医療人事:解決すべき9つの主要な課題

Mark Jackley | コンテンツ・ストラテジスト | 2023年3月17日

新型コロナウイルスの発生以前から、ヘルスケア業界はすでに大きな変化を経験していましたが、2020年以降、変化のスピードはよりいっそう加速しました。人材不足・人員不足が蔓延し、従業員の燃え尽き症候群や離職率が急増したことから、時には患者ケアが危険にさらされることもあります。こうした混乱は、医療機関の人事マネージャーに大きな課題を突きつけています。人事マネージャーは、従業員により多く投資し、従業員のモチベーションを高め、最高のパフォーマンスを発揮してもらうための、より効果的な方法を見つけなければなりません。

ヘルスケア業界における人事とは

人事、または人材管理は、すべての医療システムにおいて重要な役割を担っています。人事チームは、医師や看護師など、患者のケアを行う人々をサポートすることで、患者の予後の改善に貢献しています。人事は、患者の受け入れや記録管理から安全プロトコルなど、業務プロセスを見直し、改善することで、病院やクリニックのスムーズな運営をサポートします。また、人事は、リーダーシップと協力して、従業員、患者、そしてビジネスに利益をもたらす組織戦略を計画します。

病院やクリニックでは、従業員のエクスペリエンスが仕事の成果、効率、患者ケアに影響します。そして、人事チームは、すべての従業員のエクスペリエンスを最高のものにするための支援ができます。人事には、新入社員の発掘、採用、オンボーディングに加え、既存の社員が定着するような企業文化を構築するという、重要な任務もあります。そのためには、従業員からのフィードバックに耳を傾け、それに基づいて行動すること、柔軟なスケジュール管理を行うこと、人材育成を管理することなどが挙げられます。

また、人事は、あらゆるレベルのリーダーシップと従業員との間のパイプ役として、従業員をサポートしています。人事チームは、医療やビジネスの利益と組織内の個人や部門の懸念のバランスを取るために、すべての従業員からの信頼を得なければなりません。

主なポイント

  • 人事は、医療システムのビジネス目標と従業員の利益のバランスが取れるよう支援します。
  • 医療機関の人事チームには多くの責任がありますが、その主なものは、最高の人材を採用し、育成し、維持することによって、適切な人員配置を確保することです。
  • 人事は、人手不足を解消するため、人材を惹きつけ、維持するためのプログラムに多くの時間を費やす一方で、法令順守などの他の業務にも取り組んでいます。

医療人事が重要な理由

医療人事が重要なのは、患者の命が、人事がサポートする臨床医やスタッフにかかっているからです。人事チームは、業界全体の人手不足の中で、有能な人材を確保するという重要な役割を担っています。報酬パッケージの更新や、トレーニングにアクセスしやすくするための技術を取り入れるなど、優秀な従業員を維持するためにあらゆる手段を講じています。

人事部はまた、組織のパフォーマンス管理プロセスを監督し、従業員が仕事で優れた成果を上げ、最高品質の患者ケアを提供するために必要なフィードバックを得られるようにします。

他の多くの業界と同様に、ヘルスケア業界の人事も、組織戦略や意思決定に影響を与える重要な情報を提供することで、医療機関がより効率的に問題を解決できるよう支援します。例えば、人材不足を解消するために外部から採用しようとするのでなく、人事が社内の研修や昇進の慣行を変えることを提案することで、より早くポジションが埋まり、同時にキャリアパスの拡大という課題にも対処できるかもしれません。

人事が組織の事業戦略の立案に携わることが多くなっています。なぜなら、人事が戦略に関与していなければ、リーダーシップの目標を効果的にサポートできないからです。例えば、経営陣が専門的な医療サービスに力を入れることを決めたのに、人事が一般医を採用してしまったら、スキルギャップが生じることになります。

人事は法務部とともに、倫理的な問題(医療と社会の両方)も監督しています。人事マネージャーは、組織とその従業員が内部ポリシーと外部の法令を遵守していることを徹底するための重要な役割を担っています。

医療人事の役割の変化

医療人事の役割は、ある意味では、新型コロナウイルスの発生当初から変わっていません。人事チームは今でも人を採用し、入社させ、職場の安全を確保し、法律や規制のコンプライアンスを維持するという重要な役割を担っています。しかし現在、人事は、人材配置を改善し、業界全体のパンデミックに起因する変化に対応するための大きな取り組みの一環として、従業員のウェルビーイングに多くの投資をしています。

病院の人事チームは、2020年から2021年にかけて危機的な状況に追い込まれたため、シフトを埋めること、可能な限り優れた患者ケアを提供するためにチームが必要とするものを確保すること、多くの従業員が必要としていたメンタル・ヘルス・サポートを利用できるようにすることに注力していました。American College of Healthcare Executivesは、2018年の報告書で、業界の最大の懸念事項として財務上の課題を挙げ、次いで患者の安全と政府からの指令を挙げていました。それが2021年には、人材不足が最大の懸念事項となっています。

人材確保が最優先されるようになるにつれ、医療機関の幹部は、従業員に投資することの大切さと、人事が適切なサポートをすることで得られるプラスの影響について、より深く理解するようになりました。もちろん、人事は、法令遵守や職場の安全確保の推進・徹底という役割を忘れたわけではありません。しかし現在では、彼らはリーダーから新しい任務を受けています。それらは例えば、コンテストや楽しいイベントなどの従業員エンゲージメント・プログラムへの投資、キャリアパスの明確化と拡大、スタッフの燃え尽き症候群を防ぐためのスケジュール・ポリシーの見直し、給与や福利厚生の充実などを推進することです。

医療人事が抱える9つの課題

人事チームは、優先順位を従業員重視にシフトする中で、以下の課題に対処する必要があります。

1. 採用とオンボーディング

2030年までに、米国では12万人の医師が不足する可能性があります。人員を維持するために、人事は従業員の採用とオンボーディングのための新しい戦術を模索する必要があります。Hospital & Health Networksによると、ミレニアル世代でオンラインの求人情報サイトを利用しているのはわずか29%に過ぎません。若いプロフェッショナルにアプローチするため、人事の中には、マーケティング部門と提携し、検索エンジン最適化やリードトラッキングを利用して、求職者の獲得と追跡を強化しているところもあります。また、契約ボーナスの支給や引っ越し費用の補助を行うところもあります。自動化されたシステムは、新入社員のオリエンテーション、関連するトレーニング、福利厚生の登録などをより効率的にスケジューリングし、オンボーディング・プロセスを改善することができます。また、メンターを配置することで、新入社員に貴重なガイダンス、サポート、つながりを提供するなど、オンボーディング・プロセスを加速させ、パーソナライズすることができます。ベストプラクティス:初出社日に、新入社員が必要なテクノロジーにアクセス可能な状態にし、その使い方が理解できていることを確認しましょう。

2. トレーニング

他のどの業界よりも、医療業界の従業員は最新のトレーニングを受ける必要があります。なぜなら、時代遅れのスキルセットは臨床ケアを低下させるからです。人事チームの中には、トレーニング機関と提携しているところもあれば、自社でオンサイトやリモートでトレーニングを提供しているところもあります。特に重要なのは、臨床医やサポートスタッフが必要な免許や資格を最新の状態で維持できるようにすることです。クラウドベースのトレーニング・プラットフォームは、コンプライアンスを自動的に追跡し、従業員に義務を通知し、必要なコースにリンクさせることができます。トレーニングは人材開発の重要な要素であるため、従業員の仕事の満足度と定着率を高めるために雇用主が改善するべき分野です。最近の調査によると、85%の従業員が雇用主によるキャリア支援に満足していないとのことです。

3. スケジュールと給与の管理

人事と聞いて、ロジスティクスについて考える人はほとんどいないでしょう。しかし、病院のシフトスケジュール管理は複雑なロジスティクス課題であり、特に慢性的な人手不足のときはなおさらです。大規模な医療施設では、医師、看護師、契約社員、訪問医、その他のスタッフなど、何百もの異なるローテーションを管理しなければなりません。スケジューリングを正しく行うことは不可欠です。ある調査によると、救命看護師の33%、救命救急医の45%が重度の燃え尽き症候群を経験しているそうです。人事は、コミュニケーション、アクセス、変更が容易な柔軟なスケジュールを作成するよう支援する必要があります。

給与計算も人事のロジスティクス上の課題です。セラピストや外科医など、医療従事者の中には、個々の患者の治療に応じて報酬を得る人もいます。また、給料制で、ボーナスのインセンティブがある場合もあります。適切なロジスティクスがなければ、給与支払いが遅れたり、間違いが発生したりする可能性があります。給与計算のもう一つの重要な課題は、人件費の管理です。医療機関では、残業代や割増賃金(2倍や3倍の残業代など)を分析し、過剰に支払っている部門を特定するなど、いくつかの方法でこのコストを抑制しています。また、契約社員、巡回看護師、その他派遣社員など、一般的に高額で代替が難しい人材の利用を控えるという戦略もあります。

4. スタッフの確保

業界の人材動向の把握は、どの企業にとっても必要なことですが、医療機関の人事担当者は、特に幅広くアンテナを張る必要があります。リモートワークのような世界的なトレンドへの理解を深め、次のようなことを考える必要があります。在宅勤務をしている社員は何人いるのか?オンサイトで必要な社員は何人か?バーチャルワークを実現するための適切なテクノロジーはあるのか?関連するサイバーセキュリティの懸念は何か?しかし、医療機関の人事担当者は、地域についても考える必要があります。サービスエリアの人口は減少しているのか、それとも増加しているのか、そしてそれが人員の数にどのような影響を与えるのか?競合他社に人材や顧客を奪われていないか、もしそうなら、対応策はあるか?医療機関の市場の人口が老化、または若年化したり、平均所得や生活の質が低下したりすることもありますが、人事は、こうした変化を予測し、それに対応する必要があります。

5. ダイバーシティ、インクルージョン、公平な対応

最高の職場とは、すべての人が、自分の居場所がある、フェアな待遇を受けていると感じる職場です。人事部門は、この理想を実現するためのポリシーを定め、実行しています。採用活動、昇給、キャリアアップに関する明確なガイドラインは、透明性が高く、公平な企業文化を築くのに役立ちます。また、これらのガイドラインを一貫して実施することで、従業員が、年齢、人種、民族、性別、性的指向、またはその他の理由で差別された場合、彼らが保護されることが分かります。このような保護は、患者にも適用される必要があります。現在、ほとんどの人事チームでは、ダイバーシティとインクルージョンの促進、ハラスメントの撲滅、および関連するトピックに関する年次トレーニングを義務付けています。このような教育がなければ、不適切な行動が発生しやすくなります。

6. 患者満足度の維持

従業員に期待されるパフォーマンスを定義することも、人事の仕事の一環です。医療システムにとっての課題は、高いパフォーマンスを患者満足度に確実につなげることです。職務記述書の作成から各部門の組織的役割の定義まで、人事は優れた医療を提供するための要件を設定します。人事はまた、従業員が患者のために力を尽くせるような職場文化を育む責任も負っています。医療機関の雇用主は、優れたケアを提供した従業員に報酬を与え、その事例を組織全体で共有する必要があります。このような公表は、従業員に相応の評価を与え、患者満足度を向上させる行動を奨励することになります。

7. 従業員管理

近年の人材ギャップと全国的な人材不足を考慮すると、人事部門にとって、従業員管理は最重要課題となっています。人事担当者は、実際に看護師や医師を管理するわけではありませんが、従業員に関するあらゆる事柄を管理します。例えば、人事は、新入社員データの収集プロセスを監督してしています。このプロセスは、コンプライアンスを維持するために適切かつセキュアに行わなければなりません。また、人事は、従業員のパフォーマンス・プロセスも管理し、彼らが定期的にフィードバックを受けることで、仕事を改善し、キャリアを向上させることができるようにしています。さらに、人事は、組織構造の形成を支援することもあります。時には解雇という不本意な仕事を伴うこともありますが、近年の医療システムは従業員を減らすのではなく、増やす傾向にあります。

8. 懲戒と紛争管理

医療機関における懲戒問題や従業員の紛争は、患者ケアに支障をきたす可能性があります。従業員がシフトを休んでチームの人員不足を放置したり、患者データを不注意に扱ってプライバシーを侵害したりすると、病院やクリニックは訴訟を起こされる可能性があります。違反行為が発生した場合、それが高額報酬の医師や獲得困難な専門看護師であっても、従業員が患者や同僚を軽視した場合、人事は違反者を懲戒処分するなど対応する必要があります。しかし、従業員同士や上司との間に紛争が起こった場合、すぐに罰や懲戒処分に頼るのではなく、外交的なアプローチが好まれることが良くあります。状況が極めて複雑な場合、医療機関の中には、外部の調停者の助けを借りるところもあります。

9. コンプライアンスと合法性の確保

医療機関の人事チームは、時間管理という大きな課題に直面しています。引き続きレコード管理や労働安全などの法令遵守を徹底するという役割を負う一方で、人材不足の解消にこれまで以上に時間を割かなければなりません。これらの職務を両立させる簡単な方法はありません。人事の役割を明確にし、権限を委譲することも有効ですが、人事スタッフ、特にコンプライアンスの経験を持つスタッフを増員することも必要かもしれません。人事は、雇用法や医療法に関する知識を身に着け、違反や罰金を避けるための監視役として機能しなければなりません。米国では、違反すると年間150万ドルの罰金が科される「医療保険の相互運用性と説明責任に関する法律」、「医療保険制度改革法」、「労働安全衛生局(OSHA)」の規制などがこれにあたります。また、人事部は、雇用契約を見直し徹底する必要があります。これには、人材不足を補うために増えている出張医師や看護師との雇用契約も含まれます。

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人事チームがあらゆる責任を管理するのに役立つプラットフォームは、数多くあります。しかし、医療人事には独自の課題があるため、この業界に合わせたアプリケーションが必要となります。

Oracle Fusion Cloud Human Capital Management (HCM)は、クラウドベースのアプリケーション・スイートで、医療システム全体のあらゆる人事プロセスを接続する、一元化されたデータソースとして機能します。包括的なプラットフォームとして企業全体のシステムと統合されるため、医療機関は、古い、非接続のテクノロジーを置き換えることができます。

Oracle Cloud HCMを使用することで、人事チームは、従業員の離職率の低下につながる思いやりのある文化をサポートするプロセスを構築、管理、および最適化することができます。また、自動化されたシステムとプロセスを使用して、有能な候補者を迅速に発見し、採用することができます。人事は、臨床医と非臨床医に機会を与えるため、パーソナライズされた役割ベースの学習ツールや人材開発プランを使用して人材を管理することができます。これにより、従業員は、専門知識を身に着け、職務遂行能力を高め、キャリアアップできます。また、柔軟な人員配置計画を立てることで、従業員のパフォーマンスと患者ケアを向上させ、燃え尽き症候群を軽減させることができます。さらに、人材管理ツールとコミュニケーション・ツールを使用して、シフトのスケジュールと組織全体のチームワークを向上させることで、従業員のモチベーションを維持することができます。

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医療人事の役割に関するよくある質問

医療人事の役割とは何ですか?
医療機関の人事担当者には、主に二つの役割があります。雇用主の利益を優先すると同時に、過酷な職業に従事する従業員を擁護することです。ここ数年、質の高い患者ケアとビジネスの成長には、モチベーションの高い人材が不可欠であることが浮き彫りになっています。

医療人事の役割はどのように変化しているのでしょうか?
医療人事は、採用や報酬管理など従来の業務にとどまらず、その役割を拡大しています。現代の人事は、リーダーシップと協力して事業戦略を策定することや、患者データが爆発的に増加する中で企業コンプライアンスを確保すること、従業員のエクスペリエンスを向上させるテクノロジーを導入することなども担当しています。

安全衛生における人事の役割とは?
米国では、医療の職場がOSHA規則に準拠していることを保証する責任は、人事が負っています。ここ数年、人事は新型コロナウイルスという医学的脅威と、それに伴う医療従事者に対する暴力の増加という問題にも取り組んでいます。

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