Margaret Lindquist |コンテンツ・ストラテジスト| 2023年7月28日
人材不足、サプライチェーンの継続的な混乱、絶えず変動する需要などといった問題にもかかわらず、製造業界は躍進を続けています。航空機、自動車、化学製品、コンピューター、家電製品、重機械、石油、鉄鋼などの工業製品の生産量は、パンデミック以前の水準を上回っています。この業界は、機械ベースの組立ラインから、ロボット工学、モノのインターネット(IoT)、データ分析、拡張現実(AR)、その他の最先端技術を駆使した「スマート・ファクトリー」へと移行しつつあります。
この動きは、一般にインダストリー4.0として知られ、自動化とコネクティビティの進歩を原動力とする、製造業のデジタル化の新たなステージです。例えば、インダストリー4.0の理念を取り入れているメーカーは、ドローンを使って部品を配送したり、組立ラインの検査を簡素化したりしてます。あるいは、生産機械のメンテナンス中に技術者がARヘッドセットを使用して指示書や回路図を呼び出すこともあるでしょう。
2023年以降の産業用機械製造のトレンドは、技術の進歩と政府のイニシアチブに大きく影響されるでしょう。政府のイニシアチブには、国内半導体産業のために500億ドルを確保する「US CHIPS and Science Act」や、交通とインフラに1.2兆ドルを割り当てる「Infrastructure Investment and Jobs Act」などが含まれます。その他の大きなトレンドとしては、パンデミックによって深刻化した熟練労働者の不足やサプライチェーンの混乱に対する業界の対応、サステナビリティへの取り組みの強化などが挙げられます。先進的なメーカーは「スマート・ファクトリー」構想への投資を進めており、高度なデータ分析機能を取り入れることで、プランニングの微調整、設計サイクルの迅速化、サプライチェーンや製造プロセスの可視化を図っています。
一般的には、パンデミックの間、技術投資を強化した産業機器メーカーの方が、技術費を削減した産業機器メーカーよりも、経済衰退に立ち向かい、より有利な条件で立ち直ることができたと考えられています。デロイトの2023年展望調査によると、大手製造メーカーは主に以下の3つの技術分野に投資しています:製造のスピードアップ、コスト削減、人員不足の緩和のためのロボット工学と自動化(回答者の62%が選択)、予測精度を向上させ、製造ラインに影響を及ぼす前に供給不足を発見するためのデータ分析(60%)、工場の現場や産業機器に組み込まれたセンサーからデータを収集、分析し、製造、サプライチェーンの追跡、製品のメンテナンスを改善するIoT(39%)。この調査で最も優先順位が低かったテクノロジーは、ブロックチェーン(4%)と量子テクノロジー(5%)でした。
Industrial Internet of Things (IIoT)は、機械、デバイス、自動車、家電製品、その他の「モノ」である物理的なオブジェクトのネットワークを指します。これらのモノにはセンサーやソフトウェアが搭載され、情報を収集し、インターネットを介して他のシステムと通信します。収集されたデータは分析され、情報に基づいた意思決定に使用されます。たとえば、自動車メーカーはIIoTを活用して工場現場のロボットを監視し、メンテナンスの問題を事前に特定することで組み立てライン停止の問題に対処しています。
産業機器メーカーは、IoTの位置データを使用してサプライチェーン内の資産を管理しています。また、機械の温度、湿度、振動数を監視し、潜在的な故障をユーザーに警告したり、ソフトウェアの修正プログラムを機械に直接アップロードしたりします。このようなデータ収集と分析は、メーカーが製品計画を改良し、エラーが発生しやすい部品を特定するのに役立ちます。5Gは産業用IoTで重要な役割を果たすことになるでしょう。John DeereとFordはすでに、超高速かつ低レイテンシのワイヤレス・ネットワークを使用して、何千ものセンサーを接続しています。Grand View Researchの推計によると、2020年までにIIoTを導入したメーカーは約10%でしたが、その割合は2025年までに約50%に達する見込みです。
IndustryWeekとオラクルが2021年10月に実施した調査によると、デジタル機能とデータドリブンのプロセス(いわゆるデジタル・トランスフォーメーション)に投資しているメーカーとそうでないメーカーとの間で、競争力の格差が広がっています。4つの分野を重要度の高い順にランク付けしてもらったところ、調査回答者は、スマート・テクノロジー、サステナブルなプラクティス、人材開発を大きく引き離してデジタル・トランスフォーメーションを選択しています。調査対象となったメーカーが注力している主な分野は、「効率性の向上」(回答者の55%が最重要課題として認識)、「生産技術とイノベーションの向上」(53%)、「市場の需要への迅速な対応」(42%)、「顧客とのつながりの強化」(40%)でした。よりバーチャルな環境で仕事をすることが今後のメーカーに求められることに対し、回答者の半数が「そう思う」または「強くそう思う」と答えています。
業界のデジタル・トランスフォーメーションの次なる波の一例として、マイクロファクトリーが挙げられます。これは、小型でモジュール化され、高度に自動化され、ハイテクを駆使した製造設備で、顧客拠点の近くに設置することができます。その目的は、輸送や保管のコストを削減しながら、カスタム製品の製造を容易にすることです。高度に自動化されたマイクロファクトリーは、IoTとロボット工学の導入なしには存在し得ません。実際、未来のマイクロファクトリーは、自ら部品を製造することさえできるようになるかもしれません。その他の業界のデジタル・トランスフォーメーションの取り組みには、人材不足の影響を軽減するためにルーチンワークを自動化することや、潜在的な混乱を早期に可視化するために、異なる施設、組立ライン、サプライヤーからのデータをまとめることなどがあります。
米国の産業機器メーカーが直面している人材不足は、いくつかの理由から、今後数年間で悪化の一途をたどると予想されています。従業員の補充が追いつかないほどの多くの退職者が出ていること、より高い賃金と安定した雇用を求めて従業員が他業界に流出してしまうこと、雇用主が、特に若い世代から、インダストリー4.0工場のロボット、センサー、ソフトウェアの保守・管理を任せられる専門家を集めるのに苦労していることなどがその理由です。McKinseyは、今後10年間で、メーカーにおける手作業や実作業を伴う伝統的なスキルの必要性は30%減少する一方、テクニカルなスキルの需要は50%増加すると予測しています。しかし、メーカーは、機械工、溶接工、金属加工工、製造監督者、その他の経験豊富な専門家の不足に悩まされ続けています。
Deloitteと The Manufacturing Institute による2021年の調査によると、米国における製造スキル不足は、2030年までに210万人の未充足の雇用をもたらし、2030年だけで業界に1兆ドルの損失をもたらす可能性があるとのことです。調査対象となった米国の製造業リーダーの83%は、人材の確保と維持が最重要課題と回答しています。また、調査回答者の45%が、最近、人手不足を理由に企業がビジネスチャンスを辞退したと回答しています。
メーカーは複数の方法でこの課題に取り組んでいます。2022年に行われたNational Institute of Manufacturersの調査では、回答者のほぼ3/4が、2022年に平均3%の給与引き上げを行う意向を示しています。これは、2021年のパンデミック時に実施された大規模な昇給に加えて実施されるものです。製造業のデジタル化が進むにつれ、企業は、従業員を再教育し、従業員の努力が企業全体の成功にどのように貢献するかを認識させようとしています。また、メーカーは包括的な評価プログラムを開発しています。こうした努力は実を結びます。The Manufacturing Institute's Center for Manufacturing ResearchとAmerican Psychological Associationが行った2020年の調査によると、雇用主から評価されていると感じている回答者のほぼ全員が、モチベーションが高く(97%)、仕事に満足しており(97%)、会社を他の人に勧めたいと回答しています(96%)。その一方、職場で評価されていないと感じている人は、前向きさに欠けていました。
また、メーカーは職場環境を改善するため、施設のモダナイズを進めています。例えば、ロボットやドローンによる「ワーカー」を導入し、危険な作業を担わせる一方、ハイブリッドワークやリモートワークを実施しています。
数十年にわたる海外生産移転と外注により、製造業の雇用主に対してのイメージと評判が損なわれています。しかしメーカーは、キャリア育成への熱意と、安定した高賃金の仕事を提供することへのコミットメントをアピールすることで、このようなイメージを払拭することができます。継続的に学べる環境を整えることは、メーカーが次世代の人材を確保するためにできる最も重要なステップの1つです。
The Manufacturing Institute's Center for Manufacturing ResearchとAmerican Psychological Associationが行った2020年の調査によると、若い従業員は、人材への投資に積極的な雇用主に魅力を感じていることがわかりました。25歳以下のメーカー従業員に現在の会社に留まっている理由を尋ねたところ、70%近くが「スキルアップの機会があるから」を理由に挙げ、65%が、「キャリアアップの機会があるから」を理由に挙げています。雇用主は、ライブコース(オンラインと対面式の両方)、録画ビデオ、拡張現実/仮想現実を利用したものなど、さまざまなリスキル・プログラムに目を向ける必要があります。
Institute for Advanced Composites Manufacturing Innovation(IACMI)は、工作機械業界の人材育成を目的として、America's Cutting Edgeと呼ばれるプログラムを開始しました。National Association of ManufacturersとManufacturing Instituteは、Creators Wantedと呼ばれるプログラムを立ち上げ、研修や求人、新たなキャリアパスと人々を結びつけています。Northeast Wisconsin Technical Collegeや Chicago近郊のNorthwestern Universityなど、全米のカレッジや大学では、サイバーセキュリティ、産業用モノのインターネット、ロボット工学を含むインダストリー4.0学習プログラムを提供しています。
メーカーは、生産職のエントリーレベルの求職者だけでなく、現代の工場でますます複雑化するシステムに対応できる専門技術者の確保にも苦慮しています。この課題に対応するため、メーカーは、より多くの女性や少数民族の人々を惹きつけなければならないことを認識しています。
米国労働統計局の2022年のデータによると、現在、女性は製造業の従業員全体の3分の1未満であり、黒人、アジア系、ラテン系の従業員の割合はわず 36%です。これらの人々を製造業に引き込もうとする2つの国家的な取り組みとして、将来の人材を育成し再教育するための米国国防総省後援の62億ドルのイニシアチブと、女性にメンターを提供し製造業に対する認識を変えようとする全米製造業協会のキャンペーンがあります。
2023年の米国環境保護庁の報告書によると、米国の温室効果ガス排出量の23%は、製造業と原材料産業に起因することが分かっています。製造業は近年、温室効果ガス排出量の削減に向けて前進していますが、その道のりはまだまだ長いといえます。メーカーは、サプライチェーン全体を見直し、廃棄物を削減し、サプライヤーの多様性を高め、工場や製品配送に低燃費車や電気自動車を優先的に使用する機会を模索する必要があります。
コンサルタント会社であるClimate Impact Partners社が2022年に行った調査によると、Fortune Global 500にランクインしている企業のうち42%が、気候変動に関する重要なマイルストーンを達成したか、2030年までに達成することを約束しているとのことです。カーボンニュートラルは、企業が排出する二酸化炭素量と同量の二酸化炭素を大気から除去することを約束するもので、最初のマイルストーンとして有効です。しかし、気候変動問題の専門家は、サプライチェーン全体で排出量に関する目標を設定することが、企業が二酸化炭素ゼロの目標を達成する唯一の方法であると警告しています。一部のメーカーは、センサー制御による冷暖房や照明システムなど、「スマート・ビルディング」技術に投資しています。また、再生可能エネルギーを施設に導入したり、工場や原材料の輸送に電気自動車を利用したり(クリーン自動車税控除を活用)している企業もあります。2021年の McKinseyの調査では、メーカーの回答者の22%が過去5年間にサステナビリティへの取り組みから何らかの価値が得られたと回答しており、40%は今後5年間に価値が得られると見込んでいます。この価値には、エネルギー使用量の減少に関連するコスト削減や、カスタマー・エンゲージメントの向上などが含まれます。
米国環境保護庁は、企業の社会的責任(CSR)を、企業が、その活動や慣行を通して、環境、消費者、従業員、地域社会にプラスの影響を与えるよう取り組む自主規制の一形態であると定義しています。メーカーのサプライチェーンにまで及ぶCSRの取り組みには、一般的に2つの主要分野があります。それは、環境サステナビリティ(リサイクル、化石燃料の消費削減、廃棄物の削減など)と、社会の進歩(男女の賃金格差の是正、公平な雇用・昇進慣行へのコミットメント、生活賃金の支払い、職場の安全化など)です。
これらの分野におけるメーカーのアクションは、地球やそこに住む人々だけでなく、企業にとっても有益なものです。調査会社Lab42が2022年に実施した調査では、回答者の84%が、社会的責任を果たしていると思われる企業の製品に対しては、より高い金額を支払ってもよいと回答しています。
2023年、メーカーはサプライヤーや顧客の行動を可視化するだけではもはや十分ではありません。その可視性は、サプライヤーのサプライヤーや顧客の顧客まで拡大する必要があります。成功を収めるメーカーはデジタル・サプライチェーン機能に投資しています。これにより、サプライチェーンにおけるすべての利害関係者が果たす役割をより深く理解し、各関係者が材料の調達や顧客ニーズの充足に関してより良い意思決定ができるようになります。
ここ数年、サプライチェーンの混乱が続いていることを受け、産業機器メーカーは、原材料の調達先や製品の製造場所を再評価しています。1960 年代から、世界中のメーカーはより低コストの国から原材料を調達し、そこで事業を行うようになりました。しかし、オフショア先の国々における人件費の上昇、輸送コストの上昇、為替レートの変動、環境および社会的なサステナビリティの目標達成の要望などから、こうした動きは後退し始めています。
産業用調達マーケットプレイスのThomasが2021年に実施した調査によると、北米を拠点とするメーカーの83%が、少なくとも業務の一部を国内へ「リショアリング」する可能性が高い、または非常に高いと回答し、前年同期の54%から増加しています。しかし、リショアリングは、サプライヤー・ネットワークの多様化を目指すメーカーの大きな動きの一側面に過ぎません。例えば、さまざまな地域のサプライヤーを取り込むこともその一例です。実際、アドバイザリー会社BDOの調査によると、2021年にはメーカーの半数以上が代替またはバックアップのサプライヤーを探しています。一方で、メーカーはサプライヤーの多様化によるメリットと、さらに多くのサプライヤーを管理することによる複雑さやコストの増加を比較検討する必要があります。
メーカーにとって最大の市場機会のひとつは、自社製品の一部をサービスとして提供することです。これにより、多くの場合サブスクリプションとして固定または使用ベースの価格を請求することができます。例えば、自動車メーカーは、「サービスとしての自動車」を試験的に導入しており、顧客は入会金と月額利用料を支払うことで、最新モデルを利用することができます。従来の自動車リース契約とは異なり、登録、税金、ドライバー保険、ロードサイド・アシスタンス、メンテナンスなどを、通常は自動車メーカー側が契約の一部として負担します。また、顧客はサービス契約に応じて、月に1~2回、新しい車種に乗り換えることができます。同様に、クラウド・コンピューティングもProduct-as-a-Serviceとして機能し、ソフトウェア開発者は、アプリケーション、データベース、インフラストラクチャをインターネット経由でサブスクリプションとして提供します。
メーカーが提供するサービスには、製品のインストール、監視、メンテナンスなどが含まれます。このモデルの別の例では、溶接ロボット・メーカーが、ロボットそのものを販売するのではなく、あらかじめ決められた回数の溶接を固定価格で顧客に提供することが考えられます。
メーカーにとって、Product as a Service(XaaSまたは~as a Service)モデルの利点には、より定期的で予測可能な収益源、クロスセリングやアップセリングの機会の増加などがあります。もう1つの利点は、メーカーが顧客の製品使用に関する貴重なデータを収集できることです。これらのデータは、新製品や収益機会の開拓に役立てることができます。
未来の工場は高度に自動化され、効率化されたものになると考えられます。ドローンが生産ラインの上空を飛行し、作業員に在庫レベルや機械の健全性に関するデータを提供することもあるでしょう。不正確さやヒューマンエラーは減少します。AI、機械学習、IoT、およびロボット工学が倉庫や工場でより大きな役割を果たすようになると、肉体労働の比重は減り、分析作業がより重要になります。しかし、スマート・ファクトリーの基盤は、強固なバックオフィスにあります。そして、そのようなバックオフィスには、膨大な量のデータを処理できる財務、生産、計画ソフトウェアが必要です。
スマート・マニュファクチャリング、またはインダストリー4.0のポテンシャルは、どのようなテクノロジーを使えばプロセスを簡素化し、財務、生産、およびその他の情報をリアルタイムかつ正確に収集し、コストを削減できるのかを理解しているメーカーにのみもたらされます。メーカーは、エンタープライズ・リソース・プランニング(ERP)、サプライチェーン・マネジメント(SCM)、製品ライフサイクル管理(PLM)などのエンタープライズ・ソフトウェアを長年使用してきましたが、その多くは、主要な機能が欠けていたり、更新が困難であったり、互いに接続されていない、レガシーシステムを使用しています。さらに複雑さを増しているのがM&A活動で、メーカーは買収した企業からさらに別のERP、SCM、PLMシステムを引き継ぐことになります。
メーカーにとって特に重要な技術的優先事項は、ERPシステムの最新化と統合です。ほとんどの場合、クラウドに移行することで、定期的なアップデートと最新のセキュリティ制御を利用できるようになります。また、クラウドERPスイートでは、財務、製造、その他のアプリケーションをオンデマンドで拡張でき、必要な分だけ料金を支払うことができます。また、クラウド・アプリケーションの統合スイート(ERPとSCMとPLMの統合)により、メーカーはこれらの機能全体で必要な可視性を得ることができます。
1つの製造システムから膨大な量のデータが生成されることもあります。例えば、Ciscoの調査によると、オフショアの石油・天然ガスプラットフォームには35万から50万のセンサーが搭載され、毎日1テラバイトから2テラバイトのデータが生成されます。石油会社は収集・分析したデータを、原油流出や計画外の操業停止を回避するため、また壊滅的な機器の故障から作業員を守るために使用しています。
データの流れが増加するにつれ、メーカーはそのデータを分析し、インサイトを抽出するための高度なソフトウェアを必要としています。Deloitteの調査では、企業の60%が2023年の最重要課題として分析ソフトウェアの検討を挙げています。これは、予測を改善し、製造ラインに影響を及ぼす前に製品部品や原材料の不足を発見するためです。LNS Researchの2023年レポートでは、メーカーの37%が分析における最優先事項としてデータ品質の問題を挙げています。
「デジタル・ツイン」は、メーカーにとってのもうひとつの重要な意思決定ツールです。デジタル・ツインとは、製造設備、プロセス、製品の仮想的な複製を指します。製造業はデジタル・ツインを利用して、需給の変動が組立ラインの生産性、新製品の仕様、あるいは工場で使用する特定の製造機械に及ぼす影響をシミレーションします。これにより、ビジネスリーダーは、物理的な資産に投資する前に、十分な情報に基づいて製品に関する意思決定を行い、最終製品の品質を評価することができます。
自動化の利点には、人件費の削減、職場の安全性の向上、生産性の向上などがありますが、これは製造業において決して新しい話ではありません。しかし近年では、ロボット、協働ロボット(人と一緒に働くように設計されたロボット)、ドローン、自動運転車の導入率が上昇しています。ロボット業界団体Association for Advancing Automationによると、2022年第2四半期の北米における作業用ロボットの受注は前年同期比で25%増加しています。また、Grand View Researchによると、2023年初頭には受注が減少したものの、産業用ロボットの世界市場は2023年から2030年にかけて年平均成長率(CAGR)10.5%で拡大する見込みです。ABI Researchによると、協働ロボットの世界市場規模は2020年には4億7500万ドルでしたが、2021年には6億ドルに上昇し、2030年には80億ドルに達する見込みです。
自動化をリードしている分野のひとつが農業と食品生産です。市場分析会社IMARCのレポートによると、農業用ロボットの世界市場規模は、2022年の76億ドルから2028年には211億ドルに拡大し、この期間のCAGRは18.4%になると予測しています。また、最終的にはロボットが植え付けから除草、収穫までの栽培プロセス全体を処理するようになると予想されています。製造業ではより広範に、工場(より一般的には工場システムの製造セルまたはサブセット)が暗闇の中で操業できるほど人間の介入を最小限に抑えた無灯火工場へとトレンドが移行しています。
メーカー各社はここ数年、グローバル化とサプライチェーン・マネジメント、財務、人材管理、プロジェクト管理を中心とした大きな課題を抱え、厳しい逆風にさらされています。こうした中、先進的なメーカーは、工場、倉庫、バックオフィス向けのコネクテッド・クラウド・アプリケーションや次世代のIndustry 4.0テクノロジーに着目しています。
Oracle Cloud for Industrial Manufacturing は、エンタープライズ・リソース・プランニング、パフォーマンス管理、サプライチェーン・マネジメント、製品ライフサイクル管理、製造、人材管理のための統合アプリケーションを備えています。これらの各分野は、さらなるデジタル・トランスフォーメーションの機が熟しています。例えば、クラウドベースのSCMアプリケーションを導入したメーカーは、サプライチェーンの混乱を監視し、迅速に対応することができます。また、クラウドベースのHCMを導入したメーカーは、採用や入社プロセスの日常的な業務を自動化し、従業員の育成やエンゲージメント活動のような、より価値の高い業務に集中することができます。また、新たな販売モデルを考案することも可能です。たとえば、製品を「サービスとして」提供することで、顧客は所有に伴う負担を軽減することができます。そして最大のメリットは、アプリケーションがクラウド上にあるため、メーカーは、追跡ソフトウェア、在庫管理ツール、高度なロジスティクスなどの新機能を必要に応じて自社のペースで導入、追加できることです。
どの製造分野が成長していますか
調査会社IBISWorldの予測によると、2023年から2028年の間に売上高で最も急成長する米国の産業用機械製造分野は、太陽光発電装置(複合年間成長率25.5%)、3Dプリンター(同24.1%)、ドローン(同24.1%)、ハイブリッドおよび電気自動車(同22%)となる見込みです。
製造業界の成長の見通しはどうですか
Interact Analysisの調査によると、2022年の世界の製造業の総生産高は3.6%成長しましたが、現在の経済的な逆風により、製造業の生産高は早ければ2024年にも縮小する可能性があります。同社の予測では、アジアは比較的有望であり、特に中国の医薬品と化学セクターは、新型コロナウイルスのロックダウン措置が軽減されたことにより、緩やかな成長を遂げています。
4つの主な製造工程について教えてください
4つの主な製造工程は、布や紙のようにアイテムを複数のピースに切断したり、特定の形状に曲げたりする「せん断および成形」、2つのアイテムを溶接などで接続する「接合」、プラスチックやガラスのような物質を溶かして型に流し込む「鋳造」、そして、穴を開けたり、ネジを作るために金属ペグに溝を彫るなど、工具でオブジェクトから材料を切断、シェイプ、または除去する「機械加工」です。
オラクルがメーカーによるレジリエントなサプライチェーンの構築を支援する方法をご覧ください。