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日本オラクル 広報室
谷地田 紀仁
政府は9月2日、安倍総理が重要課題として掲げる「働き方改革」の実現に向けて、政策の立案などに当たる「働き方改革実現推進室」を設置した。安倍総理は訓示の中で、次のように述べた。「働き方は人々のライフスタイルに直結するものであり、経営者、企業にとっても大変大きな課題。(中略)長時間労働を自慢する社会を変えていく。かつての『モーレツ社員』、そういう考え方自体が否定される。そういう日本にしていきたい。」
社員の半数が「生産性高い」と回答する一方、「働き方に満足」は半数に届かず
安倍総理が政府主導の「働き方改革」をアピールしたその日、東京・青山にある日本オラクル本社で、病児保育を行う認定NPO法人「フローレンス」の代表理事で、日本のソーシャルビジネスの旗手、駒崎弘樹氏を講師に招き「業績向上とエンゲージメント向上を両立させる働き方」 セミナーを行った。
日本オラクルでは「VISION 2020」を掲げ、「最も賞賛される企業」を目指す重要施策のひとつとして社員の満足度向上を目的に、様々な取り組みを行っている。セミナーの冒頭、同社が8月に行った「働き方」に関するアンケート結果を公表した。労働時間や在宅勤務、休暇取得、生産性、働き方の満足度などについて質問している。柔軟性ある満足いく働き方に欠かせないのが仕事の「生産性向上」。「生産性が高い」と回答した社員は半数にのぼり、そのために役に立つ取り組みは、「個人のスキルアップ」、「集中タイムの確保」、「上司や同僚からの事例・ノウハウ共有」、「聞ける人の存在」をあげている。
社員の満足度向上を全社プロジェクトとしてリードする執行役員の赤津恵美子氏は、働き方の満足度を高めていくには、「駒崎氏の言葉を借りるならば、目指すべき働き方を決め、それを実現するための制度や状況を作り出していくことが大切」と述べる。
10年連続で売上増を達成するNPO代表が「働き方改革」を決めた理由
駒崎氏は2004年にフローレンスを設立し、日本初の「共済型・訪問型」の病児保育サービスを首都圏で開始した。自身一男一女の父であり、子どもの誕生時にはそれぞれ2カ月の育児休暇を取得している。厚生労働省「イクメンプロジェクト」推進委員会座長、内閣府や東京都の子育て支援会議の委員なども務めている。
「親子の笑顔をさまたげる社会問題を解決する」をミッションに掲げるフローレンスの病児保育会員数は5,000世帯を超え、サービス利用件数は延べ3万8,000件(2016年6月末時点)を突破し、創業以来10年間無事故を続けている。収益の面でも10年間連続で対前年比売上増を達成するとともに、各種団体やメディアから数多くの賞を受賞している。
公私にわたって働き方・子育て改革に真正面から取り組んでいる駒崎氏だが、フローレンス創業前のIT系ベンチャー経営時は1日16時間働き、「夕方6時過ぎてからノッてくる」といった働き方。「自分が早く帰ったら社員みんながサボるのではないか」と疑心暗鬼にかられていたという。ワーカホリックな働き方を変えたきっかけは、長時間労働に耐えられず多くの社員が辞めていく、特に優秀な女性社員から辞めていくという事態に直面したことだ。また、以前は明るく元気な親友が精神的に追い詰められ自殺をほのめかす電話をかけてくるといったショッキングな事態にも。「経営者は働かせ方、また職場環境の作り方によって、他人の人生を狂わせ、命さえも奪いかねないこともあり得ると考えてゾッとした」と駒崎氏は当時を振り返る。
働き方を変えるのは目指すべき理想を実現するため
働き方改革が史上最も注目される要因に、「女性活躍の機会の増加」、「社員と関係性の変化」の2つをあげる。女性活躍推進はここで多くを述べるまでもなく、特に社会のあらゆる指導的地位に女性の占める割合を増加させようとしている。それに呼応して夫の家事・育児に割く時間の増加も求められている。また、社員と会社の関係性についても、冒頭の安倍総理の訓示にもあるような「モーレツ社員」「会社人間」を志す社員は減る一方、「働きやすさ」「プライベート重視」を志向する若手社員は増加傾向にある。会社の規則に囚われない「フリーランス」として活躍する人や、会社に勤めながら「兼業」する社員など、会社への所属意識含め以前とは随分と変わっているのが現状だ。
社員数433名のフローレンスでの理想の働き方、また、それを実現するためどのような制度や仕組みを取り入れて実践しているのだろうか。駒崎氏は、①効率前提の仕組み・ルール作り、②コミュニケーションの質・量の向上、③価値観の共有と風土作りの徹底 の3つに区分されるという。「効率重視だと殺伐としてくる。コミュニケーションを取りながら和気あいあいと仕事することも大切」と述べる。
フローレンス流のユニークな働き方として、在宅勤務は元より、早朝に出勤したため夕方早めに帰宅したり、子どもの就学に合わせて時短勤務に切り替えたり、プライベートと両立しながらの働き方を実践している。社内は職種、役職に関係なく、代表の駒崎氏にさえも専用の席はなく、いわゆる「フリーアドレス制」を採用している。「フリーアドレスはオフィス経費も節約でき、実際の従業員数に対して約120パーセント収容できる」とそのメリットを駒崎氏は語る。
どの企業にとっても普遍的な悩みは会議の運営だ。会議の数や運営によって労働時間が大きく左右されることもある。ここでもフローレンス流を貫く。会議の議題は事前共有し、参加メンバーは解決策の仮説を持参する。司会と議事録担当者を決定し、議事録はその場でプロジェクターに投影し作成、会議終了と同時に共有する。また、会議への参加人数を制限する目的で、参加予定者を必須である「フルメンバー」と、そうでない「サブメンバー」に設定することで1人あたりの会議参加時間を減らすことができた。一番メリットを享受できたのは駒崎氏自身で、「以前より2割まで会議参加時間を減らすことができた」と述べる。
働き方改革の工夫は、メール作成の簡素化、仕事以外のコミュニケーションでも使う全社員の日報メール、1つの業務に主担当と副担当が付く「1タスク2パーソン」などまでに及ぶ。「1タスク2パーソン」のメリットは、ノウハウを共有できること、引き継ぎによる人材育成が進むこと、それによって異動させやすくなり、社員が新たなチャレンジに臨むことが可能になるという(但しタスクの切り分けは大事)。
素晴らしい働き方を子どもの世代にも
「働き方改革」の成果として、経営者の駒崎氏自身が9時~18時勤務で、さらに2カ月の育児休暇も取得している。業務効率化が進み、職場の残業時間が激減し残業費用のコストダウンにも大きく貢献している。また、働きやすい環境に優秀な人材が集まり、「事務員の募集にMBA取得者が、経理担当者の募集に公認会計士が応募する」(駒崎氏)。中途採用が多い中でも人間関係が作りやすく人材が定着しやすい環境を実現できているとのことだ。
駒崎氏は講演の最後に日本オラクルの社員に向け、「働き方先進国」として評価の高い北欧のフィンランド訪問時の体験を語って締めくくった。「フィンランドの政府高官に対して、男性の育児休暇率の高さ、柔軟の働き方推進などを褒めたところ、フィンランドがこうなったのはたかだか30年ぐらい前のこと、今みたいになったのは15年ぐらい前で以前は酷かったと言われた」「一世代30年。大事なのは上の世代が変わるのではなく、“我々が”変わること。我々の子どもに、変わった我々の素晴らしい働き方を伝えることで社会が変わっていくことを痛切に感じている。」
上長オススメ、生産性を向上する方法は
駒崎氏の講演に続き、「より生産性の高いチームへ」をテーマに、日本オラクルの執行役員によるパネルディスカッションを行った。自身の生産性、部門の生産性をあげることについて、金子忠浩氏(執行役 チーフリーガルオフィサー 法務室長)は、「働きはじめてから最初の5年は、周りの上司・先輩の働き方を真似るだけで、生産性なんか考えもしなかった」と語った上で、「米国への留学をきっかけに工夫して時間を捻出すればサボれることを覚え、余暇を楽しみつつ仕事に集中できる環境を整えようと気付いた。また、個人のスキルを向上し、自ら仕事を支配することで時間を管理すること。部門のメンバーにも同様の取り組みを期待していると」と語った。また、フローレンス流働き方改革について「会議の効率化の仕組みは今直ぐにでも取り入れたい」と述べた。
日本オラクル勤続20年を超える白石昌樹氏(常務執行役員 エンタープライズ第五営業統括 兼 クラウド・テクノロジー事業統括 公共営業本部長)は、営業職としてお客さまとの関係性構築が「生命線」、そこで大事になるのが「人間性・人間力」と語る。「皆さんもお付き合いするなら面白い人がいいですよね。海外出張に出かける機会、ビジネススクールで学ぶ機会など、人間力を高めるための経験を積んで、お客さまから『面白い!』と思われる人材になって欲しい」と語る。駒崎氏の講演を聞いて、「当社は、会議が多いですよね(笑)。会議の質と量を見直すきっかけになる」と述べた。
「20数年前にコテコテの日本企業に入社した」Paul Ravindran氏(常務執行役員 コンサルティングサービス事業統括)は、「生産性を測ることは難しい。なぜなら個人毎にペースが異なるから」と述べた上で、「強みを前面に押し出せること、少ないインプットで最大限アウトプットを出せる人材がコンサルタントとして優れている。コンサルタントの資産はナレッジ、これを共有し横展開できることが望ましい」と語った。
どのような人材を評価するかという質問に対し、金子氏は「代打を任されてもしっかり活躍できる人。なぜなら、普段から周辺の業務を注視し、いつでも任されてもいいように準備を整えているから」と答えた。白石氏は、評価する人は「有言実行」と明確に答え、「あがってくる数字に色は付いていないが」と前置きした上で、「オラクルがクラウドへシフトし大型案件を戦略的に狙っているなかで、ラッキーで取れる数字はない。固い意志を持って実行しなくてはいけない」と述べた。
最後にPaul氏は「評価基準を明確化することが前提。若手社員の割合が多い部門なので、英語の習得などソフトスキルの向上を重視している。また職位によって基準を明確にし、メンターがそれぞれフィードバックできる環境を整えていく」と述べた。