守をモニターするためにこれらのモデルを導入します。この識別は、過去の解決データとともに、改善とプロセス改善に利用できます。信用リスク、流動性リスク、市場リスク、企業パフォーマンス・リスク評価などのリスク評価では、OCI Anomaly Detectionを使用してパフォーマンスメトリクスをモニターし、現在のパフォーマンスやトランザクションが全体的なリスクを増大させていないことを確認するための支援をすることができます。
    • また、OCI Anomaly Detection を使用して、カテゴリ別にコンプライアンスおよびコンプライアンス違反の発生件数をモニターし、ビジネスにおける特定の変化がコンプライアンスに関する異常なエスカレーションを引き起こすかどうかを特定することもできます。さらに、OCI Anomaly Detectionは、コンプライアンス・ルールの使用をモニターし、最近のトランザクションに異常な使用がないかどうかをチェックすることで、コンプライアンス違反の根本原因を特定する上で役立つことがあります。
    • OCI Forecastingは、パフォーマンス・メトリクスに加え、市場環境や顧客行動などの外部要因の予測にも使用することができ、差し迫ったリスクの可能性を分析し、潜在的に特定することができます。
    • OCI LanguageとOCI Visionは、リスク管理活動のためにデータを充実させるために役立つ文書やテキストを取り込むことができます。
  • データ・ガバナンスもまた、重要な要素です。これは、データレイクハウス・エコシステム内のすべてのデータソースに対して、データ・ガバナンスとメタデータ管理(技術メタデータとビジネス・メタデータの両方)を提供する無料サービスであるOCI Data Catalogによって実現されます。また、OCI Data Catalogは、Oracle Autonomous Data WarehouseからOCI Object Storageへのクエリにおいて、保存方法に関係なくデータを迅速に検出する方法を提供する極めて重要なコンポーネントです。これにより、エンド・ユーザー、開発者、データ・サイエンティストは、アーキテクチャ内のすべての永続データストアで共通のアクセス言語(SQL)を使用することができます。
  • 最後に、現在のキュレーションおよびテスト済みの高品質で統制されたデータとモデルは、データメッシュ・アーキテクチャ内でデータ製品(API)として公開し、金融サービス組織全体に提供することができます。

適切なデータ・プラットフォームによるリスク計算と規制レポートの改善

Oracle Data Platformは、金融サービス機関が急速に変化するリスク管理と規制レポート環境に対応し、世界中の規制当局からのますます複雑化するレポート要件を管理し、適切な粒度でデータにアクセスできるように支援します。オラクルのソリューションは、リスク・データを管理するための統合環境とフレームワークを提供し、組織が規制レポートの作成に割かなければならない貴重な時間とリソースを削減します。品質ルールを適用し、データのサイロ化を排除する自動化されたソリューションにより、組織は規制当局への届出書類に自信を持ち、リスクをよりよく理解、管理、最小化することができます。

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