日本オラクル特集記事

「安い」「早い」のクラウドのメリットは本当か
国内99.7%の企業が参考になるIT投資

日本オラクル 広報室
谷地田 紀仁

日本全国の企業数99.7%に相当する380万社が中小企業である*。中小企業が抱える課題の中には、自社の経営状況の的確な把握、顧客・従業員との円滑なコミュニケーション、在庫圧縮・省材料化などIT活用が解決策となり得ると考えられるものがある。しかし、ITを導入できる人材不足、導入効果がわからない、コスト負担ができないという理由でIT投資がなかなか進まないのが現状だ。
※「中小企業基本法」に基づくと、資本金もしくは出資総額が3億円以下で、従業員数が300人以下の企業が中小企業とされている

中小企業では、6割弱の会社がITを使っているが、そのうち3分の2が給与、経理業務の内部管理業務向けに導入。収益に直結する、調達、販売、受発注管理などでは、ITを使っている企業のうちでも3分の1程度に留まっている(出典:中小企業・小規模事業者の経営課題に関するアンケート調査 全国中小企業取引振興協会(2016))。

従来、IT投資といえば、ハードウェア、ソフトウェアといったある程度の投資コストがかかるものであったが、現在はクラウドコンピューティングなどの新しいITサービスが登場し、比較的低コストでITを導入することが可能になっている。実際、中小企業におけるクラウドの利用状況について、2009年は6.8%だったものの、2013年には27.3%と4倍以上に伸長した(経済産業省「情報処理実態調査」)。

中小企業の利用者によるクラウドのメリットについて尋ねたところ、「導入までの期間が短い」、「初期コストが安い」、「専門的な知識がなくても導入可能」、「セキュリティ面での信頼性・安全性が高い」といった項目が上位に並ぶ。

経済産業省「中小企業IT経営力大賞」ポータルによると、駐車場・駐輪場の管理運営を行う芝園開発株式会社(従業員19名、東京都足立区)は、クラウドを活用した新システム(施設統合管理システム「SHIP」)を開発、施設運営の改善につなげた。その結果、2006年度から2012年度の比較で、売上高を10%、経常利益を90%増加させることができたという。中小企業でのクラウド活用は本当に有効なのだろうか。次の具体的なケースで紹介する。

基幹システムにクラウドを採用~関口工業株式会社のケース
──従業員130名のパイプ加工専門メーカーがITコストを87%削減

1961年設立のパイプ加工の専門メーカー、関口工業株式会社(従業員130名、埼玉県さいたま市)は、36年間使い続けた汎用コンピュータを基盤とした基幹システム(Quick Information Service System-:以下、QIS)をクラウドに移行した。その結果、同システムの総所有コスト(TCO)を87%削減することに成功した。14,000点を超える少量多品種部品の生産管理を行うシステムのクラウド移行プロジェクトは、2014年11月から始まり、2017年11月に完了した。2018年1月現在、安定稼働しているこの基幹業務システムの移行プロジェクトを紹介する。


創業1961年、JR埼京線・南与野駅近くに本社(写真左上)を置く関口工業。福島県田村市にも工場を有する。車両部品・エンジン部品・非鉄部品と様々なパイプ曲げ加工に対応し、顧客のきめ細かいニーズに合ったパイプ曲げ加工を提案している(写真提供:関口工業)

関口工業は、建設機械やトラックに使用される金属部品のパイプ加工事業を主力とし、特にパイプの「極小曲げ」加工に強みを持ち、小松製作所、ボルボの子会社で大型車メーカーであるUDトラックスなどと直接取引契約を行う”ティア1サプライヤー”である。

同社は1980年1月に自社開発で汎用コンピュータを基盤としたQISを開発・導入した。QISの開発コンセプトは、1)一般の作業者でも使用可能にすること、2)バーコード処理ができるほど操作が簡単であること、3)リアルタイムで結果が反映されるMRPに対応したデータベースの構築であった。導入当初は、合計11名で受注管理・生産管理・買掛管理を行っており、部品所要量計算(MRP:Materials Requirements Planning)には膨大な量の時間を費やしていたが、その時代に即した拡張を重ね、実務をベースに顧客のパターンを把握、需要予測ができるまでの仕組みに成長した。

時代に即して機能拡張を脈々と続けていたQISは転機を迎える。ユーザーの情報端末の大幅な増加による運用負荷の増加や、QISから発生する多種多様の膨大なデータを保管することでのシステム維持コストの増加などに直面する。

クラウドへの移行を決断。汎用コンピュータ時代の不安は解消されたが・・・

さらに追い打ちとなったのが、2014年、汎用コンピュータメーカーからの後継機の販売終了に伴い、3年以内にシステム刷新が余儀なくされたことだ。MRPパッケージソフトウェアの検討を⾏うものの、汎用コンピュータで処理していた業務の独自性が非常に強く、⼤幅な実務の変更が発生するため⾒送られた。新しいシステムはQISの基盤をオープンシステム化し、そのデータベース管理には基幹システムで多くの実績のあるオラクルのデータベースを採⽤した。

設計当初はオンプレミスによるサーバー導⼊を計画したが、処理性能に⾒合ったサイジングの難しさや導⼊までの納期、柔軟な拡張が困難など、汎用コンピュータ時代と変わらない課題を抱えておりオンプレミスでの運用は見送ることにした。

検討を開始した2014年当時、ITのトレンドはクラウドコンピューティングへと大きく舵を切り始めていた。クラウドは汎用コンピュータやオンプレミスが抱える課題を解決するだけでなく、障害や災害時のBCP(事業継続計画)におけるシステム保全も万全であるというメリットは理解していた。しかしながら、実際に中小のユーザー企業がクラウドを使えるかは懐疑的であった。

そのため、クラウドを利用した検証を行い、オンプレミスと何ら変わらぬ操作が可能であることを確認した結果、日系企業のクラウドサービス上でオラクルのデータベース含むシステム基盤を移植し稼働することに成功した。2015年5月からQISをクラウド上でスモールスタートし、2017年1月までに全ての基幹システムの移行を完了した。

しかしながら悲運は再度、ベンダー都合でやってくる。2017年4月に既存クラウド事業者から、オラクルのデータベースのクラウド提供を1年後に中⽌するとの連絡があり、今度は“クラウドからクラウド”への移行が必要となった。

コストメリットが大きい、オラクルのクラウドサービス

既に国内外、複数のクラウドベンダーが主導をしているにも関わらず、後発のオラクルのクラウドを選択した理由は何だったのだろうか。

オープンシステムではプラットフォームを含み、マルチベンダーによる複数のプロダクトの組み合わせで1つの業務システムを構成するため、保守や障害時の切り分けで足枷となる。オラクルのクラウドは、コンピューティング基盤であるIaaS、データベースやアプリケーション開発基盤であるPaaS、業務アプリケーションとしてのSaaSなど様々な環境がクラウドで提供されており、特にPaaS環境では最新のオラクルのデータベースがオールインワンで提供されている。これまでクラウド上でオラクルのデータベースを利用していたとはいえ、ライセンスと保守費用を別途調達していた同社にとって、ライセンスと保守費用が含まれた利用形態で、かつ、自社にとって必要な最小構成で実現できたことはコストメリットが大きかった。

また、丁度2017年4月に富士通の国内データセンターからオラクルのデータベースクラウドを含むオラクルのクラウドが提供開始されたことも採用のポイントとなった。(参考:国内データセンターからオラクルのパブリッククラウドサービスを提供開始、エンタープライズ・システムのクラウド化を推進

クラウド環境の構築にあたっては、オラクルからの迅速な情報提供と、フルエナジー社からの手厚いサポートを受け、当初の想定以上にスムーズに進めることができた。また、フルエナジー社と密に連携をとることで、自社で構築する部分とVPN構築などフルエナジー社に依頼する部分を適切に切り分け、必要な作業に集中できたことも大きかった。結果として、2017年11月、オラクルのクラウドへのマイグレーションは当初想定より2カ月前倒しで環境構築を行い、実際の切り替え作業もわずか半日で完了、クラウドならではのスピード感で無事稼働が開始された。

基幹システムをクラウドに移行したQIS-IIのポータル画面。直感的で、表示速度が大幅に向上した(画像:関口工業 提供)
※クリックで拡大

限られた経営資源だからこそ、クラウドの導入を検討すべき

関口工業では、汎用コンピュータを使用していた当時に発生していたコストとクラウドのコストを比較したところ、年額のコストだけでも実に87%のTCO(総所有コスト)を削減することができた。またコストだけではなく、オープンシステム化によるグラフィカルなユーザー画面や、Excelとの連動など業務面および運⽤・保守面でもメリットはあった。さらに、今回、オラクルのクラウドに移行することで他社クラウドと比べ50%以上のコスト削減を実現。加えて、全体のシステムを見直し、複数のシステムを統合することで、今までは他システムで管理していた図面データの一元化も可能にし、大きな質的効果をあげている。

1980年に初めてQISの開発を行い、現在も関口工業のIT全般を指揮する製造本部 本部長の佐藤清志氏は次のとおり述べている。
「QISをクラウド基盤に移行したQIS-IIでは、データ解析が瞬時に行われるため生産性向上につながります。具体的に、月次で実施する『合理化推進会議』において、部門をまたがる部品の生産時間がスケジュールどおりかを確認する『総合効率』の向上に役立てています。
クラウドを活用することで、コストを掛けなくともデータを長期間蓄積し、そのデータを地道に肌感覚で分析し、次の活動・攻略に役立てることができます。BCP対策も万全なため、クラウドは”安く・安全”に運用できるツールです。」

オープンシステム化からクラウド移行までのプロジェクトを主導したSIコンサルタントの絵野沢 雅巳氏は次のとおり述べている。 「企業におけるITの導⼊は生産性を向上させ、コストを低減することを目的としていますが、その多くは部分的に最適化され、結果としてTCOの増⼤を引き起こしています。
ITコスト・運⽤負荷の軽減、システム基盤の柔軟性、短期間でのスタート、セキュリティの担保などクラウドが提供する様々なメリットは、ユーザー企業にとって享受され、限られた経営資源において今後は無くてはならないものになってくるはずです。
クラウドは全然難しくありません。仕組みを判ってしまえば、オンプレミスよりはるかにシンプルで柔軟です。中小のユーザー企業こそ、積極的にクラウドの導⼊を検討するべき時代と考えます。」

画像:フルエナジー提供
※クリックで拡大

関口工業へのオラクルのクラウド導入を支援した、株式会社フルエナジー 戦略事業推進本部 システム研究開発事業部 クラウドビジネス主任 松本昭史氏は次のとおり述べている。
「フルエナジーは、オラクルのクラウド移行にあたって、既存環境のアセスメントから要件定義、環境構築、本番移行までを支援いたしました。関口工業様主導で力強くプロジェクトが進み、事前にオラクルクラウドのトライアル環境を活用し移行テストを綿密に実施することで、移行に伴うコストやリスクを低減できました。また、オラクルのデータベースクラウドを活用することで運用コストおよび工数も大幅に削減することができました。
中堅・中小企業にとってクラウドの導入メリットは、初期費用やTCOを低減でき、また使用した分だけ支払う従量課金を利用できることです。さらに、オラクルのデータベースの災害復旧サイトとしての活用や2次バックアップでの活用、複数データベースの平行稼働など、これまで大企業にしかできなかった安心・安全の対策を実現できることも大きなメリットだと感じます。」

日本オラクルはクラウドビジネス加速に向け、中堅・中小企業を主に担当する営業組織「Oracle Digital」を発足させている。Oracle Digitalを率いる同社の執行役員 本多 充は、「中堅・中小企業のお客様は先ずはコストを優先されます。特にIaaSを検討する際は、価格優位性が求められます。これまでエンタープライズを中心にビジネスを展開してきたため、『オラクルは高い』というイメージを持たれているお客様は多くいます。しかし、クラウドによる従量課金、オラクル独自の課金体系によって、競合のクラウドベンダーと比較して半額になる場合もあります」と語る。
「データベースのように運用ノウハウが必要で、なかなか中堅・中小企業では人材が確保できなくとも、オラクルのデータベースクラウドを使えば、運用の効率化が図られ、TCOの大幅な削減につながります」と価格と運用の両面で、オラクルのクラウドを強く推奨している。