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日本オラクル特集記事

日本におけるAI活用は10カ国・地域中、最下位だった

HRテック第一人者が語るワークプレイスでのAI活用


AIをはじめとしたテクノロジーを人事に活用するHRテックは日本でも広まりつつあるが、それによって大きな成果を生み出している企業は決して多くないのが実情だ。そこでHRテックの第一人者である慶應義塾大学大学院の岩本隆特任教授に、人事を含めたワークプレイスでのAI活用の日本における実態について聞いた

 まず岩本氏が指摘したのは、事業部門ではAI活用が広まりつつあるという事実である。「ビジネス部門ではすでにAIが積極的に活用されています。たとえば製造現場や物流拠点では、蓄積されたデータを活用するなどといった目的でのAI利用は珍しくありません」と岩本氏は述べる。

しかし調査結果によるとワークプレイスでのAI活用は、全体平均が50%であるのに対して、日本は29%にすぎない。では、なぜ人事部門などコーポレート機能を担う部門では使われないのか。岩本氏は「社内のマネジメントにAIを使うという発想がない」からだと指摘する。

人材採用や育成にデータを活用する視点を持つことが重要

デジタルテクノロジーの台頭などにより、産業構造は大きく変わりつつある。こうした状況の中で生き残っていくためには、高いスキルを持つハイパフォーマーの発掘や、働く人たちの意欲を引き出す従業員エンゲージメントの醸成といった取り組みが極めて重要となる。HRテックをはじめとしたAIが注目される背景には、そのためのツールとして活用できるのではないかという期待があるが、実際に取り組む上では既存の点在するシステムが足かせになる可能性があると岩本氏は語る。

「採用や育成を目的として、人事部でもさまざまなシステムが使われています。しかし特に日本はそれらのシステムがバラバラで連携されていないほか、データの記録が目的となっていて、データを活用するという視点がないことも課題です」

このように岩本氏は話した上で、自社の経営戦略に基づき、必要なデータは何かを考えていくことが重要ではないかと続けた。

「経営陣は、自社にどんなスキルを持った人が在籍しているのかを把握したいはずです。そのためにはどういったデータを収集し活用していくべきか、改めて考えていく必要があるのではないでしょうか」

グローバル平均64%に対して、日本は76%がマネージャーよりもロボットを信頼と回答

マネジメント業務をテクノロジーで変革すべし

今回の「職場におけるAI(人工知能)」に関する調査で印象的だった結果の1つに、「64%の人々がマネージャーよりもロボットを信頼し、半数はマネージャーよりもロボットにアドバイスを求める」というものがあった。日本の対象者でも、マネージャーよりもロボットを信頼すると回答したのは76%に達している

このように、すでにAIやロボットを受け入れる土壌は整いつつあることを踏まえ、岩本氏はこれから日本のマネージャーは変化することが求められると話す。

「上意下達で部下を指導する旧来のやり方ではなく、その人でしかできないマネジメント手法がないと、マネージャーの存在価値はどんどん薄れていくでしょう。特に日本ではマネージャーは現場をすべて把握すべきといった考え方が根強く、現場にマネージャーが入ってきて部下に仕事を任せないわけです。そのため、報告のミーティングがびっしり入ることになってしまう。こうしたミーティングに意味があるのか、考え直さなければなりません」

さらに岩本氏は、こうしたマネジメント業務においてもテクノロジーを積極的に活用すべきだと提言した。

「たとえばクラウドを活用すれば、いちいち顔を合わせなくてもマネジメントに必要なコミュニケーションは図れるはずです。実際には、フェイス・トゥ・フェイスで報告させるといったことがまだまだ残っている。本当に必要なミーティングだけをフェイス・トゥ・フェイスで行い、それ以外は積極的にテクノロジーを活用するといった意識の変革が必要ではないでしょうか」

今回の調査で気になった国として、岩本氏が挙げたのはインドや中国である。たとえば職場で何らかの形でAIを利用していると回答した従業員がインドでは78%、中国では77%であり、29%の日本を大きく上回っている。この結果を踏まえ、岩本氏は次のようにコメントした。

日本ではAIをはじめとするIT活用において言語の壁があるとも言われますが、特に中国でこれだけAIが浸透している結果を見ると、それだけが理由だとは思えません。AI活用で重要となる、データを取り巻く法制度や考え方の違いがあるほか、日本はテクノロジーの活用に意識が向いていないこともこれだけの差が生じた理由ではないかと思います」

これからのバックオフィス業務に求められるスキル

バックオフィス業務のデジタル化も広まりつつある。具体的な取り組みとしては、社内向けのチャットボットを構築し、経費精算や年末調整の方法などに対する問い合わせに自動で回答するといった取り組みなどが挙げられるだろう。

こうした仕組みがあれば、バックオフィス業務の効率化につながるだけでなく、従業員も気軽に問い合わせができるメリットがある。岩本氏も「チャットボットなどを活用して業務を効率化するといった動きは、今後広まっていくのではないかと思います」と述べた。

人事や総務部門にテクノロジーを活用する意識がなければ、改革を進めることはできない。そこで重要になるのがプロデューサーだと岩本氏は説明する。

「たとえばデータを分析するのであれば、データサイエンティストの力を借りる必要があります。すでにデータ分析は多くの企業で取り組んでおり、そうしたスキルを持つ人が社内にいるケースは珍しくありません。そのデータサイエンティストと人事や総務といった部門が連携すればよいのですが、組織の壁などで距離があると連携は難しい。だからプロジェクトを進めるために、部門を超えてコミュニケーションを取り持つプロデューサー的な立場の人が必要になります」

さらに岩本氏は「これからは人事や総務といった部門でも、データサイエンティストなどの専門家とコミュニケーションしたりプロジェクトをマネジメントしたりするスキルは必要になるのではないか」と話す。自身が専門家にならなくてもよいが、データの活用やテクノロジーの導入に向け、データサイエンティストと折衝する力は必要になるというわけだ。

最後に岩本氏は、一刻も早く人事や総務といったワークプレイスでのAI活用に取り組むべきだと語った。

「早く始めなければ、どんどん競合に差を付けられることになります。場合によっては企業価値に影響するといったことにもなりかねません。まずAIをはじめとするテクノロジーを使い始め、自社の業務内容などに合わせて改善する。そういった取り組みを継続して行うべ うべきでしょう」

慶應義塾大学大学院の岩本隆特任教授


プロフィール

東京大学工学部金属工学科卒業。カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)工学・応用科学研究科材料学・材料工学専攻Ph.D.。日本モトローラ株式会社、日本ルーセント・テクノロジー株式会社、ノキア・ジャパン株式会社、株式会社ドリームインキュベータ(DI)を経て、2012年より慶應義塾大学大学院経営管理研究科(KBS)特任教授。外資系グローバル企業での最先端技術の研究開発や研究開発組織のマネジメントの経験を活かし、DIでは、技術系企業に対する「技術」と「戦略」とを融合させた経営コンサルティングや、「技術」・「戦略」・「政策」の融合による産業プロデュースなど、戦略コンサルティング業界における新領域を開拓。KBSでは、「産業プロデュース論」を専門領域として、新産業創出に関わる研究を実施。

ビッグデータやIoT、AIといったテクノロジーの登場によってビジネスは大きく変わりつつあり、現在はLOB部門を中心とした取り組みがクローズアップされている。ビジネスを支えるワークプレイスにおいても、これらのテクノロジーをどう活用すべきかを考える時期に来ているのは間違いない。