日本オラクル特集記事

夏野剛氏に直撃! これからの2年とニッポンの未来

慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授で日本オラクルの社外取締役も務める夏野剛氏が、日本オラクルの気鋭のエンジニアと座談会を行いました。テーマとなったのは、テクノロジーが果たす将来的な役割や、これからの日本社会を支える若者の働き方について、その模様をお届けします。なお、本座談会の進行は、夏野氏と旧知である日本オラクル 代表執行役 最高法務責任者の金子忠浩が務めました。

慶應義塾大学 政策・メディア研究科 特別招聘教授 夏野剛。1988年早稲田大学卒、東京ガス入社。95年ペンシルベニア大学経営大学院(ウォートン)卒。ベンチャー企業副社長を経て、97年NTTドコモ入社。99年に「iモード」、その後「おサイフケータイ」などの多くのサービスを立ち上げた。2005年執行役員、08年にドコモ退社。現在は慶應義塾大学政策・メディア研究科特別招聘教授のほか、ドワンゴ、セガサミーホールディングス、トランスコスモス、日本オラクルなどの取締役を兼任。

 夏野さんは東京2020オリンピック・パラリンピックの組織委員会参与を務めていらっしゃいますが、開会までのあと2年で、ITでできることはありますか。

夏野 2年間というタイムスコープで考えると、これから出てくる新しい技術は安定性の観点で不安が残るので、オリンピックで使うのは難しいんです。むしろ社会にどれだけ新しいアプリケーションを実装できるかの方が重要でしょう。

 実際、東京オリンピックを契機として日本社会は大きく変わりつつあります。たとえば日本に来る外国人観光客は2006年には約730万人だったのが2017年には2,800万人以上と、短期間で大幅に伸びています。オリンピックが1つのターゲットになっているわけなんです。また働き方改革も盛り上がっていますが、こうした難しい問題の解決に向けた動きが生まれているのも、オリンピックというターゲットがあることがすごく大きいでしょう。

 テクノロジーの観点で言えば、たとえばオリンピックに合わせて自動運転の実証実験を行うとトヨタ自動車が発表しました。このような新しい技術の採用など、オリンピックは社会がマインドチェンジする大きなチャンスだと思いますし、そこでITが果たす役割は大きいのではないでしょうか。

「50を超えた今でも戦ってます」

 オラクルではAIやAutonomous(自律型)といったテクノロジーの活用に積極的に取り組んでいて、すでに「Oracle Autonomous Data Warehouse Cloud」*などを発表しています。特に日本のマーケットに関しては、既存システムの維持管理に大きな労力が割かれているため、AIやAutonomousといったテクノロジーによって現状の業務の負担を軽減することが私たちのチャレンジの1つだと考えています。

* 自己管理(Self-managing)、自己保護(Self-securing)、自己修復(Self-repairing)を特長とした「Oracle Autonomous Database」で提供されるクラウドサービス。機械学習により、煩雑な構築、管理、運用を簡単にし、業界をリードするテクノロジーに基づく優れたパフォーマンス、セキュリティ機能、高可用性を低コストで提供。

日本オラクル株式会社 執行役員 ソリューション・エンジニアリング統括 原智宏。1997年慶應義塾大学商学部卒、日本ヒューレット・パッカード(現Hewlett Packard Enterprise)入社。ITアーキテクトとして製造業、流通業、通信業のコンサルティング業務に従事。2010年日本オラクル入社、エンタープライズ・アーキテクトとしてお客様のデジタル変革を支援。2016年執行役員、2018年6月から現職。

夏野 これまでのところ、そしてこの先2年間の見えているところでは、ポジティブな効果が出ていると思うんです。

 日本の上場企業の内部留保は400兆円を超えていて、企業経営者の多くが守勢になりがちです。ただ、そのお金を回すことがすごく重要で、そこでオリンピックはすごく大きな役割を果たしています。この流れの中で、オラクルのAIやAutonomousといったテクノロジーを活かし、従前の維持管理業務から新たな価値を生み出すイノベーションへと方針転換されるといいですね。

 最近、「日本型タテ社会」の限界を示唆する問題や事件が話題になりました。そうした社会を変えていくのは若手や女性なのかなと思いますが、そうした人たちにメッセージはありますか。

夏野 やっぱりやる気がある人がアウトプットを出し続けられる社会の方がいい。現状を変えられるのは、やはり20代や30代。失うものが大きくない人たちですよね。逆に40代を超えると、守るべきものが大きくなって、変えたくないと考えてしまう。それはどんな世代でも一緒なんです。ただ、その中でも1割は残る。僕なんて50を超えた今でも戦ってますからね(笑)。そういう前提で、やる気がある人はいくらでもチャンスがあるという世の中を作るべきだと思っています。少なくともベンチャービジネスの世界はそうなった。今はベンチャーキャピタルが投資するときに、年齢なんか関係なくなっている。「むしろ若い方がいい」って言っているくらいですから。

ワークライフバランスの改善で新しいことにチャレンジできる

宇賀神 男性も女性も、仕事を第一に考える人と、仕事以外の時間を大切にする人で二極化している印象はあります。私は仕事を優先してしまうタイプなので、忙しいときには夫が家事をやってくれていて、妻としてはありがたいです。

日本オラクル株式会社 Oracle Digital セールスコンサルタント 宇賀神みずき。大手のクライアント企業のシステムを開発するSIerを経て、2018年に日本オラクルに入社。 クラウドによるビジネス加速を中堅企業に対して支援する部門Oracle Digitalで、セールスコンサルタントを担当。アプリケーション開発のためのオラクルのクラウドサービスを中心に、案件創出のPoCや導入支援などを担当。

夏野 僕はワークライフバランスを大切にするのはすごくいいことだと思っているんです。それはムダに1つの企業で消耗せずに済み、新しいことにチャレンジできるから。こんなことがやりたいと考えても、昔は会社が許してくれない、時間がないというのが言い訳でした。でも今は副業を許可する会社が増えているし、時間的な余裕も生まれている。トライアスロンでもボランティアでもいい。何かやっているかが大切です。

 そうしたことに対する意識は女性の方が高いですよね。現状ではどうしても家事や育児に割く時間があるので、それ以外の時間を無駄にしたくないという気持ちが高まる。逆に男性の方が時間を有効に使えていないと感じることもある。自分がイノベーターになりたいと考えているのであれば、やっぱり時間は無駄にできないですよね。

宇賀神 私は前職ではプログラマーで、趣味と仕事が一体化しているので土日もずっとパソコンの前にいることが多いんです。今は、会社からは早めに帰っていますが、ワークライフバランスと言いながら、仕事の割合が減ったかというとそうでもないんですよね。

夏野 それも1つの道ですよね。時間を費やしていることがすごく面白いと思えるんだったら、どんどんやるべきですよ。僕もそっちのタイプでしたよ。もう全力投球で。失敗してもまたやるぞって頑張ったりしていましたね。

宇賀神 同じ部署で働いている女性の先輩であったり、外部のコミュニティで知り合った女性エンジニアを見ていると、お母さんの方がパワフルな印象があります。


座談会は日本オラクルの本社 最上階にある茶室「聚想庵」(しゅうそうあん)で行われた。茶室からは「新国立競技場」をよく見晴らすことができる

人の流動性を確保できれば日本はもっとクリエイティブになれる

金子 私と夏野さんはNTTドコモのときに一緒でしたが、どっちも中途入社なんですよね。さらに今は僕たちのとき以上に転職することが当たり前になっている。だいぶ時代が変わったなと思いますね。

夏野 現在の20代だと大学を卒業した人が60%を超えていますが、そのうちの3人に1人が新卒で入社した企業を辞めている。でも、これは正しいと思うんです。就職活動を経てたまたま入社した会社が自分に合っている可能性は低いでしょう。そうして人材の流動性が高まることは決して悪いことじゃない。たとえばIT業界でマーケティングをやっていた人がいきなりゲーム業界に転職するとか、人材の流動性を確保すれば日本はもっとクリエイティブになれると思うんです。

座談会の最後に、夏野さんに日本オラクルの社外取締役を務められている理由を聞いてみました。

夏野 「これは面白い」って。僕はスタートアップから一部上場企業まで役員をやっているけれど、外資系企業のインターナルマネジメントにすごく興味があったんです。実際に入ってみても、特に人材のマネジメントといった領域はすごく面白いなと思います。

夏野さんは本業のほか複数社の社外取締役を務められるなど、常に過密スケジュールにも関わらず、日本オラクルの取締役会の出席率が100%です。

夏野 ただ外資系でありながら日本の上場企業なので、日本オラクルなりの難しさもあります。日本特有の事情って、本国の人たちには分からない部分もあるわけじゃないですか。だから、僕みたいにほかの一部上場企業の社外取締役をたくさんやっている人間が貢献できる部分はあるだろうと考えています。