Joseph Tsidulko |シニア・ライター| 2024年10月22日
企業の帳簿は、たとえ埋もれていたとしても、常にデータの宝庫です。これらの財務数値は、かつては埃まみれの元帳とスプレッドシートのプラスマイナス欄に書き込まれていましたが、現在では高度なアプリケーションに保存され、そこから膨大な戦略的価値を引き出すことができます。
データの管理と分析の両方におけるテクノロジーの進歩により、財務コントローラーの役割は、リード・アカウンタントから、かつては全く専門外であったデータ・アナリストのようなものへと変遷しました。このシフトを実現するには、財務状況の予測、複雑な支出パターンの評価、財務プロセスの連携と自動化、組織全体の意思決定者へのインサイトと分析の提供など、AIや高度な分析などの最先端テクノロジーの活用に精通している必要があります。
財務コントローラーは、組織の日々の経理業務を監督します。従来は、売掛金やと支出の緻密な追跡、社内の意思決定者への財務報告、規制当局や投資家への正式な財務諸表の提出がその職務でした。財務コントローラーは、月次、四半期、年次の決算プロセスを監督し、企業が一般的に認められた会計原則、略してGAAPに従って財務諸表を作成することを確実にします。
しかし、最近ではほとんどのコントローラーにその職務内容を尋ねると、より複雑な内容の説明が返ってくるでしょう。それは、財務コントローラーが重要なビジネス・データの管理者として、高度なデータ・サイエンスのツールや方法を適用して財務予測の作成や戦略に関するインサイトの見極めができるチームの構築や監督を求められる機会がますます増えているからです。通常、会計士チームを率いた経験を持つ公認会計士であるこれらのプロフェッショナルは、テクノロジー・ベンダーやコンサルタントに、自分自身およびそのチームが簿記担当者から戦略的計画担当者へと変革できるよう支援を求めています。
主なポイント
財務会計のプロフェッショナルからなる有能で経験豊富なチームに囲まれてこそ、コントローラーは成功を収めます。しかし、適切なスキルと経験の内容を特定し、その内容を満たす従業員を見つけることは、財務機能が伝統的な会計や簿記のスキルだけでなく、高度なITツールや データドリブンな 手法の使用にも精通していることが求められる現在、困難な場合があります。
回答: 適切な人材の発掘には、より高いレベルの役割に成長できる現従業員を見極め、トレーニングや育成計画を立て、キャリアパスをグラフ化することが必要な場合がよくあります。財務コントローラーは人事と緊密に連携し、組織のニーズに最適なスキルセットと経験を説明し、リクルート、採用、オンボーディング・プロセス、初期トレーニング・プロセスに可能な限り関与する必要があります。また、テクノロジーで支援できることがあります。最適なクラウドベースの人材管理アプリケーションは、プロセスのあらゆる段階で求職者の取り込みを支援できます。これらのアプリケーションにより、コントローラーは現在と将来の人材ニーズをリアルタイムで把握することもでき、求職者はモバイル・デバイスから募集中のポジションに応募することが可能になるため、応募者の審査、面接の日程調整、オファーまでのプロセスが加速されます。
会計は元来データドリブンな分野です。しかし近年、データ・サイエンスの進歩により、財務コントローラーの役割は財務データの管理者から、そうしたデータに基づく戦略計画の実行者へと変化しています。コントローラーには、チームが元帳を正確かつ最新の状態に保つようにするだけでなく、元帳の生データを最先端のAIおよび分析ツールで評価し、実用的なインサイトを抽出し、ビジネス戦略を決定する意思決定者とそうしたインサイトを共有することがますます求められています。
回答: このタスクで卓越するためには、財務コントローラーはデータのエキスパートを周囲に配置し、IT部門と連携してAIによる予測やビッグデータ分析を提供するデジタルツールを調達する必要があります。
毎年、財務に関する法律と規制が新たに導入され、その中には、医療、銀行、保険など、特に規制の厳しい特定の業界固有のものや、特定の州や国固有のものもあります。常に最新の情報を入手し、進化し続ける規則を遵守することは複雑である可能性があり、その責任の多くは財務コントローラーにあります。制裁や罰則が課される可能性があり、企業の評判を落とすことにもなりかねません。
回答: コントローラーは、最新の会計およびレポート要件を自動的に導入する一元化された財務システムを導入することで、コンプライアンスへの対応を容易にすることが可能です。また、コントローラーは、組織のコンプライアンス・オフィサーに統合されたビジネス情報を提供し、チームに定期的なコンプライアンス・トレーニングを受講させ、定期的な監査を実施する際に指揮を執る必要もあります。
財務コントローラーは、日々の財務運用のみに責任を負うわけではありません。数値の中には、将来の成長を推進し、リスクを軽減するために企業がどこに投資すべきかに関するインサイトが埋もれています。
回答: 最近のテクノロジーの進歩、特にAIは、機会の特定と潜在的な落とし穴の指摘において、直感、経験、過去の実績を補強する予測機能を提供します。財務コントローラーは、こうした高度なツールを活用して優先事項を予測し、全社にわたりビジネス・リーダーが長期的な目標とそれを達成するための戦略を設定できるよう支援する必要があります。
企業や組織内のさまざまな部門が独立して運用する「機能別サイロ」は、運用効率の妨げになります。それは、他部門のエグゼクティブによる優先事項、投資、運用戦略に関する重要な意思決定を支援するために、予算に関するフィードバックとタイムリーな最新情報を提供することが必要とされる財務コントローラー部門に特に当てはまることです。
回答: コントローラーは、財務チームが組織全体のあらゆる部門と緊密に連携し、すべてのビジネス・リーダーが予算の優先事項と調達ポリシーを理解し、企業全体の財務の健全性を把握できるよう、リードする必要があります。また、コントローラーが企業のITリーダーと協力し、部門全体にわたりコラボレーションをサポートするテクノロジーツールを調達および導入することも重要です。
財務コントローラーは、組織の予算およびその制約を誰よりも理解しています。ほとんどのコントローラーは、コストを削減し、効率の向上を図る方法を見出すことを任務として担っています。
回答: コントローラーは、予算上の制約を組織全体のエグゼクティブに明確に伝え、どの支出施策を優先度設定すべきか、またコスト削減機会をいかに(どこで)特定すべきかについて理解できるよう支援する必要があります。また、予算実績とビジネスの財務健全性を測定する主要業績評価指標を追跡することで、効率化を推進し、支出削減を支援する財務管理アプリケーションの導入を検討する必要があります。
さまざまな調査によると、コミュニケーションはコントローラーの多くが向上させる必要があると考えるソフトスキルです。コントローラーは、組織全体にわたり、リーダーが予算の制約、支出の優先順位、ビジネス全体の財務の健全性を明確かつ包括的に理解できるようにする責任があるため、コミュニケーションはその職務における重要な部分を占めています。
回答: ほとんどのコントローラは、最新のコミュニケーションおよびコラボレーション・アプリケーションにアクセスできますが、どのようなデジタ ル・ツールでも人間の欠点を補うことはできません。コントローラーは自らのトレーニングに投資し、目標や期待事項を伝える方法を改善する方法をチームに提案するよう求める必要があります。
支出の追跡は、ほとんどの組織において最も重要なデータ管理業務の一つであり、財務コントローラーは、すべての支出が帳簿に正確に計上されていることを確認する責任を担っています。支出には、消耗品やサービスの調達、アウトソーシング・コスト、資本費用、給与、IT投資、さらには買収のための支出も含まれます。不正確な数値は、すでに進行中の重要なイニシアチブを台無しにし、投資家や規制当局との問題につながる可能性があるため、ミスは許されません。同時に、B2Bの請求書発行の複雑さを考慮すると、特に異なる部門が独自に資本設備、サービス、消耗品を調達する場合、エラーが発生する可能性のある点が数多くあります。
回答: 支出額が正確であることの確認を支援するために、コントローラーは、支出分析のベストプラクティス、特に財務データの収集、分類、クレンジングに従うようチームに指示する必要があります。また、総勘定元帳と他の財務ドキュメントとの一致を保つために、請求書レベルの詳細な記録を維持し、毎月の勘定照合を実施することも必要です。一元化されたERPシステムは、厳密な支出分析を行うためにすべての財務データを統合し、あらゆるソースで支出額が正確であることの確認を支援します。
財務コントローラーは、帳簿が正確かつ包括的で最新のものであることだけではなく、その情報が社内外の適切な利害関係者に忠実に報告されていることも保証する責任があります。エグゼクティブは、これらの財務諸表をもとに戦略を策定し、一方、投資家と規制当局は財務諸表を精査します。手動の会計手法は一貫性に欠ける傾向があり、エラーが生じやすく不完全なレポートを生成する可能性があります。
回答: 高度なレポート機能を備えた一元化された財務ソフトウェアは、健全で自動化されたビジネス・プロセスと相まって、コントローラーがこのようなコストのかかる失策を回避できるよう支援します。主な機能には、財務データへのリアルタイム・アクセス、レポート作成プロセスにおけるワークフローの自動化、カスタマイズされたレポート作成、財務統合、データの検証およびエラー修正などがあります。
eコマース、リモート・ワーク、デジタル製品のインターネット出荷機能により、あらゆる規模の企業がかつてないほどグローバル市場に対応できるようになりました。しかし、こうした全体にわたりビジネスを成長させるチャンスは、財務コントローラーに新しい課題をもたらします。
回答: 国際的なビジネスを展開する企業の財務コントローラーは、さまざまな通貨、税率、言語、関税の制限に対応するだけでなく、各国の異なる新たな規制および会計要件への対応を支援する財務アプリケーションを必要としています。
Accentureが実施した調査によると、金融機関のエグゼクティブは、組織内の戦略的変革の推進要因として行動することを妨げる最大の脅威として、データおよびプライバシーの侵害を挙げています。また、同レポートによると、データ・セキュリティを通したリスク管理に取り組んでいる財務担当者はわずか28%にとどまりました。
回答: コントローラーは、組織のCIOおよびITチームと緊密に連携し、財務データベースやアプリケーションへのパッチ適用といったサイバーセキュリティ運用を可視化し、意見を伝える必要があります。特に財務上の機密データにアクセスできるチームに対しては、エンド・ポイントの暗号化、インシデント・レスポンス手順の遵守、未承認ソフトウェアの回避などのセキュリティ・プロトコルの重要性を強調するほか、強力なパスワードの作成、ソーシャル・エンジニアリングやフィッシング・テクニックの認識に関するトレーニングを提供することで、エンドツーエンドのセキュリティを支援することができます。
労働統計局によると、2023年夏の時点で、米国従業員の4分の1以上がリモート勤務をしていました。リモート・ワークは財務コントローラーに課題と機会の両方を提供します。有能なテクノロジーを活用することで、この変化は従業員の生産性と満足度を高めることができます。ただし、チームの統一や経験の浅いスタッフのトレーニングが難しくなることもあります。
回答: リモート・ワークをネット・ポジティブなものにするために、財務コントローラーは、一元化されたセキュアなクラウドベースのビジネスおよび会計システムを通じてチームが連携しており、対面で監督されていない従業員の業務量と生産性を管理・可視化するプロセスを順守していることを確認する必要があります。データ入力、請求書の照合・照合、レポートなどの財務プロセスを自動化するアプリケーションは、オフィス環境では非効率的ながらも機能していた手動プロセスを排除する効果的な方法です。
従来は業務範囲外だったものの、財務コントローラーは、ビジネスの意思決定につながる財務データを管理・統制し、企業全体でエグゼクティブがアクセスできるようにすることを求められることがますます増えています。近年、大組織で作成される財務データの量が飛躍的に増加していることが、この課題を深刻化させています。
回答そのため、コントローラーはCIOをはじめとするITリーダーと緊密に連携し、データの品質とアクセシビティを確保するために必要なツールと専門知識を得て、部門間で財務データ・システムを標準化することが必須となります。多くのコントローラーは、話題になっている「信頼できる唯一の情報源」(サイロ化を解消し、データを必要とする人が迅速にアクセスでき、セキュリティ・ガバナンスを一元化した財務データの共有リポジトリ)の構築を模索しています。
財務コントローラーは、日々の会計業務を超えてその役割を進化させることを支援する、分析ツールを備えた一元化された財務システムを求めています。
Oracle Fusion Cloud ERPアプリケーション・スイートの一部であるOracle Fusion Cloud Financialsは、企業全体で重要な財務管理プロセスを連携させ、データを財務情報の単一ソースに統合することで、よりアクセスしやすく、信頼性が高く、セキュアにします。また、このプラットフォームは、企業間取引の決済や税務レポートの作成など、財務プロセスの80%以上を自動化することができます。手作業の手順を減らすことで、財務諸表にヒューマンエラーが生じにくくなり、決算処理を迅速に行うことができます。国際的なビジネスを展開する組織のコントローラーにとって、Oracle Cloudプラットフォームは、多国籍の会計要件に対応するためのすぐに利用可能なツールと、新しい会計基準およびルールを迅速に導入する機能を提供します。また、複数の通貨、税率、関税の制限、および言語にも対応できます。
Oracle Accounting Hubを使用すると、複数の会計システムから財務データを簡単に統合し、財務データを完全に把握できるようになるため、より優れた予測、報告サイクルの短縮、データに基づく意思決定を支援することができます。
オラクルのERPスイートは、オラクルの最先端のAIツールと完全に統合されているため、コントローラーはAIを活用して、運用効率の向上、標準トランザクションの自動化、ビジネスの成果の予測精度向上、キャッシュフローの予測と最適化を支援することができます。
財務コントローラーに最も必要とされるスキルを教えてください。
財務コントローラーには、何よりもまず深い会計スキルが必要であり、公認会計士資格を有していることが一般的です。特に大規模な会計部門を運営するコントローラーにとっては、高いリーダーシップ・スキルも非常に重要です。また、コントローラーは、財務予測を改善し、組織の財務健全性に関するインサイトの提供を支援するために、データ分析、レポートテクノロジーを使用することに精通していることも期待されます。
財務におけるコントローラーの役割を教えてください。
財務コントローラーには複雑な責任が伴います。すべての財務記録を正確に保存し、財務報告を行うなど、日々の財務業務を管理するだけでなく、コントローラーは戦略的計画をサポートするために財務データを分析するチームを率います。
財務コントローラーとCFOの違いを教えてください。
財務コントローラーは、企業の主任会計士であり、正確な帳簿と記録を維持し、会計部門の日々の活動を運営する責任があります。そのため、コントローラーは通常、CFOにレポートするシニア・マネージャーとなります。CFOは、全体的な財務戦略を推進する責任を担う組織における最高財務責任者です。これら2種類のリーダーは、企業の財務状況を改善するために緊密に連携することがよくあります。