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ITジャーナリスト
谷川 耕一
オラクルが、まったく新しい開発者向けイベントのブランド「Oracle Code」を立ち上げた。ベンダーが通常行う開発者向けのイベントや情報発信は、製品を紹介することが中心だ。これに対し「Oracle Codeは開発者が今熱狂しているようなことを題材に、みんなで集い勉強をするものです」と言うのは、日本オラクル クラウド・テクノロジー事業統括 Cloud Platform事業推進室 エバンジェリストの中嶋一樹氏だ。
世界20都市で開催する「Oracle Code」。東京での開催は2017年5月18日
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中嶋氏は、エバンジェリストとして開発者向けの技術啓蒙活動を日々行っている。ここ最近の活動はオラクルのクラウドサービスを押し出すのではなく、開発者と技術的な「知見を共有」することを目的にしている。そのためのミートアップの集まりを日本各地で開催し、そこにはこれまでオラクルのイベントやセミナーで中心だったOracle Database技術者だけでなく、さまざまな立場の開発者が集う場になっているとのことだ。
オラクルが製品紹介ではない開発者向け啓蒙活動に今力を入れ始めたのは、ベンダーとして製品を主体としたプロモーション活動では開発者とのコミュニケーションに限界があると感じているからだ。製品情報を一方的に伝えるのではなく、開発者やビジネス現場にいる人たちが今もっとも高い関心を持っている事柄、それに対しどう実現するのか。その解決策を示す。解決策にはオラクルの製品や技術を、必ずしも使ってなくていい。
「感度の高い開発者」が集う「場」をオラクルが提供し、彼らにそこで何らかの発見をしてもらう。得られた知見を持ち帰り、自分たちのビジネス現場の開発案件などで応用してくれるかもしれない。その機会を提供することでオラクルと開発者との接点が増えればそれで良いと中嶋氏は言うのだ。
開発者向けのマーケティング活動としては、ずいぶんと遠回りの施策にも思える。しかしながら、今の時代の開発者とより良い関係性を築くには、このような活動を粛々と続けるほうが効果的だろう。時間はかかっても、こういったアプローチが結果的にはオラクルの新たな開発者へ向けたブランディングもエンゲージメントも向上すると考えているのだ。
「これまでデベロッパーリレーションの取り組みが足りていなかったかもしれません。とはいえ、ここ1年くらいでそれが大きく変わっています。日本でも毎月のように開発者ミートアップをやるようになり、多いときにはそれに100名以上が参加してくれます。すでに全国で1,400名以上の開発者とコミュニケーションがとれました」(中嶋氏)
製品の最新情報の話さえすれば、開発者がどんどん集まる時代ではなくなった。技術資格を取得するだけでステータスが得られる時代でもない。開発結果やそれに関わる技術情報をオンラインで発信する。そういったことに積極的に取り組む開発者が、SNSやコミュニティで高い評価とステータスを得るようになってきた。この新しく評価されている開発者にもベンダーとしてアプローチをしたい、とオラクルは考えている。そしてそのときに大事なのは、情報をベンダーから与えるのではなく、活躍している開発者をきちんと「リスペクト」することだと中嶋氏は言う。
この変化の背景にはクラウドが登場しマイクロサービスなどの概念が出てきて、1人で全てのコードを書いてアプリケーションやサービスを開発するのではなく、すでに世の中に存在する便利な機能やツールをうまく活用しエコシステムでシステムを組み上げる時代になったことがあるだろう。この動きはクラウドの普及と共に加速しており、クラウドに力を入れるオラクルにとっては新たな開発者へのアプローチは必然とも言える。
●集い学び合い、そこからさらに情報発信してくれることに期待
中嶋氏がすでに国内で行っている啓蒙活動の「Oracle Cloud Developers Meetup」は、IoTの仕組みやChatbotの構築方法を学ぶといったテーマで、全国各地で頻繁に開催されている。ミートアップでの技術説明では、オラクル製品の話が出てくることもあるが、内容的にはそれらを前提としたものではない。「実際にIoTやChatbotを作るとなった際に、開発者がきちんとベストな構成を見極めてくれればいいのです」と中嶋氏。あくまでも活動は啓蒙で、開発者の地盤を整えるものだとも言う。
そのためにも参加する開発者には、ミートアップに参加し学ぶだけでなく、そこで得たことや感じたことをブログなりでアウトプットしてくれることに期待している。そうすることで、今開発者にとって関心の高い事柄の情報がネット上に増え、ミートアップに参加していない人にも新たな情報が届きやすくなるからだ。「その結果、必然的に技術情報がネット上に蓄積されることが重要で、それがオラクルのマインドシェアの向上につながれば、と考えています」と中嶋氏。今までのどちらかと言えば「強気なオラクルのマーケティング手法」から比べると、なんとも地道なアプローチだ。
まだまだ参加者のアウトプットの量は、少ないと中嶋氏は感じている。とはいえ一方で、ミートアップへのリピーターは増えている。何度も参加してくれる人がいるのは、新しい啓蒙活動がうまく回り始めた証しだろうとも。さらに、ミートアップに参加した開発者が関わる、オラクルのクラウドを活用する新しいビジネス案件の話も聞こえてくる。啓蒙活動が自然発生的に案件につながっている。「これは極めて健全なセールスサイクルで、参加した開発者もオラクルもウィン・ウィンの関係になっていて、理想的なエコシステムになっていると思います」と中嶋氏は指摘する。
このような活動を地道に続けてきた上での「Oracle Code」だ。「Oracle Code」の第1回は、米国サンフランシスコで2017年3月1日に開催され、その後は世界中をツアー形式で回っている。日本においても5月18日に東京で開催される。「Oracle Code」は地道に行ってきた啓蒙活動の集大成のようなイベント。オラクルが主催する無料イベントだが、セッションの多くは公募により決められ、オラクルが一方的にセッションテーマを決めるものでもない。
講師もオラクルのコンサルタントなどが担当するものもあるが、それらはたまたま彼らがIoTや機械学習など開発者が注目する新しい技術テーマに詳しいからだ。公募セッションでは、SNS上などですでに評価の高い開発者が担当するものも多い。
数あるセッションで人気なのが、ハンズオン形式で実際にIoTやbotなどの仕組みをその場で手を動かし作るものだ。「Oracle Cloud Developers Meetup」でも、ハンズオン形式のセッションを開催している。開発者にとっては、その場で手を動かし動くものが作れるセッションへの参加意欲は、かなり高いものがあるようだ。
●ローコード・デベロップメントが気になる人は是非
日本で開催される「Oracle Code」には、「オラクルのステークフォルダーの方はもちろん、オラクルとは関わりのない開発仕事をしてきた人にも是非来て欲しいです」と言う。さらに、ブログやSNSでの発信力のある人は大歓迎だと。とにかく参加し「忌憚のない意見を言ってもらいたい」とのこと。
さらに「『ローコード・デベロップメント』と言う言葉に引っかかる人は、是非参加して欲しい」とも言う。クラウドサービスなどを活用すると、コードをほとんど書かずに設定ベースの処理だけでアプリケーションが作れるようになってきている。このコードをできるだけ書かないのは、開発者にも今、注目の領域だ。これはオラクルならば、「Oracle Application Express」というサービスを活用することで実現できる。
「Oracle Application Express」を使えば、コードなしでデータベースを活用するアプリケーションを簡単に構築できる。「たとえばIoTの仕組みでREST API部分の処理などが、コードを書くことなく実現できます。これはギークな人たちだけでなく、さまざまな人に触れて欲しい技術です」と中嶋氏は言う。
そんな「Oracle Code」に参加するために、必要となる特別な技術スキルはない。もちろん機械学習のセッションなどは、データベース技術者が参加すればかなり面白いものになるだろう。一方で「ローコード・デベロップメントなどのセッションは、特に前提スキルは必要ありません。ベースのスキルがなくても参加できるものを数多く用意します」と中嶋氏は言う。
ローコード・デベロップメントに引っかかる人、オラクルがどう変わったか見てやろうじゃないかという人、今まさにIoTを使って機械学習で新たなアプリケーションを考えている人。そんな人たちが「Oracle Code」に集えば、新たな開発の「何か」を発見できるかもしれない。