日本オラクル特集記事

グローバル企業の成長を加速する人材戦略に重要な3つのポイント

――早稲田大学政治経済学術院教授 白木三秀氏に聞く

日本企業のさらなるグローバル化には、最も重要なリソースである人材戦略についてもグローバルな視点での取り組みが必須となる。しかし現状では十分に効果的な人材戦略が推し進められているとは言いがたい。そこで早稲田大学政治経済学術院教授の白木三秀氏に、グローバル人材戦略を実行する上での課題やテクノロジーの活用による人材活用のアプローチ法などについて、お話を伺った。

早稲田大学政治経済学術院教授 白木三秀氏

優秀な海外人材の採用・活用に悩む日本企業

――グローバルにビジネスを展開する日本企業が増えていますが、人材活用の面での課題とは何でしょうか?

(白木教授)日本企業のグローバル・タレントマネジメントは、欧米に比べて20年は遅れているというのが実感です。その結果、海外の現地法人は人材の採用力に乏しく、かつ離職率が高いという現実に直面しています。例えばシンガポールの日系企業ではせっかく採用した人材の多くが3年以内に退社しているのが現実です。

その要因は、グローバル展開を行っている企業の日本本社が、世界各国に散らばる海外子会社の人材育成にほとんど投資していないため、優秀な人材にとってまったく魅力に欠ける企業になってしまっていることにあります。人材育成に対する投資がゼロの企業さえ少なくなくありません。「投資するに値する人材がいないから」というのがその理由ですが、投資を行わないから優秀な人材が集まらないのではないでしょうか。

また、日本企業で活躍してもフェアな処遇を受けられず、魅力的なキャリアパスを提示されないことも、優秀な人材を遠ざける要因となっています。

日本は同時期に一斉に入社した本社人材が切磋琢磨して出世していく“同期社会”です。その中に入れない海外の人材はどうしても同じ処遇からはみ出してしまいます。しかし、今や競争相手は社内の同期だけでなく世界中に存在するのですから、こうした同期意識は深刻な本国中心主義(Ethnocentrism)と言わざるを得ません。

評価の可視化でシステムに魂を注入すべき

――本格的な人口減社会となった日本にとって、海外で市場を開拓し、海外に生産拠点を置くことは、ビジネスを展開する上で避けては通れません。危機感が足りないのでしょうか。

(白木教授)日本企業は20年遅れていると申し上げましたが、一方で、グローバルに統一された評価制度を導入するなど、努力を続けている企業も増えており、海外子会社も含めたHRシステムの導入も行われています。

フェアな処遇を行うためには評価の可視化が必須となりますが、システムは入れたものの、可視化に踏み出せていない企業がまだ多いようです。努力はしているが本番はこれからということで、次はシステムに“魂”を注入する段階でしょう。

ただ、その段階で抵抗勢力となっているのが、部課長といったミドルマネジメント層です。日本の同期社会の中で競争してきた彼らがグローバル・タレントマネジメントに直面すると、世界の競争相手にどのように対処してよいのか戸惑うケースが多いからです。

グローバルな人材戦略推進で重要な3つのポイント

――そうした中で、経営層は人材戦略に対してどのような進め方をするべきか、ポイントを3つ教えてください。

(白木教授)1つめが、可視化を進める上でのエビデンスとしてのデータ収集を行うことです。

データには、会社に所属することで自動的に集まってくるデータと、恣意的に集めなくてはならないデータの2種類があります。それらデータが効率的に集まってくる仕組みを構築し、エビデンスとして使えるよう、整理しなくてはなりません。

2つめが、集まったエビデンス・データを分析することです。

一例として、海外で高いパフォーマンスを上げている20代・30代の日本人派遣者は、「前向き行動力」という因子を持っていることが私たちの調査を通して判明しています。簡単に言えば“逆境に強い”“折れない”ということですが、この「前向き行動力因子」を明らかにしたことで可視化でき、エビデンスとして活用できます。

そして3つめが、人材育成の環境を整えることです。

社員に対し明確なキャリアパスを示し、それに紐付いた処遇も明確にしなくては、優秀な人材の採用やつなぎ止めは困難でしょう。デジタルネイティブ世代に向けては、社員同士が教え合うソーシャルラーニングやマイクロラーニングといった育成ツールを整えることも有効です。

加えて、会社が社員を育ててくれるという受動的な時代は終わり、キャリアは自ら主体的に開拓していく時代になったというマインドセットを促すことも必要です。

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テクノロジーが人事部門の業務を改革する

――これまではデータの収集や分析に時間を取られがちでしたが、HRの本質的なミッションはグローバルな人材育成やフェアな人事評価などの人材活用ソリューションにあるのではないでしょうか

(白木教授)今は、エビデンスのためのデータの収集、は手作業でやらざるを得ないプロセスですが、HRにとって本質的な業務ではありません。

HR部門に課せられた本来のミッションは何かということを、見失ってはならないのです。

そこで重要なのが、ITシステムを活用することで労働集約的な業務をシステムに任せることです。今後は、採用や育成にAIを活用することも一般的になってくるでしょう。HR部門は経営戦略と軌を一にした育成や処遇、キャリアパスラダーの開発などの人材戦略を構築するといった付加価値の高い業務に集中し、集めたデータを分析して経営に貢献すべきです。

HR部門も積極的に海外に出よ

――日本企業の人事部の皆さんにメッセージをお願いします。

(白木教授)実は日本企業のHR部門の弱点の一つは、海外勤務経験を持つ人事担当者がほとんどいないことだと思います。日本を出た経験のないHR部門のトップが、グローバルのHR戦略を推進することは大変困難です。

海外の企業にはグローバルに活躍するHRのプロフェッショナルが数多く存在します。海外の諸事情に精通したHR、海外で活躍する現地社員の顔を知っているHRであってこそ、日本企業の人材戦略は大きな一歩を踏み出せるのではないでしょうか。

人材戦略の3つの重要なポイントを実行する仕組みはこちらから。