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日本オラクル 広報室
谷地田 紀仁
1991年3月5日付けの朝日新聞の朝刊に、犬の「社員」の入社式を報じる記事が掲載された。
当時、社員数10数名足らずの日本オラクルに入社した異色の新人。以来25年間、愛され続ける日本オラクルの社員犬は4代目(名前は「キャンディ」)となり、7月23日に6歳になる。オラクルのデータベースと同じぐらいか、それ以上に有名な社員犬。その制度を長年続けられた理由を、社員犬をよく知る社員3名のインタビューを通じて探ってみた。
日本オラクルの社員犬制度の詳細は、1年前に公開した「社員犬キャンディが愛される理由」を参照。
犬と触れ合うことは社員にとって「アハ!体験」
そもそも社員犬が入社する背景はどのようなものだったのだろうか。1991年に社員犬と「同期」入社した高岡由美子氏は、当時の社長がオフィス環境への想い入れが強く、犬を飼うことで社員にとっての癒やしになるという発想から開始したと語る。「湾岸戦争当時のブッシュ米国大統領執務室から飛び出す犬や、ミュージカル『アニー』に本物の犬が舞台に立っていることに感心したと聞いています。犬に限らず、熱帯魚や鳥も飼いました。馬を飼おうと試みたこともありましたが、さすがに反対されたようです」と微笑ましく語った。
IT業界は変化と競争が激しく、革新的、創造的なアイデアで市場に新しいものを常に提案していかなければならない。そのために、日本オラクルでは社員がリフレッシュできて、創造力を高められるようなオフィス環境の整備に力をいれている。
制度導入当初の社員の反応を尋ねると高岡氏は、「犬が執務フロアに来ると、みんなが楽しそうに触っていました。一斉に笑顔になるし、笑い声が会社中に響き渡る。不思議なひらめきを感じる『アハ!体験』でしたね」と当時を振り返る。
宣伝効果が先に立ってはいけない
社員犬制度を四半世紀も運用することは、決して楽しいことばかりではない。昨今の少子高齢化で独身世帯へのペット派遣ビジネスを企画する企業や、癒やし効果を期待するアニマルセラピーを研究する学生など、社員犬制度の“リーディングカンパニー”への問い合わせは後を絶たない。「社員犬制度導入の先駆者である当社に、同様の制度や、企業向けペット関連ビジネスを検討する会社からの相談を頻繁に受けます」と語るのは、日本オラクルで社員犬制度を担当する高橋秀夫氏。そのような会社には、「(社員犬が)生まれてから死ぬまで面倒をみられる覚悟が必要であることを伝えます。本当に飼えるのか、途中で止められると思わないで欲しい」と伝えている。
社員犬は日本オラクルの社屋に留まらず、お客様のオフィスや地方に「出張」するなど活躍の場に事欠かない。一見華やかに見えるが、初歩的な手続きとして、その建物に犬が入館できるかどうかが大事になる。高橋氏は、「社員犬のような制度を導入する際は、ビルの管理規定を変えなくてはいけない。通常、盲導犬以外の犬が入館することを許可しているビルは多くない」と語る。
日本オラクルで長年、社員犬の広報活動を担当する石川純子氏は、「広報の視点で言うと、コンセプトが大事。命を扱っているから、経営陣・経営方針が変わるたびに変更はできない。“可愛いから”、“ペットセラピーが流行っているから”というだけで制度を導入してはいけない」と高橋氏とは異なる視点で、社員犬制度の“戦略”を大切にしている。「宣伝効果を期待していては長期的には成り立たない。取材の問い合わせがなくなったから、制度そのものを止めますというわけにはいかない。会社の戦略に合っているかどうかを見極めて欲しい」とアドバイスする。
社員犬制度は積み重ねてきた歴史
日本オラクルの社員の中でも、社員犬に最も近くで接することができる高橋氏。その「役得」を、「社員の皆さんに見せる前のキャンディが見られるし、オフの情報にも接することができる」と自慢気に語る。前述の高岡氏は、「キャンディに会いたいというリクエストは絶えない。青山周辺に勤務する人から、どうしたら会えるのかという問い合わせをよく受けるし、キャンディが退社するときに“出待ち”をしている人もいる」と、その人気ぶりを語る。
とは言え、25年に及ぶ制度となると日本オラクルの伝統として定着しつつあり、当たり前の存在となりつつある。「昔は社員犬が来ると、ワーッと集まってきていた。今は割りと静かに接して、部署にもよるが遠慮している人もいるように感じる」と、長年社員犬を見守り続ける高岡氏は語る。「日本オラクルは創業して30年以上が経ち、そのうち25年も続く社員犬制度。積み重ねてきた歴史なので途絶えないで欲しい」と継続することの大切さも強調する。
日本オラクルが掲げる「VISION 2020」の1つ、「社会に貢献し、業界でもっとも賞賛される企業」を目指して、社員犬のような社内外で愛されるマスコットがいることはとても心強いことだ。社員犬の活躍の場をさらに広げていきたいという期待は、今回インタビューした3人に共通している。
高橋氏は、定期的に社員犬に触れる機会は設けているものの、一度に会える時間は短いと指摘する。「”ワンDay”みたいな日をつくって、長く接することができる特別な日を作りたい」と思う存分触れ合う機会を思案している。高岡氏も「社員が子どもを連れて来て、家族で写真を撮れるイベント」を提案する。石川氏は、「社員犬の役割に合った社会貢献活動に関わるチャンスがもっとあるといい。また、社員犬が接する対象が、今は社員とその家族に限定されてしまっているが、今後は社外、特に地域住民や近隣の学校のイベントにも参加できるといいと思う」と活動の場の広がりを期待する。
25年以上ものあいだ制度を運用し、日本オラクルの企業文化として根付いた社員犬。毎週水曜日お昼時に出社するほか、イベントやセミナーに登場したり、お客様を訪問したり、今後も愛され続ける存在としてさらなる飛躍に目が離せないだろう。