製造業企業が抱える課題トップ10とその解決策

Joseph Tsidulko |コンテンツ・ストラテジスト| 2023年8月21日

COVID-19パンデミックの余波の中、製造業企業は今なおダメージからの回復を果たせずにいます。継続的なサプライチェーンの混乱に対処しながら、スタッフ全員の職場復帰に手を焼いています。また、持続的なインフレ、規制の増加、よりサステナブルな行動への顧客の期待、商品や原材料の供給元となる国の地政学的不安にも直面しています。

製造業企業は、効率性や製品品質を向上させたり、市場投入までの期間を短縮したりするInternet of Things(IoT)、AI、ブロックチェーンなど、最先端のテクノロジに投資しながら、これらの課題に取り組む必要があります。しかし、こうしたデジタル・トランスフォーメーション・プロジェクトを実現すること自体が大きな難問となります。次に、ランサムウェア攻撃など、ハッカーがデジタル・インフラストラクチャに与える脅威が高まっています。

製造業企業が抱える10の課題とその解決策

製造業企業が直面している課題は、圧倒的なものとなる場合がありますが、解決策は手の届くところにあります。生産現場の再構築、組立ラインの改装、従業員の再教育、大規模な人材体制の再構築に多大な投資を伴う解決策もあれば、工場のプロセスが効率化され、リスクが制限されるようにベスト・プラクティスを適用するなど、シンプルで比較的安価な解決策もあります。また製造業企業は、相互接続されたソフトウェア・システムの助けを借りて、課題の軽減も図っています。

ここでは、業界の課題トップ10といくつかのハイテクおよびローテクな解決策を紹介します。

1. サプライチェーンの混乱

新型コロナウイルスにより、世界中の製造生産が停止し、倉庫、出荷、輸送などの分野におけるサプライチェーン・パートナーの業務も停止しました。これまでに工場の閉鎖があったものの、サプライチェーンのボトルネックによる商品不足は、他の理由により継続しており、そのうちの一部は、パンデミックにより露呈した既存の欠点でした。サプライチェーンに影響を与える外的要因には、極端な気象事象、労働力不足とストライキ、貿易禁輸、戦争などがあります。そして内的要因には、非効率なサプライチェーン管理(SCM)プロセスが含まれます。

解決策:製造業企業が外的リスクを解消するためにできることはあまりありませんが、生産、調達、出荷のオペレーションを複数の地域エリアに分散させることで、外的リスクへの露出を抑制することは可能です。シナリオ・モデリングを含むサプライチェーン・プランニング・システムは、製造業企業が潜在的な混乱に備えるのに役立ちます。たとえば、パンデミックが再発し、将来的に工場閉鎖が発生する可能性が高い場合、製造業企業は、複数の国から原材料を調達したり、複数のサプライヤーから部品を調達したりするシナリオをモデル化し、そうした変更がコストや利益にどのように影響するかを予測したりすることができます。中断が発生したときに方向性を迅速に変える能力は、リスクを軽減する上で重要となります。

製造業企業は最先端のSCMシステムにより、サプライヤ、フリート、流通倉庫、エンド・カスタマのワークフロー、スケジュール、キャパシティをエンドツーエンドで可視化できます。これらのシステムによって提供されるリアルタイムのステータス更新により、ほぼすべての業界のサプライチェーンにストレスを与えるボトルネックを迅速に検出、識別、解決することができます。また、SCMシステムは、機械学習を活用して需要予測を改善し、製造業企業がより効果的な計画を策定できるようにすることで、サプライチェーンの課題を軽減します。同時に、スムーズなビジネス・トランザクションを実現するため、注文、配送および支払の調整を支援します。

2 サステナビリティ

顧客、投資家、従業員、政府の規制当局は、製造業企業がESG(環境・社会・ガバナンス)の進捗状況について報告するよう要求しています。彼らは気の利いたサステナビリティ・スローガンを求めているわけではなく、製造業企業が自社の工場の二酸化炭素排出量や廃棄物を削減していること、天然資源を保護していること、(製造業企業とそのサプライヤーが)世界中の工場で公正な賃金を支払っていること、多様な従業員を採用していること、そして安全な施設を運営していることの確証を得たいと考えています。複数の調査により、こうした環境や社会の問題について高い関心を持つ(特にミレニアル世代とZ世代の)消費者が増加しており、彼らはそうした基準に従って製造された製品には、より高い金額を支払ってもよいと考えていることが明らかになっています。ある調査では、アメリカ人の3分の2(18歳から34歳までのアメリカ人の80%)は、持続可能な方法で調達および生産されることが確認された製品には、より高い金額を支払ってもよいと考えていることがわかっています。

解決策:手っ取り早い解決策はありませんが、さまざまな生産プロセスに段階的な変更を加えると、大きな成果が得られる可能性があります。製造業企業は、手始めに生産ラインを再構築し、原材料を再利用してリサイクルするクローズド・ループ・プロセスをサポートすることで、廃棄物を削減できます。次に廃棄物管理システムを導入またはアップグレードすることで、環境的に健全な方法で残存する廃棄物を処分できます。製造業企業は、ESGのベストプラクティスに準拠したサプライヤから原材料を調達することもできます。こうした手法を検証するには、あらゆる当事者が膨大な量のデータを収集し、透明性が確保された方法で報告する必要がありますが、利用可能な新しいシステムは、こうしたすべての情報を収集、調整、報告できます。

製造業企業は、ブロックチェーン技術を活用して、サプライヤとパートナーの環境および労働慣行を追跡することができます。最新のEnterprise Performance Management(EPM)システムには、ESGの計画、統合、分析が含まれており、意思決定者は、サステナビリティの目標達成に関する進捗および停滞状況に関する詳細なレポートを作成できます。製造業企業は、人工知能を利用して出荷ルートを最適化することで、記録されるマイル数と消費される燃料量を削減することもできます。また製造業企業は、増加する電力シェアを消費する自社独自のデータセンターを運用するのではなく、より効率的なデータセンターを擁し、環境に配慮したエネルギー源を利用しているクラウド・ベンダーを利用することで、二酸化炭素排出量を削減できます。

3. ワークフォース/労働力不足

労働力不足は、「製造業」セクターにおいて特に深刻となっています。米国労働統計局によると、2023年5月時点の米国における製造業関連の求人件数は60万4,000件に上ります。Deloitte and The Manufacturing Instituteによる2022年の調査によると、その件数は2022年5月の837,000件からはかなり減少したものの、製造業の未充足雇用件数は、2030年までに210万件に達する可能性があります。

米国の製造業企業は、特に機械工、溶接工、金属工など、熟練した工場労働者の求人の充足で問題を抱えています。こうした問題は、労働者が交代要員の採用を待たずに退職したり、事業が国外に移転される可能性の低い他の業界でより安定した雇用を求めたりすることにより、今後数年間でさらに悪化すると予想されています。

解決策:製造業企業はさまざまな点でのスキル不足に直面しています。2023年6月のNational Association of Manufacturers(NAM)による調査では、回答者の57%が賃金成長率が3%以上になると見込んでおり、これは2022年よりもわずかに低迷しているものの、2021年よりは大きく増加しています。

2030年までにメンターシップや教育プログラムを通じて500,000人の女性をワークフォースに加えることを目指すWomen MAKE America Initiativeや、人々をトレーニングや人材募集とつなげるCreators Wantedプログラムなど、より多くの人々を専門的職業に誘致するプログラムを米国の製造業企業が設立しています。

個々の企業は、メンターシップ・プログラムの立ち上げまたはサポートを行い、歴史的に黒人の学生を擁するカレッジや大学などの教育機関と提携して、従業員構成の多様性を確立しながら、より多くの労働者を専門的職業に誘致することで、こうした先例に倣うことができます。また、たとえば拡張現実やバーチャル・リアリティを駆使したトレーニング・プログラムなどに投資し、現在の従業員やエントリーレベルの従業員を、最新の製造技術およびプロセスに迅速に順応させることもできます。

高度な人材管理(HCM)アプリケーション・スイートは、採用ニーズの予測、人材の獲得および維持のサポート、スキル・ギャップの特定、現在の従業員へのより柔軟なスケジューリング・オプションの提供により、製造業企業による人手不足の軽減も支援します。その一方で、AI、ロボット工学、その他の先進技術は、一部の製造業務を自動化して、人的労働への依存を減らしています。

4. 規制

厳しい規制の負担に対応することは、製造業企業が最適な効率で業務を行う能力を疲弊させ、ひいては生産量を低下させ、利益を減少させることになります。何千もの州法、連邦法、国際法およびその他の規制要件への準拠を維持することは、課題としては一般的ではあるものの、コンプライアンスを遵守できなければ、企業にとって甚大な損害やコストが発生する可能性があります。そうした過失は、罰金やその他の制裁、ブランド・イメージの毀損、そして結果的には高額な訴訟につながり得ます。

一部の製造業企業は、税金、財務監督、流通、調達方法などを管理する規制への準拠で困難に直面しています。また、そうした企業が顧客の機密情報をオンプレミスおよびクラウドベースのITシステムに保存する方法を監督する新しいデータ規制も登場しています。

多くの規制は準拠するのが当然であることは言うまでもありません。一般の人々は、有害な化学物質を使用するプロセスを採用している企業が、厳しい環境基準、健康基準、安全基準を満たすことを期待しています。同様に、医療システムや医療機器の製造業企業は厳しい品質および安全規制を満たさなければならず、軍事システムの製造業企業は厳しい輸出管理の対象となります。

しかし、顧客に利益をもたらす規制は、高いコストを伴う可能性があります。National Association of Manufacturers (NAM) 2022 Outlook Surveyでは、製造業企業の回答者の約94%は、規制強化により、従業員、機器、施設への投資能力が低下することを示唆しています。

解決策:規制は財務、業務、および管理の負担を増やす可能性がありますが、最終的には製造業企業が生産性と収益性を向上させられるように、その業務を最新化する可能性もあります。

品質管理、廃棄物処理、従業員の安全、排出量、外国貿易、データ・ガバナンスを監督する新しい連邦および州の要件は、多くの場合、生産ライン、工場プロセス、財務管理およびレポート・システムのアップグレードによって満たされます。こうした投資は、多くの場合、無駄な慣行を減らし、利益を向上させます。

たとえば、温室効果ガス排出量を報告するという連邦政府の要件に従った製造業企業は、自社が収集しているデータを利用して、どこでエネルギーに過剰な支出を行っているかを把握しています。同様に、新製品の安全規制によって品質保証プロセスが複雑化する可能性はありますが、規制を満たした製造業企業は、自社の製品が高水準であることを宣伝して、顧客ロイヤルティを高めることができます。また、財務報告、課税、外国貿易に関する新たな規制に対応するため、製造業企業は、事業支出をきめ細かく追跡し、定期的な監査を実施するクラウド・ベースのソフトウェアの採用を推進し、無駄な支出を特定するさらなるメリットが得られるようになる可能性があります。

5. 自動化

IoT、AI、ロボット工学、3D印刷、クラウド・ベースの監視および制御システムを含む高度な自動化テクノロジーは、手動プロセスの減少または解消により、工場運用の効率性と信頼性を高める可能性があります。しかし、これらのテクノロジを実装することで、製造業企業にとっての頭痛の種が生じることがよくあります。

業界はプラント運営を改善するためにスマート・オートメーションの手法を評価していますが、一般的なプロセス、ツール、プロトコル、デバイスについてはまだ標準化されていません。そのため、ファクトリ・フロアの自動化は、個々のシステムをアップグレードするのではなく、複数の異なるシステムの統合が課題となることがよくあります。

もう1つの課題は、工場が通常、複数の生産システムとやり取りする可能性のあるこうした新しいテクノロジを導入しながら、フル・スケールの運営を維持する必要があることです。マネージャは、高度なデータ収集センサーを導入して組立てラインを最新化することを望んでいるかもしれませんが、その組立てラインが重要なコンポーネントを量産している間、それを行う方法を見つけるのに苦労する可能性があります。

解決策:IoTセンサー、コンピュータ・ビジョン・システムに情報を供給するカメラ、、ロボットなど、組み立てラインに沿って設置された自動化対応デバイスおよびアプリケーションをネットワーク化して、監視、制御およびデータ分析を実行するクラウド・ベースのアプリケーションに、データを効果的にストリーミングする必要があります。

製造業企業は、その特定のニーズと制約に基づき、有線または(5Gが普及しつつある)無線ネットワーク・インフラストラクチャを選択することから始めます。これは、多くの場合、ファクトリ・フロアのレイアウト、機器のアクセシビリティ、およびデータ量によって決まります。ネットワーク・ケーブルを配線する場合でも、ワイヤレス・テクノロジを実装する場合でも、最新の自動化システムをサポートするために、機器は帯域幅、ネットワークの自己回復性およびセキュリティを提供する必要があります。

ただし利用可能なデータ・ネットワークでは、製造業企業に出来ることが限られてきます。製造業で使用されている通信プロトコルが寄せ集めであることを考えると、通常、自動化プロジェクトを実現するには、より多くの統合作業が必要です。

製造業企業は、特にスマート・マニュファクチャリング、予防保全、オンライン・サポート、フィールド・サービス、デジタル・ツイン(システムの仮想表現)による迅速なQAテストなどのユースケースにおいて、AIに高い期待を抱いています。特に生成AIは登場して間もないため、多くの製造業企業は潜在的アプリケーションやテクノロジの実装方法をまだ理解していません。最も高度なサプライチェーンおよび製造アプリケーションは、アプリケーションにAIを組み込むことでこうした懸念を軽減します。組込みのAIと機械学習により、製造業企業は機械の故障を予測し、先を見越した保守作業を行い、生産スケジュールを調整して、コストのかかるダウンタイムを回避できます。また、顧客に納入した産業機器に対する根本原因分析、影響分析および封じ込め分析を実行し、最終製品のパフォーマンスを継続的に監視して最高レベルの顧客満足度を提供することもできます。

6. コラボレーション

製造部門は、多くの場合、地理的に離れた場所を含む複数の現場の間で連携する必要があります。たとえば、異なる都市(または国)の工場で同じ製品を組み立て、一貫した機能性と品質を確保するために生産方法と目標を調整する必要がある場合もあれば、同じ製品に対して異なる構成部品を異なる工場で製造し、最終組立の遅延を回避するために生産スケジュールを調整する必要がある場合もあります。

統一された製品または異なる製品ラインの作成は、同じ組織内の施設間であっても、異なるアセンブリ方法、ドキュメント手順、追跡プロセス、レポート要件を使用することで妨げられます。製造業企業は、互換性がなかったり、接続されていなかったりする可能性が高いシステムを擁するパートナーやサプライヤのスケジュールやロジスティクスを調整する必要があります。

解決策:効率的なコラボレーションは、多くの場合、効果的なコミュニケーションの結果もたらされます。それは企業内では、社内メッセージング・グループ、定期的なチーム・ブリーフィング、Q&Aセッションなど、マネージャと従業員の間のコミュニケーション・チャネルを確立するのと同じくらい簡単です。こうしたローテク・アプローチは、すべての同僚が同じ認識を持てるようにする上で非常に重要です。マネージャは、すべての従業員にビジネスの進展を知らせることに最優先で取り組む必要があります。効果的なコミュニケーション方法についてのトレーニングを提供することもできます。

これらのアプローチの中には、サプライヤやその他のパートナに拡張できるものがあります。企業間の定期的なミーティングやオープンな対話、さまざまなレベルのリーダーシップを持つ従業員とのつながり、コラボレーションの潜在的問題の円滑化に大きく貢献します。

テクノロジも大きな役割を果たします。クラウドベースのコラボレーションとプロジェクト管理プラットフォームにより、地理的に分散している大勢の従業員は、リソース、タスク、予算を追跡すること、共通のレポート・フレームワークで業務を標準化すること、関連する職務に基づいて生産ワークフローのさまざまな要素にアクセスできるユーザーを制御することで、現場や組織全体で製造プロセスを管理しやすくなります。

7 生産性

製造業企業は、従業員の生産性を向上させること(一般的に生産に必要な労働時間や資本などのインプットに対するアウトプットの量を意味します)で、労働力不足、インフレ圧力、サプライチェーンの混乱などの問題を補おうと検討しています。

生産性を阻害する要因には、非効率的なプロセス、複雑なワークフロー、効果的でないパフォーマンス管理、従業員トレーニングの不足などがあります。その結果、製造業企業は、エネルギー、材料、従業員時間などの貴重なリソースを浪費します。生産性の低下により、従業員の仕事の満足度も低下し、問題解決への意欲が低下して、従業員が転職を検討する可能性が高まります。

生産性を向上させるテクノロジ、プロセス、トレーニングを導入しながら、工場現場全体で一貫したオペレーションを維持することは困難です。新しいシステムに投資すると、長期的には各従業員と生産施設の生産性が向上する可能性がありますが、短期的なトラブルや遅延を引き起こす可能性があります。

解決策:生産性の向上は、ワークフローのレビューと再構築のみでなく、生産現場におけるライン・マネージャと監督対象の従業員の両方に対して、より適切で定期的なトレーニングを提供することになります。製造業企業は、プロセス、トレーニング、および関連システムの改良または見直しによる、プラント運用の改善を専門とするコンサルタントを参加させることができます。

製造プロセスをサポートするように設計されたクラウドベースのERPシステムも支援を提供します。こうしたアプリケーションは、すべての企業のデータおよびプロセスのための一元化されたプラットフォームを提供します。優れた機能を持つERPシステムは、反復的なタスクと管理プロセスを自動化することで、従業員の生産性を高めることができます。また、ERPシステムは、データの収集、集約、編成を管理し、生産性をさらに向上させるオペレーション・インサイトを提供できる高度な分析およびAIツールの導入の道を切り開きます。導入に先立って発生する可能性のある問題や、負担のかかる遅延を回避するために、製造業企業は、すぐに利用できる、完全統合型の包括的なERPおよびサプライチェーン・スイートを探しています。

8. デジタル・トランスフォーメーション

製造業におけるデジタル・トランスフォーメーション(スマート・マニュファクチャリングまたはインダストリー4.0とも呼ばれます)には、データを収集および分析し、工場内およびサプライチェーン全体で物理的プロセスやデジタル・プロセスを調整するテクノロジの実装が含まれます。デジタル・トランスフォーメーションは、生産性の向上、市場投入までの時間の短縮、コストの削減などを目標としています。ほとんどの製造業企業は、包括的なデジタル・トランスフォーメーション・プロジェクトを長期間にわたって先送りにはできないことを承知していますが、多くの製造業企業はその進展で慎重を期し、新しいシステムを一度に1つずつ導入しています。

こうした複雑なIT実装、統合、変更管理プログラムは、完了までに何年もかかることがありますが、その間、生産ラインは稼働し続ける必要があります。製造業企業はまた、インターネットに接続された新しい機械、デバイス、サーバー、ソフトウェアを導入することは、デジタル・トランスフォーメーション・イニシアチブの終わりを意味しないことも承知しています。つまり、従業員を再教育したり、プロセスを更新したりする必要があるため、業界の労働力不足の中でより多くの課題が生じることになります。

解決策:デジタル・トランスフォーメーションの概念には、幅広いテクノロジ・セットが含まれます。この言葉自体が、エグゼクティブ、ITスペシャリスト、施設マネージャ、組立ラインの従業員を怯えさせる可能性があります。開始の1つのアプローチは、非効率的なプロセスや古いシステムなど、対処する必要がある独自の課題を特定することです。

そうした問題点を特定すると、会社のリーダーは、特定のモジュールを現在のシステムに導入したり、アプリケーションをレガシー・インフラストラクチャからサービスとしてのソフトウェア(SaaS)に移行したり、まったく新しいクラウドベースのシステムを導入したりするためのユースケースを構築できます。これには、現在のERPシステムに倉庫管理モジュールを導入したり、レガシーHCMアプリケーションをタレント管理、トレーニング、従業員エンゲージメント、その他に関する機能を含むクラウド・スイートに置き替えたりすることが含まれます。

製造業企業が厄介な問題を解消(または少なくとも軽減)し、その初期投資への対価が得られ始めれば、デジタル・トランスフォーメーション・アジェンダの次のステップに投資するための経営幹部の承認が得られやすくなります。

9. サイバーセキュリティ

IBMのX-Force Threat Intelligence Indexによると、2022年に、製造業は2年連続でサイバー犯罪者に最も標的にされた業界となり、すべての攻撃の4分の1近くを占めました。

これらのケースの多くは、身代金が支払われない場合には盗難データを流出させると脅迫するランサムウェアのインストールが関与する一斉攻撃でした。サイバーセキュリティ企業のDragosによると、2022年のランサムウェア攻撃では、被害者の実に70%以上を製造業企業が占めていました。

この他にも、知的財産を盗むためにサイバー攻撃が使用されています。また、ハッカーは、エネルギー会社、船舶会社、製造会社向けの組立ラインや制御システムを実行するアプリケーションなど、産業機器を制御するソフトウェアへの変更を実行することに非常に精通しつつあります。このような攻撃の及ぼす影響は、自動化と接続性の向上を目指す製造業企業を萎縮させます。特定の企業だけでなく、そうした企業に依存する、より広範囲にわたる統合経済にも大きな財務上の脅威をもたらすためです。

解決策:サイバーセキュリティの専門家は、製造業企業が生産設備を制御するシステムをほとんど可視化していないことが多いと述べています。また、数多くの企業では、機密データを格納し、ミッション・クリティカルなプロセスを制御するコンピュータ・ネットワークにアクセスするための資格証明を、従業員が共有できてしまう状況を放置するという誤りを犯しています。

製造業企業は、すべてのユーザーに対するアクセスの継続的な認証を含む、ゼロトラスト・セキュリティ戦略の導入を検討する必要があります。また、強力なパスワードを使用する(なおかつ共有しない)こと、未知の人物から送付されたリンクを開かないこと、安全なWi-Fiを使用すること、セキュリティ・ソフトウェアの更新プログラムを定期的にインストールすることなど、セキュリティに関する最新のベスト・プラクティスについて従業員をトレーニングする必要があります。

製造業企業が新しいITシステムを導入する際には、セキュリティを念頭に置く必要があります。それは、エンドポイント保護、脅威検出、ネットワーク監視、次世代のファイアウォールなど、幅広いサイバーセキュリティ・ソフトウェアに投資することを意味します。このようなセキュリティの問題の多くを緩和するため、製造業企業は、デフォルトでエンド・ツー・エンドのセキュリティを実装するクラウド・プロバイダーを利用して、より多くのアプリケーションを実行できます。

10. データ・インサイト

製造業企業は、データの生成に関しては苦労がありません。工場現場やサプライチェーン全体での産業用アプリケーションとIoT対応機械の急増により、膨大な量のロー・データが生成されるからです。製造業企業の課題は、そのすべてのデータを収集、集計、分析して、生産とサプライチェーンの業務に関する有意義なインサイトを提供することです。

解決策: ビッグ・データ・プラットフォームと高度な分析は、ロー・データをビジネス・インテリジェンスに変換します。こうしたシステムは、大量のデータに埋め込まれたパターンを表面化できるため、ビジネス・リーダーはよりスマートでタイムリーな意思決定を行うことができます。高度なデータ分析により、サプライチェーンにおける差し迫った脆弱性や潜在的脆弱性が明らかになり、製造業企業はこれらのロジスティクス・ネットワークの、地政学的ショックからの回復力のさらなる強化にいち早く着手できます。また、機械や車両がいつ保守を必要とするか、または故障の危険があるかを予測し、予期しないダウンタイムを防止することもできます。企業によっては、データ分析を使用して在庫プロセスを最適化し、過剰な倉庫管理を行うことなく、常に必要な部品を手元に確保できるようになります。また、高度な分析を使用して、請求、支払および出荷のエラーを検出することで、複雑なトランザクションを円滑化します。

また、ビジネス・リーダーは、多くの場合、クラウドベースのERP、SCM、HCMアプリケーションと統合されたアナリティクス・システムを利用して、より質の高い財務指標、サプライチェーン指標、人事指標を可視化、解釈、レポート化を行うのに役立ちます。

Oracleで製造業の課題を解消

製造業企業の多くの課題を幅広く軽減する、アプリケーション、アプリケーション・スイート、さらにはテクノロジおよびサービスのカテゴリは存在しません。しかしOracleは、製造業企業が成功するためのデジタル基盤を構築するのに役立つ、アプリケーション・サービス、テクノロジ・サービス、サポート・サービスの最も包括的なポートフォリオを提供しています。これは、クラウドベースの製造、サプライチェーン、財務、および従業員を管理するアプリケーションの統合スイートから始まります。

Oracle Fusion Cloud SCMスイートに含まれるOracle Fusion Cloud Manufacturingは、IoTセンサーからの製造現場データを保守および計画システムに接続することで、工場の作業現場の生産性を向上させることができます。こうしたアプリケーションはAIを使用して、ダウンタイムの原因となる機械の障害を予測します。生産性向上のためのその他の機能としては、Intelligent Track and Trace、ロジスティクスの可視性および管理、調達ツールなどがあります。

Oracle Fusion Cloud SCMおよびERPアプリケーションは、製造業企業による財務管理、サプライチェーン・パートナーの活動の調整、サステナビリティ目標の達成、規制コンプライアンスの確保を実現します。またOracle Cloud HCMは、採用、オンボーディングから退職まで、すべての人事プロセスを管理するのに役立ちます。

OracleのクラウドERP、SCM、およびHCMアプリケーションを補完するのが、業界をリードするデータ管理および分析機能です。Oracleの次世代クラウド・インフラストラクチャであるOracle Cloud Infrastructure(OCI)は、製造業企業によるデータの活用、需要予測および注文管理の改善、機器の故障の検出、品質管理の改善を支援します。OCIで利用可能なハイパフォーマンス・コンピューティングにより、製造業企業は低コストで高速かつ高度な設計シミュレーションを実行できます。

製造の課題に関するよくある質問

製造業企業が直面する共通の問題点は何ですか
サプライチェーンの混乱、労働力不足、サステナビリティに関する圧力、規制は、製造業企業が軽減しようとする多くの課題のほんの一部に過ぎません。

製造業企業がサプライチェーンの混乱に対処するのに役立つテクノロジはどれですか
サプライヤ、輸送車両、倉庫オペレーター、その他のパートナーの活動を詳細に可視化するサプライチェーン管理システムは、製造業企業がサプライチェーンの混乱による悪影響を回避するのに役立ちます。

製造業企業は、業界の継続的な労働力不足にどのように対処できますか
業界の人手不足により、製造業企業は、人材の採用、支払い、トレーニング、エンゲージメントおよび管理の戦略とプロセスを改善し、そのためのキャリア・パスをチャート化することが求められます。これらはすべて、最新の人材管理ツールによって支援されます。

製造業企業は競争優位性の確保のため、データをどのように分析していますか
製造業企業は、膨大な量のデータを分析して、生産プロセスの効率化、従業員の生産性の向上、サプライチェーン活動の可視性の向上、主要指標のフロントラインおよびエグゼクティブの意思決定者への提供を行います。

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