2024年に戦略的CHROが直面する課題トップ10

Jeffrey Erickson | 医療コンテンツ・ストラテジスト | 2024年2月8日

ここ3年にかけて世界でさまざまな出来事が重なり、最高人事責任者(CHRO)が注目を浴びるようになっています。さまざまな業界のCHROが、新型コロナウイルスのパンデミックによる人員の大規模な変動、2021年の大量の離職者発生、2022年後半のIT企業のレイオフ、忍び寄る景気後退といった、増え続ける前例のない課題を克服するという責務を課せられています。そうした状況は2024年も変わりないとみられます。今年もまたCHROとその人事(HR)チームは、ハイブリッド化や地理的分散が進むチームを管理するためのベストプラクティスに取り組む一方で、引き続き人員の混乱に対処していくことになるでしょう。

こうした取り組みを通じて、CHROは、多様な従業員が仕事上の意義を見出せるような文化の構築を支援することで、全体的な従業員エクスペリエンスの向上、ひいては従業員の維持を図ることも求められるでしょう。

2024年にCHROが克服すべき課題トップ10

2024年にCHROが注目すべきこと人事方針を決定するリーダーにとって、今後1年間に取り組むべき重要な課題として以下の10個が挙げられます。

1. ハイブリッド・ワーク・モデルの実現

柔軟で勤勉なハイブリッド勤務の文化を成功裏に構築したCHROは、生産性の向上だけでなく、ハイブリッド勤務の事例を得ることで、人材の獲得と維持に役立てることができます。LinkedInの2022年Marketing Jobs Outlook調査によると、87%の社員が大部分の勤務時間をリモートで過ごしたいと考えているという市場において、これは重要なアセットとなるでしょう。

ここでは、CHROが成功するハイブリッド・ワーク・モデルを構築する上で役立つ3つのステップをご紹介します。

  • 従業員の視点を理解する。ハイブリッド勤務では、従業員ごとに異なるプレッシャーがかかります。例えば、リモート勤務の従業員は、柔軟性があり通勤の手間が省ける反面、企業文化から孤立し、マネージャーから見過ごされていると感じることがあります。Society for Human Resource Management(SHRM)の調査によると、62%のマネージャーは、リモート勤務の従業員はオンサイト勤務の従業員に比べ関与度が低く、入れ替えがしやすいと感じています。一方、オフィスで働く従業員は、リモート勤務の同僚のような柔軟性のない毎日を送っていると感じることがあります。

    CHROとそのチームは、アンケートやフィードバック・セッションを通じて、積極的に従業員のフィードバックを求め、そのフィードバックを活用して、リモートとオンサイトの両方の従業員が活躍できる文化の構築に努めることが求められます。
  • 柔軟性を維持しながら人材プールを拡大する。2024年には、リモート・ワークやハイブリッド・ワークの柔軟性を活かして、人材パイプラインを新たな地域へ拡大しましょう。フルタイムの人材補充が難しい場合は、競争率の低めな人材市場を開拓し、リモート・ワークの可能性を利用して新しい候補者の獲得につなげます。また、パートタイマーや契約社員でも補充可能なポジションかどうかも検討します。ポジション構造の見直しや適材適所での対応を積極的に行いましょう。
  • 役員および従業員と明確なコミュニケーションをとる。CHROの仕事のひとつは、他の経営陣に十分に吟味されたワーク・ポリシーを提供し、チームに何が求められているのかを伝えられるようにすることです。例えば、オフィスで3日、自宅で2日というハイブリッドでの働き方が最良のワーク・ポリシーというようなことでしょうか。組織にとってどのような取り決めが合理的であるにせよ、CHROはそれを文書で定め、周知させる必要があります。どのようなポリシーの発表でも、反発を受ける可能性はありますが、最終的には、役員やスタッフが期待される内容を正確に把握していれば、こうした変化を管理するストレスは軽減されます。

2. ダイバーシティ、エクイティ、およびインクルージョンの促進

多様な視点がより良いアイデアと強いチームを生み出すことは、今やほとんどのCEOが理解していることでしょう。また、多様なチームが収益性と従業員エンゲージメントの面で長期的に均質なチームを大きく上回ることを示唆する、2022年の世界経済フォーラムにおける最新レポートからも、そうしたことが裏付けられています。

2024年の課題は、多様性を組織に定着させることです。そのためには、ダイバーシティ、エクイティ、インクルージョン(DE&I)が人材取得や従業員の減少・定着にどのような影響を与えるかについての分析を含む、労働力の多様性に関する優れたデータが必要になります。こうしたインサイトを得るために、CHROには組織のDE&Iの状況把握に役立つ人材管理(HCM)ソフトウェアが必要でしょう。ROIを追跡するだけでなく、DE&Iに関連する地域や国の規制への準拠を簡単に示すこともでき、組織が労働者を惹きつけ、維持するDE&I文化を構築する上で役立つことが期待されます。

3. 組織文化の醸成

2024 年、新入社員候補は、報酬だけでなく入社した場合に加わることになる文化にも目を向けるようになるでしょう。このような環境では、従業員エクスペリエンスはもはや人材戦略の副産物ではありえず、人材戦略の原動力として不可欠です。

CHROは、従業員同士のより深いつながりを育み、彼らの努力と社会的インパクトを認めるような組織の構築を目指すべきです。

  • 従業員が相互に連絡を取りやすくする。そのためには、従業員が親和性の高いグループを見つけたり、形成することを支援することが一つの鍵となります。
  • 成果を評価する。職場でのパフォーマンスを評価するための活気あるプログラムは、ポジティブな文化を鼓舞することに役立ちます。最近のSHRMの調査では、68%の人事担当者が、定着率や募集の改善にもつながりえると回答しています。
  • 従業員が自分の経験を話すことを支援する。従業員が職場でのポジティブな経験を自分の言葉で共有できるように、オンライン上の場所とコンテンツの専門知識を提供します。

4. 人材の採用と維持

CHROの主要な責務のひとつは、組織の目標を達成するために必要な役割を担う適切な人材を探し出し、維持することです。しかし、採用の課題は増え、労働力の獲得競争は依然熾烈を極めています。ロイターの世論調査では、2024年になっても、米国では失業者1人につき1.74人の雇用が確保されているとのことです。

このような競争環境に対応するために、CHROは、社内公募、求人広告、大学への働きかけといった従来の雇用・採用手法にとらわれず、新たな方法を模索する必要があります。

たとえば、遠隔地での募集イベントや採用活動を取り入れる人事組織が増えています。バーチャルでの採用イベントは、大勢の人にアプローチする上で特に有効です。また、Whartonの研究者によると、ハイブリッドやリモート・ワークを可能にすることも2024年のベストプラクティスであるため、人事チームはバーチャル・イベントを通して、これまで見つけることができなかった人材がいる可能性のある競合の少ないマーケットにアプローチすることができます。

優れたエンタープライズ・リクルーティング・システムは、人事チームがオンライン・イベントの推進、登録者の追跡、参加者の事前審査を行い、優秀な候補者を特定することを支援します。人財管理システムは、人事チームが新しい人材と交流し、有望な応募者を採用やオンボーディングのプラットフォームへと導くために役立つプラットフォームを提供することが求められます。

5. 従業員のスキルアップ、リスキル、育成

リモート・スタッフ派遣会社であるOutStaffer.comのレポートによると、アナリストはグローバルなスキル不足が2024年まで続くと見ており、雇用主の75%が欠員を埋めるためにスキルと資格を持った従業員を確保することが困難だと引き続き述べています。1つの解決策として、社内での人材育成があります。従業員に新しいスキルを身につけさせる手段と、成功するためのリソースを提供します。

マネージャーのスキルアップとトレーニングは、従業員の幸福と定着という点で、最大の見返りをもたらすことができます。リーダーやマネージャーは、積極的かつ協力的な職場づくりに役立つトレーニングの受講とツールや戦略による能力強化が求められます。例えば、チームメンバーとの定期的な確認や、学習や成長の機会の提供といった簡単なことでもよいのです。HCMプラットフォームは、マネージャーのためのナレッジ・ベースとして機能し、マネージャー自身やチームメンバーにとって適切な組織内外の学習や開発の機会へと導くことができます。

6 従業員エンゲージメント

CHROは、熱意ある従業員がパフォーマンスを上げる組織のバックボーンであることを理解しています。最近のGallupの世論調査によると、熱意ある従業員は、17%の生産性向上と21%の売上増加につながるとのことです。そして2024年は、組織がオフィス周辺の状況が「正常に戻る」のを待つのをやめ、リモートやハイブリッド・ワーカーを念頭に置いた人事組織の構築を開始する年です。

従業員は業務に従事しているとき、単なる満足感にとどまらず、自分自身やチームのパフォーマンスに感情をもって取り組んでいます。つまり、同僚や顧客のためであれば、特別な努力を惜しまないということです。ここでは、CHROが、リモート、オフィス、現場と勤務形態を問わず、従業員を支援するための3つの方法を紹介します。

  • 主要な人事業務の簡素化新入社員が与えられた仕事をこなし、予定されたマイルストーンを達成するために必要なサポートを提供する、シンプルで効率的なオンボーディング・プロセスを構築するためにCHROができることはすべて、組織にメリットをもたらすでしょう。新入社員がガイダンスやサポートなしに複雑なオンボーディングをこなすことを期待するのは、組織の新入社員の時間に対する捉え方について誤ったメッセージを送ることになります。
  • フィードバックの推奨リモート勤務の従業員は、自分が適切に仕事をしているかを確認したり、チーム・ダイナミクスの内情を知るために、チーム・メンバーと気軽に会話することができないことがよくあります。CHROは、マネージャーにチーム全体のミーティングをより定期的に開催するよう促すことで、従業員とつながり、自分たちの仕事が会社のより大きな目標をいかに支えているかを理解する手助けをすることができます。また、個人とチームのパルス調査、チェックイン、成果を評価するツールなど、複数のチャネルを通じて双方向のコミュニケーションを可能にするHCMシステムを提供することによっても支援することができます。
  • リモートでの成長の促進リモートで働く従業員が、 職業的または個人的に成長していると感じれば、その組織にとどまり、同僚や顧客の期待を上回る働きをする可能性がはるかに高くなります。

7.人事プロセスおよび採用ワークフローの見直し

2024年は、社会環境と労働環境が進化し続ける中で、人事チームが適応できるようにCHROの支援が求められます。リモート採用のプロセスやワークフローの改善は、企業が継続的なスキル不足を克服するために役立ちます。CHROは、人事チームが不必要な評価を追加したり、応募者の職歴のギャップを確認したり、非現実的な職務要件を掲示したりするような行為を避けるための採用プロセスを設計および実施するのを支援する必要があります。これらの行為はすべて、有望な候補者を不必要に遠ざけたり、応募そのものを断念させる結果につながりかねません。

採用からパフォーマンスの評価まで、従業員のエクスペリエンス全体を通して、企業向け人財管理プラットフォームは、CHROがベストプラクティスを中心に人事機能を再設計するのを支援することができます。例えば、学歴よりもソフトスキルを重視して候補者を探したり、従来は対面で行っていた現場技術者などの仕事をリモートで事務処理できないか役割を再検討したりするよう、人事チームに指導することができます。HCMアプリケーションは、面接プロセスのガイドにもなり、初期の「ジョブ・フィット」面接から詳細なスキル・テスト面接まで、候補者との面接スケジュール作成を支援し、その過程で定期的なコミュニケーションをとることで透明性を確保することが可能です。

8. 懲戒と紛争管理

近年の歴史が示すとおり、CHROは2024年も引き続き課題と不確実性に取り組むことになるでしょう。人事リーダーは、不確実性に対処するための積極的な手段を講じ、組織の安定性を確保するためのプロセスを構築することができます。ここでは、CHROが組織の不確実な時期を乗り切るためにできる2つのアイデアを紹介します。

データと分析を使用して、迅速な意思決定を行う。信頼できる分析チームを持つCHROは、ビジネス・インテリジェンス、市場調査、予測分析、さらには従業員のフィードバックを組み合わせて、最適な候補者が得られるソース、候補者の採用にかかる時間、各新人採用の獲得、選択、オンボーディングにかかるコストを把握することができます。また、人工知能や機械学習といったテクノロジーが企業の人事ソフトウェアに組み込まれていることが多いため、CHROは不確実な時代に受け身に対応するのではなく、先手を打つことができるかつてない機会を得ています。

従業員が自ら考え、行動できるようにする。CHROには、継続性をもたらし、継続的な変化に俊敏に対応することが求められています。しかし、不完全で複雑なサイロ化したシステムは、可視化を妨げ、意思決定を遅らせ、ビジネス全体にわたる変更の展開を妨げています。クラウド上の単一の包括的なソリューションは、ビジネスの全体像を把握し、人事チームが迅速に変更を加え、従業員の進化するニーズに合わせてシステムを調整し、必要なときに新しい機能にアクセスすることを可能にします。

9. 新しいテクノロジーの選択と導入

人事チームは、コアとなるHCMプラットフォームのモジュールの選択から、プロジェクト・ドキュメント管理やその他の多くの機能に対応した、それぞれの最高のソフトウェア・パッケージまで、多くのソフトウェアを使用しています。しかし、新しいテクノロジーが効果を発揮するためには、そのテクノロジーが組織に導入され、かつ受け入れられることが必要です。

CHROはそのプロセスの中核を担うべき存在です。モジュールやソフトウェアの一部がしなければならないことを正確に定義することから始め、それが確実に実行されるようにします。次に、ソフトウェアを使用する従業員の参加を得て、特定のビジネス部門のニーズを満たすために必要なカスタマイズの特定を支援するために、チーム・メンバーからなるタスク・フォースの作成を検討します。

ソフトウェアを導入し、タスク・フォースのメンバーが納得したら、次は組織の他のメンバーから賛同を得る段階です。このステップには時間と根気が必要です。一貫したメッセージの発信、正式なトレーニング、エクスペリエンスを共有できるアンバサダー、そして最終的には、定期的な参加に対する評価や表彰を行うことで、テクノロジーを組織全体に完全に定着させることができます。それで初めて、CHROはROIの測定と評価をすることができるようになります。

10. 後継者育成の準備

BenefitsPROが2022年後半に行った人事福利厚生マネージャーへの調査によると、2024年にも人材獲得競争は続くとされています。その結果、あらゆるレベルの従業員が自分の職業上の選択肢を検討し、場合によっては、ほとんど予告なしに転職を選択することが増えています。CHROは人事のトップとして、有望な人材を発掘し、リーダーとしての役割を担わせるために不可欠な役割を担っています。

2024年、CHROは後継者計画を立てる際に、リモートチームにおける労働力のダイナミクスを理解し、異なる地域の後継者候補を評価する基準を作り、リーダーの賛同を得るなど、さまざまな要素のバランスをとる必要があります。包括的な戦略と透明性の高い手続きにより、企業はスムーズな移行を実現し、現在および将来の役員ポジションにふさわしい候補者を見つけることができます。

CHROの将来像とは

最先端のCHROは、2024年以降の人事課題への対応に人的資本管理(HCM)ソフトウェアを活用することになるでしょう。HCMプラットフォームは、人事チームに業界のベストプラクティスと高度なデータ分析を提供し、採用、報酬、定着、その他多くの機能に関する意思決定を支援します。採用およびオンボーディング・プロセスにおける管理業務を自動化するためのツールや、リモート、ハイブリッド、オフィス、現場勤務など、多様な形態で働く最新の従業員に対して、より良いエクスペリエンスを提供するためのプラットフォームが用意されます。

CHROの課題に関するFAQ

2024年におけるCHROの最大の課題とされるものとは
今年のCHROの最大の課題は、生産性の高い労働力によるビジネス成果(収益とパフォーマンス)の推進と、総合的な幸福感、帰属意識、成長に対する従業員の期待に応えることでしょう。

2024年における人材の採用および維持に関する最新情報とは
リモートでのイベントやの採用の伸びにご注目ください。たとえば、バーチャルでの採用イベントは、地理的に異なる大勢の人にアプローチする上で特に有効です。

2024年にCHROがダイバーシティ、エクイティ、インクルージョンを推進できる方法とは
CHROは、業界と社内のデータを組み合わせて、組織独自のDE&Iエクスペリエンスを理解し、その上でDE&Iへの真のコミットメントを示すプログラムを設計して、その進捗状況を明確に示すことができます。

CHROが2024年に文化的な価値の促進を求められる理由
2024年、新入社員候補は、報酬だけでなく文化にも目を向け、社員同士のより深いつながりを育み、努力と社会的影響の双方を評価する組織を選択するようになるでしょう。

従業員のスキルアップとリスキルが2024年の重要な課題である理由
人事の福利厚生マネージャーによると、グローバルなスキル不足は2024年まで続くと予測されています。スキルアップとリスキルは、既存の従業員で組織内の重要な職務を迅速に補うための積極的な計画方法です。

2024年にCHROの成功の鍵となる人事テクノロジーとは
組織全体が見える包括的なデータ・ソースを提供するテクノロジーは、人事がパーソナライズされた従業員エクスペリエンスを実現し、変化する従業員のニーズに合わせてシステムを調整できるようにします。

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