Jim Hearson | コンテンツ・ストラテジスト | 2024年6月14日
よく耳にする言葉ですが、お金を稼ぐためには、まずお金を使う必要があります。とはいうものの、会社が許容できる利幅で利益を上げるためには、その資金がどこに使われているのかをCFOのオフィスがしっかりと把握する必要があります。経費には、事務用品、従業員の出張費、食事やその他の接待費、ニュースやデータソースの購読料、従業員の研修費など、さまざまな費用が含まれます。これらの経費はどんどん積み重なります。つまり、これらを正確に追跡できれば、時間と費用が節約でき、さらなる成長に回せるということです。同時に、経費管理に関する日常業務を自動化することで、従業員の時間を節約できます。財務部門はより戦略的な業務に集中でき、マネージャーは従業員の経費申請をすばやく承認・却下でき、従業員は経費を迅速に申請して本来の業務に戻ることができます。
経費とは、事業の運営に関連する基本的な費用です。これらの経費は、財務諸表の重要な要素となります。特に損益計算書においては、ある期間の純利益または純損失を決定するためにこれらの経費が収益から控除されるため重要です。経費は、給与や福利厚生、賃料、IT、マーケティング、原材料、保険、弁護士費用など、多岐にわたります。ここでは、従業員が日常的に発生させる経費、つまり従業員が経費報告書を上司に提出して承認と返済を受けるような種類の経費に焦点を当ててます。経費について考える際、収益から控除して会社の課税対象所得を減額できるかどうかがポイントとなります。
米国の内国歳入庁は、経費について「一般的かつ必要な費用」と定義していますが、これはその他の国々でも共通する目安となっています。つまり、企業が属する業界で、その費用が一般的または通常のものであり、その企業の主要な機能の遂行に必要であれば、経費として認められるということです。
主なポイント
CFOが経費として計上されるものを特定したら、次にすべきことは、主要な支出活動における経費を追跡することです。経費を正確に追跡することは、予算編成、料金や割引の交渉などの調達活動、キャッシュフロー管理、財務報告や税務会計にとって非常に重要です。経費をタイムリーに追跡することで、財務部門は予算との差異を早期に発見できます。これにより、企業は、必要な措置を講じることができるようになります。例えば、戦術的なポリシー変更の一環として出張を制限したり、より低コストの業務用品サプライヤーに乗り換えたりすることが考えられます。四半期ごとの収益報告が必要な上場企業では、利益や利益率の低下を投資家に告知しなくても済むよう、経費をタイムリーに追跡する必要があります。その他の企業も、資金繰りに窮することのないよう、経費の詳細な追跡は必須です。
CFOオフィスは、経費に関するポリシーを確立する上で重要な役割を果たします。例えば「承認」は、経費の追跡において重要になります。「承認」に関するポリシーには、事前承認が必要となる支出限度額や、各経費の承認にどのレベルの管理職が必要かなどが含まれます。財務部門は、経費のポリシーを適切なバランスで運用する必要があります。管理を維持し、必要な情報を提供するのに十分な厳密さを持たせながらも、それに従うことが従業員の生産性を低下させるほど時間や負担がかかるものであってはなりません。ソフトウェアは、経費承認の生産性を向上させる上で重要な役割を果たします。財務部門は、承認ルールを構築することで、日常的な承認を自動化し、より詳細な調査が必要な例外的な経費や疑わしい経費についてはワークフローを作成することができます。
また、経費を一元的に管理することも重要です。より少数のサプライヤーから特定の物品を購入することで、ボリュームディスカウントを活用して大幅なコスト削減を実現できます。経費を正確に追跡することで、購買部門は、このような量販割引を得るのに役立つ情報を入手することができます。
経費を追跡することのメリットは、予算編成、税金控除、キャッシュフロー、コスト削減の4つの主要分野で得ることができます。これについて、以下でさらに詳しく説明します。
すべての企業は予算を念頭に置く必要があります。そして、経費を詳細に追跡することは、予算の編成と遵守の両方に役立ちます。現在、ほとんどのチームや部門リーダーは予算の遵守について責任を問われる立場にあります。しかし、経費を定期的に追跡することで、支出超過の可能性を未然に防ぐことができます。予算編成サイクルを経るごとに、財務計画・分析チームは支出パターンに関するインサイトを深め、それをより正確に反映させるために将来の予算を調整することができます。経費の追跡により、ある経費が過剰なコストになりつつあることが明らかになった場合、企業はより低コストのサプライヤーを選択したり、ポリシーの変更を検討することができます。例えば、従業員の出張費が急騰している場合、企業は従業員が出張を予約する前に、従業員のマネージャー、場合によってはマネージャーの上司の事前承認を必要とするよう、ポリシーを変更できます。
企業が一般的に必要となる経費を厳密に管理する必要があるもう一つの重要な理由は、その大半が税金控除の対象となるためです。つまり、企業はそれらの経費を総利益から差し引くことができるため、その利益に対して支払う地方税、地域税、連邦税の額を減らすことができるのです。通常、税金控除の対象となるのは、賃金や給与、標準的な福利厚生、原材料やその他の製品財、事業用不動産の賃貸料、事業用資産の減価償却費、広告費、輸送費、出張費、研修費、事務用品、ソフトウェア、保険料、利息、不良債権、そして税金そのものなどです。このリストは延々と続き、国によっても違いがあります。例えば米国では、出張中の従業員の食事代は50%が控除対象となります。
キャッシュフローは企業の財務健全性に不可欠であるため、資金管理を担当する財務部門は、正確かつタイムリーに経費を追跡する必要があります。彼らの仕事は、自社が販売する商品やサービスから入ってくる資金と、出ていく資金を厳密に監視することです。そして後者が、このガイドの本題となります。適切なポリシーやルールが確立されていない場合、顧客との関係構築や同僚との交流を目的とした出張や接待(T&E)のための経費は、多額かつ変動の大きい現金支出につながる可能性があります。これらの経費を正確に追跡し、同様に正確な収益から差し引くことができれば、CFOは、請求書の支払いに必要な資金を確実に確保することができます。また、会社の現在の財務状況を正確に反映したキャッシュフロー予測を作成することができます。経費が発生した時点でそれを追跡できれば、財務部門は、コスト削減や借入の増加など、キャッシュフローを改善するための措置を必要に応じて即座に講じることができます。数週間または数か月後に数値が統合されて手遅れになるのを待つ必要はありません。
上記に関連して、企業がほぼリアルタイムで支出を正確に把握していれば、よりアジャイルな財務慣行を取り入れることができます。これにより、より低コストの選択肢を模索したり、ボリュームディスカウントを得るために再交渉したり、特定の価格が上昇している場合には購入を遅らせたりすることができます。また、経費を正確に追跡することで、意図しない重複や不正支出を削減することも容易になります。例えば、異なるマーケティング部門のマネージャーが、異なるストックフォトサービスを契約していた場合、1つのプロバイダーに利用を集約した方がお得な場合があります。
経費の追跡が企業の利益につながることは、誰もが同意するところでしょう。しかし、CFOが効果的に経費の追跡を行い、それからメリットを得るためには、どのようなステップを踏む必要があるのでしょうか?
法人カードのプロバイダーを含む銀行との関係は、経費追跡に向けた取り組みの基盤となります。法人カードを経費管理システムに統合すれば、従業員がカードで支払った経費が自動的にシステムに反映されるため、エラーが減り、従業員と財務部門の時間を節約できます。一部のERPシステムでは、アプリケーションに銀行サービスが組み込まれているため、調達チームはアプリケーションから直接、B2B取引の資金調達や支払いを行うことができます。また、これらの銀行は、買掛金や売掛金の管理に必要な回転資金の融資も提供しています。経費の管理に必要な資金やデータはすべてこれらの金融サービスプロバイダーを経由するため、プロバイダーとの強固な統合と連携は、大なメリットをもたらします。このような銀行との関係を構築することで、企業は、事業拡大のための高額の購入、専門機器の購入、マーケティング・キャンペーンの資金調達のための融資を受けやすくなる場合もあります。
企業は、ビジネスの領収書や請求書を随時追跡する必要があります。領収書や請求書を監視することで、資金ニーズを予測し、必要に応じて支出を調整し、経費ポリシーの順守状況を監視し、監査に対応し、財務報告の規制を順守することができます。また、税金の申告時期にも、比較的スムーズに処理を進めることができます。
会計ソフトウェアシステム には、スプレッドシートや初歩的な簿記および税務ソフトウェアから、高度なエンタープライズ・アプリケーション・スイートまで、さまざまな規模や機能のものがあります。一般的に、大規模な多国籍企業や急成長中の企業では、高度なデータレポート機能や分析機能が組み込まれた財務アプリケーションが必要となります。これらの機能は、買掛金および売掛金の管理、財務計画と予算編成の統合、支出の管理、日常的な財務業務の自動化、資金予測のサポートなど、多岐にわたります。また、複数通貨を処理し、重複や不正を排除し、財務リスク管理を支援するための機能などもあります。これらの経費管理システムでは、AIをアプリケーションに組み込み、請求書や支払いの入力や照合などの作業をサポートして精度を向上させるケースが増えています。クラウドベースの財務システムは、通常、オンプレミス・システムよりも拡張性が高く、四半期決算や税務申告などの需要の急増にも対応できます。また、一般的に導入や新機能の更新が容易で、在庫管理、サプライチェーン、調達、その他のアプリケーション(特にスイート製品の一部である場合)との統合も容易です。
会計ソフトウェアを会社の銀行口座と連携させずに使用するのは、スポーツカーを所有していながら、一度も運転しないようなものです。確かに、日々の業務は以前よりは楽になるでしょうが、投資の潜在能力を最大限に引き出すことはできません。連携するシステムや機関が増えれば増えるほど、ソフトウェアはより強力になります。ほとんどの財務アプリケーションには、悪用を防ぐための安全対策が組み込まれています。データを自動的に一定間隔でアップロードできるのに、なぜ手動で入力する必要があるのでしょうか?システムで取引を実行できるのに、なぜビジネス銀行口座に個別にログインする必要があるのでしょうか?
すべての上場企業を含む大企業は、経費(および収益)の管理に発生主義会計を使用しなければならないため、実際には選択肢とは呼べないかもしれません。しかし、費用に適用されるこの2つの会計アプローチを明確に理解することには価値があります。費用は、発生時に計上する方法(発生主義)と、支払いが完了した時点で計上する方法(現金主義)があります。これらの記録は、例えば卸売業者から生産資材の代金を現金で支払う場合など、同時に発生することもあります。しかし、クレジットカード、請求書、発注書が関係する場合は、商品やサービスが提供され、代金の支払いが行われるまでに時間差が生じます。
よりシンプルなのは現金主義会計で、取引先に代金が支払われた時点で初めて帳簿に経費が計上されます。この種の会計システムは維持が容易で、銀行口座の残高をいつでも明確に把握できるため、新興企業や小規模企業では、この方法を採用している場合があります。しかし、この会計システムでは、会社の財務状況を正しく把握できない場合があります。例えば、販売による資金収入がある一方で、クレジットで多くの費用を計上している場合、会社の財務状況は良好であるように見えますが、実際にはそうではない可能性があります。そのため、一般に認められた会計原則(GAAP)では、発生主義会計が採用されています。
発生主義会計では、取引が発生した時点で、金銭の授受が行われる前であっても、その取引を計上します。例えば、あるレストランが食材をクレジットで購入した場合でも、食材の購入費用(買掛金)はすぐに計上されます。この会計方法は、急激な財務上の変動を回避し、会社の財務の健全性をより正確に把握するのに役立ちます。米国では、収益が2500万ドル未満の企業は、経費の計上方法を自由に選択できますが、一貫性と正確性を保つ必要があります。収益が2500万ドル以上の企業は、発生主義会計を採用することが義務付けられていますが、規則は国によって異なります。
会計ソフトウェアは、支出状況を把握するのに役立つ月次および四半期ごとのレポートを作成することもできますが、同時に、よりリアルタイムの経費情報を提供することもできます。会計レポートの種類ごとに、費用を監視・分析する機会が得られ、それらを基に翌年の予算計画を立てることができます。例えば、ある製薬会社のCFOが、営業部門の旅費や交際費がここ数ヶ月増加傾向にあることに気づいたとします。その場合、通常利用している航空会社やホテルとの契約を見直したり、営業会議をテレビ会議に切り替えたり、高額な交際費の支出については事前承認プロセスを新たに設けるなどの対応が可能になります。
Oracle Fusion Cloud Accounting Hubは、Oracle Cloud Financialsアプリケーション・スイートの一部であり、他社製のERPシステムを含むさまざまなソース・システムからの財務データを統合し、標準化します。これにより、企業は財務プロセスを簡素化し、会計ポリシーを一貫して実施し、複数のレポート要件を満たすことができます。Oracle Financialsは、すべての財務取引から記録されたデータを基にしたインサイトを提供することで、予測の精度を高め、リスク管理とコンプライアンスをサポートし、意思決定を改善します。複数の通貨や言語に対応するこのプラットフォームは、進化し続けるAI分析により、企業の財務プロセスの80%以上を自動化することができます。
Oracle Financialsは、Oracle Fusion Cloud Enterprise Resource Planning (ERP)の一部であり、調達、プロジェクト管理、サプライチェーンなどの機能が統合されています。Oracle Cloud ERPは、サービス中心型企業および製品中心型企業向けのトップクラスのERPシステムとしてアナリストから高い評価を得ており、企業が競争優位性を獲得する上で欠かせない存在となっています。
どのような種類の経費が税金控除の対象となりますか。
事業運営に必要な、一般的な経費は、通経費ジネス経費として認められ、税金控除の対象となります。このような経費には、賃料、給与および福利厚生、暖房および照明、マーケティング、売上原価、専門機器、臨時の出張費などが含まれます。
税金控除の対象とならない経費にはどのようなものがありますか?
すべての経費が一般的で必要な経費として見なされ、税額控除の対象となるわけではありません。例えば、交通費などの従業員の日常的な通勤にかかる費用は控除の対象となりませんが、これらの規則は地域によって異なります。
経費を追跡するために会計ソフトを使うべきでしょうか?
ある程度の規模の企業であれば、会計ソフトなしで経費を把握することは不可能に近いでしょう。会計ソフトウェアを使用するメリットには、確定申告時の経費報告がより効率的かつ正確になること、年間を通じた経費の追跡により変化をすばやく把握し、資金不足を回避できること、すべての経費を一元管理することで経費の傾向やサプライヤー料金が分析しやすくなり、ボリュームディスカウントの交渉に役立てられることなどがあります。