日本オラクル特集記事

自律型コンピューティングがもたらすイノベーションとクラウド・ジャーニー(後編)

未来の技術のはずだったAIが現実的に利用可能となり、すでにビジネスの幅広いシーンで活用され始めている。このように新たなテクノロジーを利用し、イノベーションを起こすためには何が必要になるのか。オラクル・コーポレーションのOracle Cloud Platform 製品戦略およびプロダクトマネジメント グループ・バイスプレジデントであるシッダールタ・アガルワルに聞いた。

イノベーションのスピードアップを可能にするクラウド・テクノロジー

オラクル・コーポレーションOracle Cloud Platform 製品戦略およびプロダクトマネジメント グループ・バイスプレジデント シッダールタ・アガルワル

 クラウドを単なるシステムの展開先として捉えるのではなく、クラウド特有のテクノロジーを生かした「クラウドネイティブ」なアプリケーションを開発し、それによってイノベーションを生み出そうという動きが加速している。その背景にあるのは、進化したテクノロジーの実装先としてクラウドが選ばれているという事実だ。オラクルにおいても、AIや機械学習を活用した自律型サービスを「Oracle Autonomous Cloud Platform」において積極的に展開している。

 アガルワルは「クラウドは数あるシステム展開方法の1つですが、その他の方法と大きく異なるのは、クラウドを活用することによってイノベーションのスピードアップが実現できる点です」と、クラウドのメリットを述べる。クラウド移行のメリットとしては「オンプレミスからクラウドへの移行/拡張」、「SaaSの導入」、「イノベーションの実現」、「IT運用管理の効率化」、そして「アナリティクスからリアルタイム・インサイトの実現」という5つの視点があると指摘し、それぞれのクラウド活用ステップを次の図のように示した。

イノベーションには失敗を許容する文化の醸成も重要

 ユーザーのイノベーションを支援するために、オラクルではPaaS、あるいはSaaSの領域において積極的にAIや機械学習を組み込み、自律型サービスのメリットを享受できる環境を整えている。では、このように進化したテクノロジーをビジネスで活用するためには、どういったことを考えるべきだろうか。アガルワルがまず挙げたのは、競合他社との差別化をどのように図るか、である。

「ビジネスユーザー、特に企業の経営者が考えるべき点として、どのような形で競合他社と差別化していくのかを考えるべきだと思います。たとえば顧客とのエンゲージメントはどう変わるのか、あるいは各事業部門がリアルタイムにデータにアクセスできるようになると、ビジネスはどう変わっていくのかを考える。その中にはユーザーエクスペリエンスの核心も含まれるでしょう。それが売上につながるのか、あるいは結果的にコストを下げるのか。このように、イノベーションがどのような結果をもたらすのかについて、イメージを膨らませていく必要があるのではないでしょうか」

 さらにイノベーションに向けた取り組みを加速させるためには、失敗を許容する文化を醸成することも重要だと語った。

「たとえば会社として15のプロジェクトを実行するとします。そのうち、13のプロジェクトが失敗しても構わないと考える。経営者は大局的なビジョンを示しつつ、実際のアクションにおいてはそれを細かく分割する。たとえば1つのプロジェクトを3カ月から4カ月のスパンで実施することで、成功や失敗の判断をすばやく行えるようにする。こうして反復的に取り組み、そのフィードバックを迅速に取り組んでビジョンの実現を目指していくという形です」

大きく変化する競争環境とイノベーションの必要性

 イノベーションがビジネスの根幹にかかわるものであれば、当然ながら経営層のコミットメントも重要になる。そこで経営層に求められる資質として、アガルワルは変化を起こすことに抵抗がないこと、失敗を受け入れられること、革新に対してのスピードを重視すること、そしてリスクを取る姿勢が重要だと語った。

「複雑な課題に対して、よりシンプルな解決策を提示するために場合によっては1歩後退するかもしれない。ただ、それによって2歩前進できるかもしれないからチャレンジしてみよう、そういった意思決定も必要でしょう」

 つまりイノベーションの内容によっては、経営層にも相当の覚悟が求められるというわけだ。それにもかかわらず、多くの企業がイノベーションを起こそうと躍起になっている。その背景をアガルワルは次のように分析する。

「競争相手がいままでとは変わったことが大きいでしょう。これまで市場で共存していた相手とは異なるプレイヤーが破壊的な変化を起こしている。しかも、そのスピードも極めて早い。たとえばタクシー業界ではUberが台頭し、テレビを中心としたエンターテインメント業界ではNetflixが存在感を増しています。またAmazonは食料品などの分野でも成功を収めているほか、医薬品の流通にも進出しようとしている。こうしたプレイヤーと競合していくためには、イノベーションを起こすしか道がないということだと思います。そのためには、たとえば新たな顧客とのエンゲージメントの方法を模索するなど、考え方を改めなければなりません。これまで商品を売っていたのであれば、それをサービスとして提供できないかといったことも考えるべきでしょう」

自律型サービスでIT部門やバックオフィスを支えたい

 最終的にコミットするのは経営者だとしても、イノベーションの起点になるのは事業部門だろうか、それともIT部門だろうか。この問いに対し、アガルワルは「ビジネス側が起点になると思うが、その具現化のためにはIT部門からのサポートが必要」だと指摘する。

「テクノロジーの観点からIT部門がサポートしないと、イノベーションを成し遂げることは難しいでしょう。ただIT部門がビジネス部門とのパートナーシップを強化し、イノベーションをサポートしたいと考えても、現状はIT環境を効率よく予算内で動かすことに忙殺されています。そのため、IT部門が効果的にビジネス側の競争を支えられる環境を整えていくといった取り組みも必要です」

 このようにIT部門が積極的にイノベーションの実現を支える上で、自律的なオペレーションを可能とする仕組みを備えた、オラクルのクラウドサービスがもたらすメリットは極めて大きいだろう。

「私どもは、ソフトウェアが自分自身で自律的にオペレーションやマネジメントを行い、必要に応じてスケールアップもできる。さらにセキュリティもソフトウェア自身が自律的に実施する。このような取り組みを引き続き発展させていきます。その背景にあるのは、企業がよりスピーディにイノベーションを実現できる環境を整えたいという思いです。IT部門の効率アップはもちろん、バックオフィスやサポート部門の業務効率の向上なども見据え、SaaSやPaaS、IaaSのそれぞれのクラウドサービスを通じて価値をお客さまに提供していきます」

 すでにイノベーションのための土台は整えられつつある。それを利用してビジネスをどう変革するかを真剣に考えるべき時期が来ていると言えそうだ。

参考リンク:自律型コンピューティングがもたらすイノベーションとクラウド・ジャーニー(前編)