日本オラクル特集記事

デジタルディスラプションの先陣を切るIoT。小さく始めて大きく展開するクラウドの使い方

ITジャーナリスト
谷川 耕一

「2020年までにクラウドでNo1になる」と宣言した日本オラクル。具体的にどのようにして「クラウドでNo1」になるのか。そのテクノロジー面からのアプローチを紹介する場となったのが、2016年4月26日に開催された「Oracle Cloud Platform Summit Tokyo」だった。

デジタルディスラプションのプラットフォームもクラウド

基調講演に登場した日本オラクルの取締役 代表執行役社長 兼 CEO杉原 博茂は次のように述べる。「社会に貢献するクラウドカンパニーを目指します。デジタル技術で社会を良くしていく。その際に日本の現状を今一度踏まえ、やっていきます」。ここで言う日本の現状の1つが、今後深刻となる労働人口の減少だ。2020年までに日本の人口は250万人減少し、その時点で人口の約3割が65歳以上の高齢者となる。「65歳も働かなければならない時代、そのときの働き方をどうすればいいのか。労働人口減少の問題を解決するには、ITで生産性を高めなければなりません」。このときに活用することになるのがクラウドだ。

一方で今、急激に進んでいるのがデジタル化だ。生活の隅々までがデジタル化しつつあり、それにより「デジタルディスラプション(デジタル化による破壊的変革)」が起きている。破壊という言葉はネガティブに捉えがちだが、デジタルディスラプションはそうではない。むしろ社会にとって良いことであり「これは未来に馴染むことです」と杉原は述べる。

デジタルディスラプションの中で、自らが市場の破壊的変革者になる。その際に活用するプラットフォームもクラウドだ。オラクルのクラウドの強みは、データベースやアプリケーション開発基盤などのプラットフォーム(PaaS)と、サーバーなどのITインフラストラクチャ(IaaS)の両方があること。Amazon Web Servicesやマイクロソフトは、これまでのところIaaSが中心でありPaaSはこれからだ。

クラウドにはもちろんコスト面でのメリットもある。Oracle Cloudには保守費用も含まれ、運用管理のコストも発生しない。それでいて、オンプレミスで培ってきて高度な技術と同じものを全て利用できる。

1,200名以上が来場した「Oracle Cloud Platform Summit Tokyo」

パブリッククラウドを顧客のデータセンターで動かすOracle Cloud Machine

2016年3月からクラウド・テクノロジー事業を統括する副社長 執行役員の石積尚幸は、オラクルの創業者でCTOであるラリー・エリソンの法則「データは集積度を増すに従い、その価値を幾何級数的に上げる」を紹介した。たとえば、ある商品がどれだけ買われているかのデータも1店舗だけの情報を見るのではなく、世界中のデータを集めて見ると新たな価値が見えてくる。そんな世界中の莫大なデータを集めリアルタイムに処理できるようにする。そのための重要なエンジンとなるのがOracle Databaseだ。「Oracle Databaseには常に最新の技術が投入されています。データベースのイノベーションを続けており、最新版のOracle Database 12c R2は、クラウドレディのデータベースになっています」と石積は述べる。

一方、オラクルのクラウドは、まったく新しい技術で構成されているわけではない。「今ある技術を使い、既存のIT資産をそのままクラウドでも活用できます。これこそがオラクルの強みです」と石積。たとえば世の中的には最先端となるIoTのソリューションも、オンプレミスで培ってきた従来の技術を組み合わせ、クラウド上でパッケージし直すことで迅速に提供できるようにした。その上でこのIoTの仕組みは、オンプレミスでもクラウドでも一貫した運用・管理を提供している。

クラウド・テクノロジー事業統括 PaaS事業推進室 室長の竹爪 慎治は、OracleのPaaSは最も包括的なポートフォリオを持っていると言う。現状で8つのカテゴリー、30以上のサービスがあり、既存のエンタープライズITのクラウド化をサポートする。さらにIaaSについても、15ものサービスが用意されている。PaaSのためのIaaSとはいえ、オラクルのIaaSは他社サービスと同等なものを提供している。その上で、Oracle Exadataなどオンプレミスでも評価の高いエンジニアド・システムのアーキテクチャをそのままIaaSに適用している。ここは、他社にはないオラクルのIaaSの差別化ポイントだと竹爪は主張する。

ところで、クラウドの活用では既存のエンタープライズIT資産をクラウド化するものと、革新的で破壊的なソリューションをクラウドで実現するものの2つがある。前者に求められるのは、クラウドあっても極めて高い堅牢性だ。これに対応するための1つの方法が、2016年3月に発表された「Oracle Cloud Machine」だ。これは、オラクルのパブリッククラウドとまったく同じ環境を、顧客のデータセンターで利用できるようにするものだ。

通常のパブリッククラウドも、このOracle Cloud Machineで実現する専用パブリッククラウドも、アーキテクチャはこれまでのオンプレミスとまったく同じものだ。なので、オンプレミスで動かしていたエンタープライズITをパブリッククラウドやOracle Cloud Machineに持っていく際に、アプリケーションなどは何も変える必要がない。

Oracle Cloud MachineはIaaS、PaaS、クラウドOS、クラウド・サービスで構成されており、インフラ部分の利用料金はパブリッククラウドと同様に月額固定費用。その上のサービス部分の課金体系も、パブリッククラウドと同様となる。マシンは顧客のデータセンターに置くが、管理はオラクルのエンジニアがリモートから行う。顧客がクラウド環境の管理面を心配する必要がないのもパブリッククラウドと同じだ。

この仕組みは、顧客のデータセンターだけでなく、パートナー企業のデータセンターに置くこともできる。プライベートクラウド、Oracle Cloud Machineで実現する専用パブリッククラウド、そしてパブリッククラウドというさまざまなタイプを含む真のハイブリッド環境を作れるのがOracle Cloudの特長となる。その上でOracle Cloud Machineを活用すればパートナーのノウハウ、技術も活かすことができ、付加価値の高いサービスをパートナーからも提供できると竹爪は言う。

ホットデータの活用とコールドデータの分析の両方があってIoTの価値が生まれる

デジタル化によるイノベーションをクラウドで実現する。その先陣を切っているのがIoTだろう。2020年までにインターネットにつながる端末は300億を超え、IoT経由で4兆ギガバイトのデータが生まれると言われる。

「IoTは技術的には整っているけれど、ビジネス的なところがなかなか見えてきません。そのため、最初からあまり大きな投資ができません。そういうところは、クラウドとの親和性が高い領域と言えます」(竹爪)

クラウドを活用し小さく始めて、ビジネスが見えてきたら大きく展開する。このIoTでは、流れてくるデータに2つの種類があると竹爪は指摘する。1つはホットデータで、これは即時に対応すべきものだ。もう1つがコールドデータで、こちらは蓄積し複合的な分析を行うことで価値が出るもの。この2つの特性を見極めた上でデータを活用する。そして、これらを組み合わせることで初めて、IoTの価値が生まれビジネスに適用できるようになる。

オラクルのIoTのアーキテクチャは、フロント部分でデバイスからデータを集めストリーム処理を行う「Oracle IoT Cloud Service」、データを集積、保管し分析を行えるようにする「Oracle Big Data Cloud Service」、そして既存の業務系アプリケーションなどと連携しビジネスのアクションを起こす「Oracle Integration Cloud Service」という3つから構成される。

「IoTのソリューションの多くでは、ゲートウェアやフロントのところにフォーカスが当たりがちです。IoTではコールドデータの分析や業務処理のデータとの連携も重要です。オラクルではこれらを包括的にクラウドでサポートします」(竹爪)

IoT Cloud Serviceは、IoTビルディング・ブロックの形でIoTのフロント部分で必要な一連の機能を、パッケージとして提供する。ほぼノンプログラミングでデバイスを接続し、データに対するルールベースの処理なども可能だ。ここで利用されている技術は、オラクルがすでにオンプレミスで実証してきた技術だ。それをクラウドに持ってきて、リアリティのある形で提供している。

Big Data Cloud Serviceは、仮想的にビッグデータを集め蓄積、加工、分析を行うコールドデータのためのサービスだ。最初はスモールスタートで始め、そこからデータが爆発的に増えても耐えられるアーキテクチャとなっている。IoT Cloud ServiceとBig Data Cloud Serviceを、クラウド上で組み合わせて使えることがオラクルのIoTの強みだと、竹爪は改めて主張した。

谷川 耕一
フリーランス・ITジャーナリスト。有限会社タルク・アイティー 代表取締役社長、ブレインハーツ株式会社 取締役。IT業界を少し違った視点から俯瞰するブログ「むささびの視点」が好評。