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98%は誤判定!? マネーロンダリングの未然防止に寄与するAI、ブロックチェーン

北米の金融機関がコンプライアンス対応に費やすコストは年間13億ドル(約1,400億円超)、同業務に携わる従業員は30,000名とも言われる。

2001年に起こった米国同時多発テロ事件以降、テロ資金防止のため金融機関へのマネーロンダリング対策への要求は年々厳しくっている。過去15年以上、多くの人手とコストをかけて金融機関は対策を講じてきたが、今後もあり得る規制強化や変更に迅速かつ効率的に対応していくためには、予防措置への抜本的見直しが必要との共通認識が出はじめている。そこで注目されているのが、マネーロンダリング対策における「機械学習」を応用した「AI」や、「ブロックチェーン」などの革新的技術の活用である。


マネーロンダリング対策の不備で多額の罰金を課せられる金融機関。国をまたいだ送金手法が精緻化し、未然に防ぐことが難しくなってきている(写真はイメージ)

テロ防止をきっかけに強化するマネーロンダリング対策

犯罪行為などで得た収益の出所を隠ぺいし、正当な手段で得た資金であるかのように偽装する、マネーロンダリングに対する社会の目は厳しさを増し続けている。その大きな契機となったのは2001年に発生した米国同時多発テロ事件だ。マネーロンダリングはテロリストへの資金供給とも密接に関係していることから、多くの国がマネーロンダリングの防止・摘発に力を注ぐことになった。

こうした規制の影響をもっとも受けるのが金融機関であり、規制への対応において不備があった場合には厳しい罰則が科せられる。たとえば2012年には、マネーロンダリング対策の不備から英国の大手銀行が米国当局に対し約19億ドルの罰金が支払われている。また2014年には仏の大手銀行がやはり米国当局に総額89億ドルの罰金が命じられた。

オラクル・ファイナンシャル・サービス・ソフトウェア シニア・ディレクターのドン・リューは「グローバルのメガバンクにおいてすら、マネーロンダリングの不備によって支払う罰金は利益を大きく損なうものです」と指摘しつつ、次のように続けた。

「罰金だけではありません。風評被害やビジネスのリスクもあります。あるメガバンクの事例ですが、昨年1億8,000万ドルの罰金を命じられましたが、証拠不足で有罪とはなりませんでした。しかし、告訴されてから判決が出るまでの間、風評被害によってビジネスに大きなマイナスの影響があったのです」

100のアラームのうち、98%は誤った判定

マネーロンダリング対策を適切に実施するために、金融機関の84%がさらにコンプライアンスの強化に費用を投じる計画だとリューは説明し、そこに投じる額も極めて大きいと述べた。

「世界でも最大規模の銀行の最高執行責任者と対話した際、彼らは年間13億ドル以上をコンプライアンスに投下すると話していました。これは罰金などを含まない、純粋なオペレーティングコストです。また別のインターナショナルバンクでは、規制の変化に対応するために2,000名のアナリストを新たに採用するということでした。本当に驚くような数字です。」

マネーロンダリング防止に金融機関が多くの費用を投じている理由の1つとして、不正取引を検知するためのモニタリングの難しさが挙げられる。金融機関では顧客の取引内容を監視し、たとえば多額の送金を行っているなど一定の条件に合致した取引が発生すると、その内容を精査してマネーロンダリングであるかどうかを判断する。このモニタリング作業において、リューは「100のアラームがあったとき、そのうちの98%はポジティブな取引、つまり誤った判定であり、問題のある取引は2%に過ぎないと言われています。これでは生産性は高まらず、モニタリングはうまくいきません」と指摘する。

もう1つ、規制対応を難しくしているのは、グローバルにおける標準と各国の規制は必ずしも等しくないということだ。

「すべての国に関して、それぞれ規制は違いますし、法制度のニュアンスも異なります。このため、事業を国際的に展開しているのであれば、グローバルスタンダードとローカルコンプライアンスを同時に満たさなければなりませんが、これは非常に難しい作業になります」

クラウド、機械学習、ブロックチェーンで実現する次世代のマネーロンダリング対策

このように難易度の高いマネーロンダリングを巡る規制に対応するための次世代の技術として、リューが取り上げるのは「クラウド」と「機械学習」、そして「ブロックチェーン」である。

モニタリングを中心とする業務において、クラウドを活用するメリットは大きい。「規制対応のために必要となる機能がサービスとして提供されているクラウドを利用することで、オペレーションやデータの標準化が可能となり、企業全体に一貫性をもたらすことができます」と、具体的なメリットをドン・リューは解説する。また各国の法制度に合わせて個別にシステムを作り込む必要がないこと、法制度が変わった際はクラウドサービスを提供するベンダー側で対応することになるため、最新の機能を使い続けるためのコスト負担を削減できることも見逃せない利点である。

すでにクラウドはマネーロンダリングの防止にすでに使われ始めており、スンダードチャータード銀行、そしてJPMorganがオラクルのマネーロンダリング対策ソリューションである「Oracle Financial Crime and Compliance Management」を導入して活用している。

機械学習にも大きな期待が寄せられている。違法取引の検知において、機械学習を適用することで業務を効率化できる可能性があるためだ。さらにリューはアナリストのトレーニングにも機械学習や役立つと話す。

「機械学習を積極的に活用し、能力の高いアナリストには難易度の高いアラートを割り当て、経験が乏しい人材には分析作業の負担が少ないアラートを渡すようにすれば、効率的に人的リソースを活用することが可能になるでしょう。また、難易度によって割り当てを自動的にコントロールすることは、アナリストのトレーニングにもつながります」

ブロックチェーンに期待されるのは、貿易のためのファイナンスや国をまたいだ送金、そして金融機関の間での情報共有である。「ブロックチェーンのデータソースはオープンかつ完全であり、効果的に取引をモニタリングする仕組みとして高いポテンシャルを秘めていると考えています」とリューは語り、今後の展開に期待を寄せた。

いずれにしても、マネーロンダリングが麻薬密売をはじめとする犯罪行為、そしてテロリズムと密接にかかわっているのは間違いない事実である。こうした悪事の芽を摘み、私たちが平和に暮らせる社会を構築するためにも、着実にマネーロンダリング対策が進められることを強く期待したい。

参考記事:
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