日本オラクル特集記事

女性活躍に向け「もっと大きなことを」

日本オラクルでダイバーシティに取り組む有志団体が年次フォーラム

2016年4月に「女性活躍推進法」が施行されたこともあり、企業における女性に注目が集まっている。米国に本社を持つ日本オラクルでは、女性のリーダーシップ育成を課題に、社員有志グループが社内で静かな革命を起こしている。

日本では幹部に占める女性比率は13%

6月22日、東京・青山にある日本オラクル本社のセミナールームに、日本オラクル 取締役 代表執行役社長 兼 CEOの杉原 博茂氏を含む200人超の社員が集まった。米国本社で立ち上がったOracle Women’s Leadership(OWL)を日本で進める「OWL Japan」の年次フォーラムだ。米国ではダイバーシティとインクルージョンを「創造性とイノベーション、協働を促進するもの」と位置づけ、女性・男性のジェンダー(性)にとどまらず、人種、LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー)など、より幅広いテーマの下に取り組みを進めている。日本では2012年に立ち上がり、約60人のボランティア社員が女性のリーダーシップにフォーカスした活動を展開している。

最初に登場した杉原氏は、米国と日本におけるダイバーシティとインクルージョンの取り組みを説明した。米国本社では、女性CEOとしてFortune誌の「最もパワフルな女性」ナンバー14(2014年)に選ばれたこともあるCEO、サフラ・キャッツ氏はじめ法務やオペレーションなどの部門を女性が率いている。米国では社員に占める女性の割合が29%であるのに対し日本では20%、管理職に占める女性の比率は、米国では25%であるのに対し、日本では13%ーー「社員、管理職ともに増やしていく必要がある」と日本の現状を認めた。

OWLメンバーに対しては「もっと大きなことをやってくれ、気を遣うなと言っている」という杉原氏、会場に集まった社員に向かい「役員会に子供を抱えてきてほしい。しかめっ面の役員がきっと笑顔になる」と呼びかけた。

キャッツ氏が取り組む「全員が能力を最大限に発揮できる環境」

その米国でも、CEOのキャッツ氏自身がダイバーシティとインクルージョンにコミットしている。2015年秋、毎年同社がサンフランシスコで開催するイベント「Oracle OpenWorld San Francisco」の会期中に開催したダイバーシティに特化したイベント「Diversity and Inclusion Global Leadership Summit」でも、スピーチを行った。

満員の会場を前に、キャッツ氏は自らの経験から「受け入れ」の重要性を語ったーー5歳のとき、イスラエルから移住したばかりのキャッツ氏がはじめて小学校に行ったときのことだ。「父と一緒に学校の門をくぐり、1年生の教室のドアを開けた。英語を一言も話せず、とても怖かった」とキャッツ氏。「オラクルのCEOになったいまも、このときのことは決して忘れていないーー受け入れてもらえるかどうかの恐怖を。オラクルでは、従業員、パートナー、顧客全員に恐れを抱いて欲しくないと戦ってきた。恐れを抱いていては、最大の能力を発揮できないから」と続ける。受け入れは違う視点があるということに気がつくことでもあるーーこれを、イベントのテーマである「みえない偏見」に重ね、「問題解決には異なる視点が必要」とインクルージョンを呼びかけた。

このイベントに感銘を受けたのが、ヤフーの志立正嗣氏(執行役員 データ&サイエンスソリューション統括本部長)だ。この日のOWLフォーラムに、グーグル、三井住友銀行の経営幹部とともに、パネリストとして参加した。

今年20周年を迎えたヤフーでは、女性社員の比率が約30%、管理職に占める比率も14.4%と決して低くはない。育児休暇後の復職率は97.2%にも到達している。だが、「PCからスマートフォンへのシフトが起こっており、今後はIoTになる・・・インターネットが生活に近づく中、生活を感じる力がないといいものを作れない」と志立氏、ここでは女性の視点がとても重要になるとみており、開発を中心に女性の活躍を促進していきたいという。

その促進策の1つとして、ヤフーは6月に執行役員による「スポンサーシップ制度」を立ち上げた。有志の集まりをトップがスポンサーを務めるというOWLのモデルを参考にしたものだという。ヤフーでは、これまでウーマンプロジェクト、女性の健康支援プロジェクト、パパママプロジェクト、レインボープロジェクトなどのプロジェクトが社員有志によって立ち上がり、活動をしてきた。志立氏自身も3つのスポンサーを務める。「これから試行錯誤しながらやっていきたい」と笑顔で期待を語った。

環境づくりーー共感、認め合いのために

OWLフォーラムのメインテーマ「女性活躍のために何が必要か?」では、日本オラクルの執行役員、管理職がそれぞれの立場から意見や取り組みを共有した。

ダイバーシティという大きなテーマに対して、「さまざまな考え方や働き方を受け入れることと定義し、発言しやすい環境をつくることを目指している。ミーティングで課題を話し合うときに、疑問に思うことがあるが、それこそがダイバーシティと位置づけ、よく考えて全員で議論するようにしている」との発言があった。

オープンなコミュニケーションについては、小守雅年氏(執行役員 コンサルティングサービス事業統括 クラウド・テクノロジーコンサルティング事業本部長)も「会議では黙らずに、まずは発言しようと声をかけている」と述べる。日本オラクルでの勤務が長い小守氏は、「褒められる方は気持ちがいいから」と、他人のプレゼンでいいところがあると拍手をするように奨励しているとのことだ。「なにかあるたびに拍手する会社。そんな雰囲気を大事にしたい」と述べる。

コミュニケーションについて「共感」というキーワードを挙げたのは、小野律子氏(クラウド・アプリケーション事業統括 HCMクラウド事業本部 エンタープライズ営業部 部長)だ。「報・連・相をしていて、最後に共感がないと認められていないと思ってしまう」と女性心理を代弁した。「自分の意見をいうと”それは必要ない”と言われる。そうなると、認められていないと思ってしまう」と小野氏。そのため、コミュニケーションの場で、”報・連・相です。プラス、共感してもらいたいです”と先に伝えているほか、相手に対しては、”なにがあると認められていると感じるか”を前もって聞いているという。「これは、認め合う雰囲気作りのためにすぐにできる方法」と会場に助言した。

小野氏は、これまでの自身の経験から「すべて伝えたい」「気持ちが変化しやすい」などを女性と男性との違いに挙げた。「女性は納得しないと進めない。男性幹部は女性社員に対し、”納得している?”と聞くとよいかも」ともアドバイスした。

キャリア形成を中心に環境と不公平感のない機会を提供

同社の年次調査の結果、リーダーシップについて女性が活躍していないと思う女性は前年より減った一方、男性は増えるという結果が出た。さらに活躍してもらうためになにが必要かーー。この質問に対し、白石昌樹氏(常務執行役員 エンタープライズ第五営業統括 兼 クラウド・テクノロジー事業統括 公共営業本部長)は、「女性の方が、肝が座っていることもある」と評価しつつも、育成環境、リーダーシップを発揮してもらうための仕組みや工夫が必要だとした。さまざまなアプローチがある中で白石氏が重視しているのは、「個々の市場価値をあげるためのキャリア形成」だ。キャリア形成を中心に据えた環境と不公平感のない機会の提供を心がけているという。

そのキャリア形成について、育児中の社員に配慮も見られた。小守氏は「おこられそうだが」と前置きしながら、育児中の社員に対し「最初の3年はちゃんと子供をみるようにといっている」と明かす。その背景には、子供を育てながらキャリアを積むことへの自信を持ってほしいという願いがある。「まず、子供を育てる自信を。仕事は割り当てるが、成果は少し長い視野で見る」と考えを語った。

キャリアカウンセラーの資格をもつ小野氏は、「計画された偶発性理論(Planned Happenstance)」という考え方を紹介した。「以前はキャリアプランをしっかり立てて、何歳のときにどうなりたいかを考えるというアプローチだったが、キャリアチェンジは常に自分の前にあり予想できないことにより決定される」というものだ。「私自身は出会った人から学ぶようにしている。機会は平等で、これが機会だと気がつくのは本人しかいない。そうやってキャリアを形成していくとよいのでは」とアドバイスした。

会場でのリアルタイムアンケートで「オラクルでは女性が活躍していると思うか?」という質問に対し、6割近くが「イエス」と回答した。OWLメンバーたちはこの比率をもっと高めるため、女性のリーダーシップ、キャリア開発について「もっと大きなこと」を、社員が考える場を作っていきたいとしている。