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オラクル・コーポレーション
ケヴィン・ローバック
教育とは真理追求への共同的な取り組みであり、知識を次世代に継承するものだ。それは教育機関という権威に対する信頼、その教育と研究が真実であるという信頼に基づいている。そして、このグローバルに広がる共同体は、コンセンサス、透明性、不変性という性格を帯びている。
分散型台帳技術(DLT : Distributed Ledger Technology)であるブロックチェーンは、ほぼこれに対応する。コンセンサスを図るのは記録保持のための基盤だからである。透明性が確保されるのはチェーンの参加者が各台帳をダウンロードして確認できるからだ。そして不変であるのは、台帳の改変ができないからである。教育もそうであるように、ブロックチェーンもコンテンツだけではなくコンテンツ固有の価値を共に伝達する。
つまり、長く分散化の傾向が続いてきた高等教育機関でブロックチェーンが技術的な新たな1ページになるとしても全く驚くことではないのだ。
ブロックチェーンの信頼性のあるピアツーピアの分散型台帳ネットワークモデルが提言され、まず仮想通貨ビットコインとして具現化されたのは、ほんの8年前のことだ。教育や研究におけるブロックチェーンの活用はまだ始まったばかりだが、数々の有望な実験や革新的取り組みが進められている。
1. 学生の修歴や学位認定:教育は個別化モデルにシフトしている。
各個人の素質、能力、学位とは?実際、学習はクラスだけでなく課外による部分も大きい。人生の中では様々なところから学びがある。学歴はそのような生涯にわたる学習プロセスを反映するものではなく、自分で所有しているものでもない。
ブロックチェーンは、学歴だけでなく、バッジ、証明書、実績、推薦書などあらゆる能力指標をまとめて安全に共有できるモデルとなる。変更はできず、アップデートと確認が可能なIT基盤に、自分のこれまでの学習関連の経験をまとめることができると考えてみてほしい。同様の理由で、ブロックチェーンは不正を防ぐことができ、自分が正真正銘、申し述べるとおりの者であることを証明する手段となる。
MITは、確認可能な電子記録のオープン標準をLearning Machineという企業と共同開発し、ブロックチェーンに基づく証明書をいち早く取り入れた。ニューメキシコ州アルバカーキにあるCentral New Mexico Community Collegeでは昨年、ブロックチェーンプラットフォーム上で「学生が所有できる電子証明書」の発行を始めた。これは米国の他の教育機関への展開も計画している。
2. パートナーシッププラットフォーム:City College of New Yorkはビットコインによる支払いを検証している数少ない大学の一つだ。ブロックチェーンが教育機関の財務方面に与える影響は仮想通貨の部分にとどまらない。
上述したように、高等教育機関が分散モデルを展開しはじめてからしばらく経つ。カリフォルニア州の3段階の大学制度やニューヨークのSUNYシステムなどだ。最近では、大学はコンソーシアムを結成してリソースを集約している。取り組みの一つが Internet 2 Net+ Initiative と呼ばれるもので、参加大学はさまざまなアプリケーション、コンピューター、その他クラウドベースのサービスにアクセスすることができる。
ブロックチェーンのピアツーピアのトランザクションベースのモデルは、このようなコンソーシアムの取り組みとぴったりと合致する。複数の当事者以上で分散化され暗号化された電子取引であるブロックチェーンベースの「スマートコントラクト」を採用することで、スピードと透明性を確保することができるだろう。
3. 著作権、デジタル著作権の保護:ブロックチェーンはデジタルコンテンツを管理、共有、保護できるため、研究者、教員、高等教育機関の学長によって生み出される知的財産を共有しつつ、その利用方法をコントロールすることに適している。例えば教授は、研究論文や学術雑誌での被引用回数に基づいて報酬が受けられるように、自身が作成した教材の実際の活用や再利用の実績に基づいて報酬を受けることが可能となる。
ブロックチェーンは、ライブラリーと呼ばれる「コミュニティーコンテンツレポジトリ」の進化にも欠かせないものとなるだろう。San Jose State UniversityはLibrary 2.0の取り組みを主導してきた。ブロックチェーンはデジタルコンテンツを整理、共有すると同時に、デジタル著作権を保護することなどもできる。
4. コースカリキュラム:今後、ブロックチェーンは人事採用で注目される技術スキルの一つとなるだろう。
必要となるブロックチェーンプログラミングスキルの授業は間違いなく重要となるだろう。しかしこの技術は、政策、法律、商業、取引、知的財産権、暗号化、人工知能など、実に様々なビジネスおよび技術の分野にまたがっており、独自の課題がある。このため、ブロックチェーンの教育では特別な手法が必要となる。例えば、Berkeley Center for Law and Businessでは、ビジネス、法律、経済、コンピューターサイエンス、工学を組み合わせたプログラムを開発した。
5. イノベーション教育基盤:多くの学生は起業というレンズを通して教育の機会を見ている。そして、ブロックチェーンを学ぶことが次世代の起業に向けた準備になると考えている学生は多い。
ノースカロライナ州とサウスカロライナ州の企業が参加するCarolina FinTech Hubでは最近、Blockchain Generation Challenge(オラクルのスポンサーによる)を実施した。地域の大学の学生チームからブロックチェーンに基づくアプリケーションの提案を募集し、29チーム68名の参加者から31の提案が提出された。Bank of America、Wells Fargo、EY、Ally、Oracleなどの企業の審査員により最終選考に選出された10チームが、エネルギー、金融、教育、医療分野のアプリケーションを開発した。開発されたブロックチェーンアプリケーションのうち、近い将来カロライナの企業に実際に採用されるものが一つ、二つあってもおかしくないだろう。
学生たちは自らブロックチェーン教育も手掛けつつある。Blockchain at Berkeleyは、地域の企業を対象にブロックチェーン関連の教育、コンサルティング、研究を行う学生主導のNPO(501C3団体)だ。また、Cornell Blockchainのミッションステートメントには、「成長するブロックチェーン関連プロジェクトの開発、コンサルティング、支援を行い、イノベーターのコミュニティーを構築する」とある。
クラウドコンピューティングへの参入:ブロックチェーンがクラウドサービスとなると、教育機関や関連機関によるアクセスが容易となり、革命的な変革の原動力となるような規模の結果がもたらされるだろう。