日本オラクル特集記事

自律型コンピューティングがもたらすイノベーションとクラウド・ジャーニー(前編)

IoTやAI、あるいはチャットボットにブロックチェーンといったテクノロジーを活用し、イノベーションの実現に向けて取り組む企業が増加している。それを支えているのが進化し続けるクラウド・テクノロジーである。それによってどのような価値がもたらされるのか、オラクル・コーポレーションのOracle Cloud Platform 製品戦略およびプロダクトマネジメント グループ・バイスプレジデントであるシッダールタ・アガルワルが語った。

将来的にエンタープライズアプリケーションの9割がAIを搭載

「Oracle Innovation Summit Tokyo 2018」基調講演に登壇したシッダールタ・アガルワル(撮影:日本オラクル)

 2018年7月27日、日本オラクルは東京都内において「Innovation Summit Tokyo 2018」を開催した。その基調講演において、オラクル・コーポレーションのOracle Cloud Platform 製品戦略およびプロダクトマネジメント グループ・バイスプレジデントであるシッダールタ・アガルワルが「オートノマス(Autonomous)」(自律化)へと進化するオラクルのクラウドプラットフォームについて説明した。

 まずアガルワルは「ソフトウェアを稼働させること、つまりオペレーションの部分に高額な投資が必要になっていて、イノベーションに十分な予算が割かれていません」と、多くの企業に共通する課題を指摘する。それを解決するためのテクノロジーがAIおよびマシンラーニングだと話し、企業のIT環境における今後のAI利用についての予測を述べた。

「エンタープライズアプリケーションは、その9割がAIを搭載するでしょう。さらにエンタープライズデータの5割以上が自律型サービスで管理されるようになると考えています。これはチューニングや最適化など、DBAが行っている作業が不要になることを意味します」

 その上で、オラクルのビジョンとして「ソフトウェアが自分で管理し、自分でスケールする。そして構成やチューニングなども自立的に行える。そして問題を学び、問題を予測して自分自身で問題を修復できるようになるだろうと考えています」と語った。

自律的な運用やクエリの最適化を盛り込んだOracle Autonomous Cloud Platform

 この自律化の仕組みを取り入れたオラクルのクラウドサービスが「Oracle Autonomous Cloud Platform」である。これはソフトウェアの自律的な稼働を実現したサービスであり、プロビジョニングやスケーリング、バックアップや修復、アップグレードなど、ソフトウェアのオペレーションで必要となるさまざまな作業をソフトウェア自身が自律的に行うことが特長だ。こうした機能を組み込んだOracle Autonomous Cloud Platformをポートフォリオ全体に適用することで、データ管理の自律化やアプリケーションとデータの統合、クラウドネイティブなアプリケーションの効率的な開発、そして近代的なユーザーインターフェイスを活用したメッセージングプラットフォームの構築などができると、アガルワルは話す。

 具体例の1つとして紹介されたのが、完全自律型のデータベースである「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloud」である。

「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudはユーザー自身で15秒で立ち上げることが可能なほか、Oracle Exadataプラットフォーム上で稼働しているため、圧倒的なパフォーマンスを手にすることができます。さらに自律的にCPUのリソースを拡張したり、クエリのオプティマイゼーションを行ったりする仕組みも備えています」

 実際にDWHを運用する上で、課題となることが多いのはパフォーマンスである。必要なデータを参照しようとシステムにアクセスした際、DWHのレスポンスが悪くなかなか結果が表示されないといった経験を持つユーザーは少なくないだろう。しかしOracle Autonomous Data Warehouse Cloudであれば、「今日のワークロードに基づいた形でクエリを最適化することが可能であり、これまで以上にすばらしい結果を出すことができるようになります」と、アガルワルは自信を見せる。

 このOracle Autonomous Data Warehouse Cloudを導入し、大きな成果を得たのが石油資源開発会社であるAker BPだ。「Aker BPは実際にバレル当たりの精製コストを下げることに成功しました。Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudを導入したことで、データからのインサイトを非常に早く得ることができるようになったためです。油田にはたくさんのセンサーがあり、1TB、12億行のデータが生成されています。従来は、そこからインサイトを得るために15分から20分を要していましたが、Oracle Autonomous Data Warehouse Cloudを使うことでインサイトを数秒で得られるようになりました。これが大幅なコスト削減につながったほか、彼らのDBAはもはやインデクシングやクエリの最適化について心配する必要もありません」と、アガルワルはその導入効果を説明した。

顧客とのエンゲージメントを大きく変えるAI搭載のチャットボット

 自律型のケーパビリティを備えた、チャットボットについても説明が行われた。自然言語処理を搭載し、人間がチャットで話した内容を解釈することが可能なほか、会話のステータスを維持して継続的に会話ができるシステムである。これを利用した例として、アガルワルが話したのはチームビルディングでの活用だ。

「たとえば、コンサルティングチームを作り、その特定プロジェクトで25名を採用したい。そこでチャットボットを使ってデジタルアシスタントを呼び出し、求める経験やスキルを伝えます。その内容に従って自動的に検索が行われ、人材をレコメンデーションしてくれるわけです。さらに候補者との面接のスケジューリング、実際に採用になれば新人研修やミーティングの設定なども自動的に行われます。効率が上がり、採用も迅速になるでしょう」

 インドのBAJAJ Electricalsは、このオラクルのチャットボットを使ってカスタマーサービス用のチャットボットを2週間で開発している。顧客はこのチャットボットで技術者を要請したり、あるいは製品について要望を伝えたりすることが可能となり、顧客満足度が向上したほかコールセンターにかかってくる電話の数も削減できたとする。

 さらにチャットボットのデモンストレーションも行われた。従業員がノートPCをアップグレードしたいといった場面を想定し、アガルワルが自らのiPhoneからチャットボットにアクセスしてオーダーするというものだ。チャットでラップトップを買いたいことを伝えると、用途や役職に合わせて最適な製品をいくつかレコメンドし、その中の1台を選ぶとクラウド上の調達アプリケーションに接続するという内容である。AIを組み込んだチャットボットと業務アプリケーションを組み合わせれば、業務におけるIT利用の形は大きく変わっていくのではないだろうか。

AIがデータを活用してビジネスユーザーにインサイトを提示

 アナリティクスやビッグデータの領域においても、オートノマスがもたらすメリットは極めて大きい。アガルワルは「ビジネスユーザーは、どんな準備をすべきか、どんなコードを書く必要があるのかといったことを考える必要がなくなります。データが取得できれば、それをどのように強化するのか、ほかのデータとどう統合するのかといったレコメンデーションが提示され、それを承認するとデータストリームが自動的に処理されるようになります」と、データ処理や分析にかかわる業務が大きく変革されるイメージを示し、次のように話を続けた。「自動的に分析を行い、ビジュアル化したデータを示せるほか、インサイトまでビジネスユーザーに提供します。クエリを書く必要がないのはもちろん、ユーザーが尋ねていないインサイトまで提供します。日々新しいインサイトを享受できるのです」

 こうした自律的な分析の一例として紹介されたのが、社員の離職率に関するものだ。給与レベルや作業時間、あるいは持ち株やボーナス水準などと離職の相関性を自律的に分析し、さらに特定の部署のみ離職率が高いなどデータの異常を特定することもできる。こうして過去のデータからインサイトを導き出し、潜在的に離職のリスクが高い社員を特定するといったことを実現する。「『Oracle Autonomous Analytics Cloud』を利用すれば、このような情報をすべてのビジネスユーザーに提供することができます。データサイエンティストを巻き込まなくても、ITの専門家にプログラミングをお願いしなくても、こういった情報を引き出すことができるのです」と、アガルワルはそのメリットを語った。



オペレーションからイノベーションへの移行をサポートするオラクルのAI

 セキュリティにおけるAIの活用についても触れられた。具体的には、「Oracle Management Cloud」のユーザーの振るまいによってセキュリティリスクを判断する機能において機械学習を活用、ユーザーの行動からリスクが高いと判断すると、それを認識してユーザーのログインを阻止する、あるいは管理者に通知するといったアクションを実施できる。このような振る舞い検知によるセキュリティ強化では、閾値の設定がポイントとなる。“どの程度疑わしい行動をした場合に”リスクとして判断するかは閾値の設定次第であり、これに管理者は多くの時間を費やしていた。Oracle Management Cloudはその閾値の設定に機械学習を応用することで、自律型セキュリティを実現しているわけだ。

 このようにオラクルのオートノマスのテクノロジーについて解説した後、最後にアガルワルは「オートノマスな未来を享受することができれば、よりスマートに会社を運営できるようになるでしょう」と述べた上で、IT投資も大きく変革するはずだと続けた。

「AIは活用すれば、オペレーションからイノベーションへと楽に移行できるはずです。システムを運用する上で必要であったコストを、AIやIoT、ブロックチェーンといった新たなテクノロジーに活用できる。お客さまとよりインテリジェンスにつながるにはどうすべきか、お客さまのニーズを的確に把握するためには何をすべきか、そういったことに投資できるようになります。我々は皆さまのプロジェクトが成功裏に終わるように、つねにスタンバイしています」

 すでにAIは未来の技術ではなく、いま使えるテクノロジーになっている。これをどのように活用するかが、今後のビジネスにおいて大きな鍵となるだろう。

参考リンク:自律型コンピューティングがもたらすイノベーションとクラウド・ジャーニー(後編)