日本オラクル特集記事

デジタルビジネスのトップランナーが語る、クラウドを活用する理由

-「Oracle Cloud Platform Summit Tokyo 2017」基調講演

2017年4月25日、日本オラクルは「Oracle Cloud Platform Summit Tokyo 2017」を開催、オラクルのクラウドにおける取り組みやサービスの詳細、活用のポイントなどを解説する多数のセッションを展開した。イベント冒頭の基調講演では、日本オラクル 取締役 代表執行役社長 兼 CEOである杉原博茂が登壇したほか、「Cloud Platformで実現するビジネス革新」、「Cloud Platform戦略と新たな価値創造」と題したそれぞれのプログラムでは、日本のデジタルビジネスを牽引する複数のキーマンが登場した。

事業のあらゆる領域でデジタルを活用するSOMPOホールディングス

 まず「Cloud Platformで実現するビジネス革新」では、日本オラクル 執行役 副社長 クラウド・テクノロジー事業統括の石積尚幸がOracle Cloudの「3種類の活用形態」について解説した。具体的には、既存のIT資産をクラウド化する「ITモダナイゼーション」、デジタル技術を活用してビジネスを変革する「デジタルトランスフォーメンション」、そしてオンプレミスとクラウドを統合した「マルチクラウド」の3つである。

 そのうちの1つであるデジタルトランスフォーメーションを進めている企業として、石積はSOMPOホールディングス株式会社を紹介し、同社の常務執行役員 グループCDOである楢崎浩一氏を招いた。SOMPOホールディングスではデジタル戦略の積極的な推進を中期経営計画で掲げており、新たにデジタル戦略部と呼ばれる組織を立ち上げている。このデジタル戦略を司る責任者が楢崎氏である。


熊本地震の被災調査ではドローンを活用したと語るSOMPOホールディングスの楢崎氏

 デジタルを活用した取り組み事例の1つとして、楢崎氏はドローンの活用を挙げる。すでにさまざまな場面でドローンを利用していると話した後、一例として2016年4月14日に発生した熊本地震でのドローンの利用を挙げた。

 「熊本地震では数多くの建物が被災しましたが、その調査に私たちはドローンを活用し、損害保険会社の中でいち早く調査や事故の損害の特定を行うことができました。この取り組みはお客さまからも非常に喜ばれています」

 このほかにもSOMPOホールディングスが新たに進出した介護事業でのIoTデバイスを活用した排泄ケアの実施や、コンタクトセンターにおけるAIの活用などについて言及した。ブロックチェーンにも積極的に取り組み、天候デリバティブと呼ばれる保険商品での活用に向けた取り組みが進められていると話す。

 「たとえば気象庁から得られたデータも含め、ブロックチェーンでお客さまと我々との間で証跡を残しつつ、リアルタイムで安価に契約管理が可能になる。これによってお客さまにもスムーズにお支払いができるということで、顧客対応という観点で非常に良いと評価をいただいています」

 またデジタルトランスフォーメーションにおいて「クラウドはマスト」だと話した後、その理由について次のように説明した。

 「フェイルファーストという言葉がありますが、失敗するのであれば早く失敗して方向転換した方がよい。このように物事を進めていくことを考えたとき、従来のようにサーバーを1つずつ立てて利用するような形では間に合いません。そのため、インフラの中で積極的にクラウドを活用し、クラウドファーストで構築することが大切だと考えています」

デジタル技術を活用して経済格差の解消を目指すOrb

 「Cloud Platform戦略と新たな価値創造」と題したプログラムでは、日本オラクル 執行役員 クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platform事業推進室長の竹爪慎治が最初にプレゼンテーションを行った。その中で竹爪は、エンタープライズからクラウドネイティブまで、幅広い領域に対応できる50種類以上のサービスを提供していることなどを説明した。そして「Oracle Cloud Platformはさまざまなワークロードに対応できる壁なきサービス、あらゆるロケーションに対応する位置透過性、幅広いサービスに対応可能なビルディングブロックを備えています」と話し、Oracle Cloud Platformの優位性について語った。

 続けて、株式会社OrbのCEOである仲津正朗氏、そして渋谷区観光協会 理事長の金山淳吾氏が登壇し、それぞれが取り組むデジタルトランスフォーメーションについて解説した。

 Orbでは様々なFinTechアプリを開発可能なプラットフォーム技術であるOrb DLTを提供しているが、そこで使われているのが独自に開発した実用性の高い分散型台帳技術である。仲津氏は、パーソナルコンピュータ産業が労働格差の解消、インターネット産業がメディア格差の解消を実現したのと同様に、ブロックチェーン/分散型台帳技術の産業は、「経済格差の解消」を実現することで繁栄すると述べる。


経済格差の社会問題を解消するヒントが江戸時代に普及した「藩札」の仕組みにあると語るOrbの仲津氏

 昨今、日本における地域格差のみならず、世界的に経済格差の拡大が社会問題になってきている。この解消のヒントになると考えているのが、江戸時代に普及した「藩札」と呼ばれる地域金融システムである。「当時、藩札は完全な地域金融インフラとして機能していました。これに係わるステークホルダーは3者で、藩の住民とそれに関わって商売を営む人々、それと地元の豪商です」

 住民は給料の一部を藩札で受け取り、商売を営む地元のB2C/B2Bも商売上の手形取引などで利用していた。そして藩札の信用を担保していたのが地元の豪商だと仲津氏は説明する。その上で「Orbはこの藩札の仕組みを、デジタルテクノロジーを駆使して現代によみがえらせることで、都市圏と地方の経済格差を埋めていこうということをFinTechソリューションとして提供しています」と語った。また、「そのFinTechソリューションを実装していく上で、分散型台帳の技術は最適です。なぜなら、現代の金融システムは『重厚長大』であるのに対して、分散型台帳は『軽薄短小』であるため、極めて低コストな”フェイルファースト”のモデルで実装していけるからです」と語った。

 このソリューションの実現において、大きな役割を担っているのがオラクルのOracle Cloud at Customerだ。当然ながら金融機関ではプライバシー保護やセキュリティに対する要求は高い。しかしOracle Cloud at Customerであれば自社のデータセンター内にデータを保持しつつクラウドサービスを利用することが可能であり、これらの要件に対応しやすい。さらに「低コストでシステムを構築することを目指す上で、我々が持つソフトウェアとオラクルのクラウド技術を組み合わせて得られるシナジーの意味は非常に大きい」と仲津氏は説明した。

ビーコンとデジタルを組み合わせて渋谷の観光を活性化

 渋谷区観光協会 理事長の金山淳吾氏は、東京を代表する渋谷における観光の現状や、デジタルを活用した観光の活性化についてプレゼンテーションを行った。


「渋谷の街はすごく面白い」と、IoT化を通じた観光体験ができる仕組みを推進する渋谷区観光協会の金山氏

 現状の渋谷について、金山氏は著名な観光地として多くの来訪者を獲得できているが、その多くがハチ公の銅像やスクランブル交差点で写真や動画を撮って満足してしまい、都内の別の観光地に移動してしまうケースが多いと課題を話す。そこで金山氏が目を付けたのがプッシュ式でスマートフォンに情報を通知できるビーコンである。

 「街路灯や分電盤、店舗の軒先などに、パブリックユースのためのビーコンのネットワークを構築しています。また、これを利用したオリジナルアプリの開発も進めているところです。ビーコンのネットワークをサードパーティにも解放し、デジタルでつながった渋谷の街はすごく面白いと、IoT化を通じた観光体験ができる仕組みを作るための取り組みを進めています」

 ビーコンを使って収集したデータを次のビジネスの種とするために、オラクルと連携して分析するための仕組みを整えていると話し、「渋谷には小さくてもレアな体験がいっぱい詰まっているが、検索しても出てこない。それをビッグデータマーケティングの領域で可視化し、次のビジネスチャンスを洗い出して提供していきたい」と述べた。

 ビッグデータやIoT、ブロックチェーン/分散型台帳といった技術が急速に社会に浸透しつつある現状を考えると、デジタルトランスフォーメーションへの取り組みを始めることは企業にとって急務だと言えるだろう。その際に鍵を握るのがクラウドである。クラウド上でサービスとして提供されるアプリケーションや機能を積極的に活用できれば、デジタルのメリットをいち早く取り込むことが可能になり、競合に対するアドバンテージを確保できるためだ。すでにオラクルでは、多数のアプリケーションをクラウドサービスとして提供している。これらをうまく活用し、自社のデジタルトランスフォーメーションに活かしていただきたい。