日本オラクル特集記事

サッポロビールが醸し出す、コンテンツとソーシャルの絶妙なバランスとは

「サッポロ」というと日本のビールの歴史そのものといっても過言ではない

時は1800年代までさかのぼる。日本が何世紀にも渡る鎖国に終止符を打ってからさほど時間が経っていない頃、日本はビールという新しい飲み物に魅了されたのである。1876年、この新時代を象徴する飲み物は日本のビール産業創出に貢献し、北海道開拓の本拠地である札幌で日本初のビール醸造所がオープンした。この「北海道開拓使」によるビール醸造は、日本の歴史上もっとも古いビールのブランドであり、今日、その町の名前が由来となり、トレードマークである「五稜星」とともに親しまれている。

サッポロビールは、日本初のビール醸造会社だけではない。ビール業界の中でも日本で初めてFacebookを活用したコミュニケーションを始めた会社でもある。ソーシャルメディアへの先行した同社の取り組みは、サッポロのマーケティング戦略に著しい変革を促し、顧客に直接的でパーソナライズされたアプローチに注力することの重要性に気づき、それに適した組織再編が行われた。現在、その変革が功を奏し、ソーシャルとコンテンツマーケティングの取り組みは結果を出し始めている。サッポロビールの売り上げ拡大に貢献、市場動向に関する新しい気づきを製品開発部門に提供し、そして全く新しい手法でビールファンとの関係を構築することに成功している。

デジタルありきでチームを発足

サッポロビールは、その鋭いセンスでFacebook活用を率先して行ったが、その当時は、新たな時代を築くマーケティングの新手法として入念に設計されていたわけではなかった。サッポロビールのマーケティング開発部 デジタルコミュニケーショングループ リーダーである工藤氏によれば、イノベーションを奨励する企業文化が同社には根付いているという。十分に調整した上でスタートしたわけではないが、ソーシャルメディア活用の効果が顕著になるにつれ、組織横断で複数のソーシャルマーケティングの取り組みが走ることによる非効率性と冗長性が明らかになったのである。

工藤氏は、「ソーシャルメディアに関する標準的なルールはなかった。だから、ソーシャルメディアに取り組んでいるスタッフを集め、新しいデジタルメディア部門として発足させた」と述べる。

工藤氏が現在リードする「デジタルメディア部門」は、従前の部門、例えば広告宣伝部、営業企画部門、ECサイト部門などで、ソーシャルメディアを担当したスタッフによって構成され、サッポロビール内でソーシャルメディア活用の中核的存在として深耕拡大に取り組んでいる。これはつまり、プロセスの標準化、最適手法の確立、ソーシャルメディア担当が効率的に業務を遂行するために必要なIT基盤の集約であった。

「初めは、ソーシャルマーケティングのためのツールは一切使っていなかった」と工藤氏は述べる。「Facebookに投稿するためには、直接ログインして投稿するということをやっていた。しかし、このような手作業での実行は企業全体での活用に発展させるためには向いていない。現在は、『Oracle Social Cloud』を活用し、ソーシャルマーケティングの取り組みに対して予算を確保している。このようなソーシャルメディアへの投資によって、サッポロビールの経営者のソーシャルマーケティングへの認識も変えていった」

ソーシャル・イニシアティブ

チームと戦略が整ったところで、デジタルメディア部門は現在管理するソーシャルメディアの公式チャネルを活用し始めた。最初に取り組んだのは3つの公式Facebookページで、合わせて約30万のフォロワーがいた。メインとなるサッポロビールのブランドページ、サッポロビール発祥の地である北海道のイベントや注目トピックをプロモーションする「北海道Likers」、そしてビールの目利きが新しいビール商品へのコメントやアイデアなどを共有するコミュニティサイト「百人ビール・ラボ」である。

ソーシャルメディアチームはFacebook ページに対する明確なゴールを持っていた。それはマーケティングの取り組みを、顧客がすでに使っているチャネルを活用する方法に切り替えることである。従来、サッポロビールの売上は流通チャネルを経由して計上されることがほとんどなので、最終顧客との接点において、sapporobeer.jp の登録ユーザーを増やすことに専念していた。このサイトの登録ユーザーは、非登録ユーザーと比較して、サッポロビールの商品を買うことに大変前向きで、そのうち88%は何かしらのアクションを起こす傾向があることが分かっていた。また登録ユーザーになるということは、サッポロビールが利用するマーケティング・オートメーション・システムに顧客情報として登録することでもあった。このマーケティング・オートメーション・システムは「Oracle Marketing Cloud」で構築されている。

だが、同サイトへのアクセスや登録は減少傾向にあった。そのため工藤氏のチームは外部のサイトですでに顧客が集まって、利用されているチャネルを活用する方向への転換を決定したのである。この転換は従来のオンライン・マーケティングの取り組みからの大胆な変革であったにも関わらず、低コストによる調整で済んでいる。

「歴史的に、メンバー登録キャンペーンを実施してきた。商品を提供して登録させるようにしていた」と、サッポロビール、マーケティング開発部 デジタルコミュニケーショングループ 主任である森氏は述べる。「だが、ちょうど今年コンテンツマーケティングへの新しい取り組みを開始した。もっともっとおもしろくて楽しませるコンテンツをソーシャルメディアチャネルにあげるようにしている。そうすることで、Oracle Social Cloudも活用し、潜在顧客が我々のコンテンツに引き寄せられ、公式サイトの登録ページへ誘導している」

コンテンツの仕込み

このコンテンツへの取り組みはチャネルによって異なる方法で実施した。「百人ビール・ラボ」では、Facebookのコミュニティからサッポロビールの商品に対するフィードバックが得られるようなコンテンツ提供に注力した。例えば日本各地に存在するビールへの知見があって、積極的に意見を言うビールファンによるライブのバーチャル会合を毎週開き、サッポロビールの新商品に向けた彼らのアイデアを提案してもらうような機会を提供している。また、サッポロビールではオンラインコミュニティの中でも特にアクティブなメンバーを対象にオフ会も開催し、新しいビールの開発への情報を収集している。実際、2014年には「サッポロ 百人のキセキ 至福のブラウンエール」という「百人ビール・ラボ」から誕生した新しい商品を発表している。

コンテンツとソーシャルマーケティングの取り組みは、デジタルマーケティングを推進するチームへと進化することを意味していた。実際のところ、チームの文化をそれぞれのコミュニティの要求に適用させる必要があった。例えば、サッポロビールの公式Facebookページには、秀逸なビデオキャンペーンを展開する上で、今までにないペースで行う必要があった。

「すべての主要なサッポロ・ブランドを見せたかったが、ソーシャルで受けいれられるやり方で実施する必要があった」と森氏は述べる。「そのため、サッポロ・ブランドを、それぞれのイメージにあった異なる個性をもつビジネスパーソンのキャラクターに仕立てあげた。もちろんメインとなるブランドはCEOです」。このキャンペーンはコンセプトから具現化するまで、27時間という短時間で実現した。しかしその努力は十分に報われた。この動画をみた消費者の33%が何かしらのアクションを起こしたのである。例えば、ソーシャルメディアでシェアする、サッポロビールのWebサイトを訪問する、あるいはECサイトでビールを購入する、などである。

サッポロビールは、この戦術をFacebookだけでなく、Twitterのような他のソーシャルメディアでも展開した。しかし工藤氏は、すべてのチャネルにおいて、それぞれに適した戦略とアプローチ方法がある、ということを認識していた。Twitterでは、サッポロビールの商品に対する批判的なコメントについて注目したが、それに対して積極的に介入することがいいのか確信が持てなかった。しかし、「むしろその逆のほうがいい、ということに気付いた」と工藤氏は述べる。「積極的にコメントに対応していく手法をとったところ、フォロワーはむしろそれを好意的に受けとめてくれた。このことで、サッポロビールの商品に批判的なお客様に何かしら影響をあたえ、彼らとの関係性を変えていく機会として役立つということが分かった」。この取り組みは十分に効果があった。Oracle Marketing Cloudのアナリティクス機能によって、サッポロビールのTwitterのフォロワーは、Facebookのそれよりも、サッポロビールの商品をECサイトで購入する確率が高いということが分かったのである。

この「ファネルの入口」における戦術は、相対的に新たな手法であったが、ゴールは同じだった。顧客のロイヤリティを向上し、新規売上を獲得すること。そして、Oracle Social Cloudが活用されているこの初期段階のプロセスは、最終的にはOracle Marketing Cloudと連携している。そのため、アウトバウンド・マーケティングやセグメンテーションが可能になっており、サッポロビールのデジタル・マーケティングチームは、今まで以上に、顧客が最適なアクションを促すための最適なメッセージ提供が可能になっている。「ソーシャルとコンテンツマーケティングの取り組みは、顧客が何を求めているかについて新しい情報を提供してくれる」と工藤氏は述べる。「さらに消費者が求めていることが分かれば、それに応えるメッセージを提供し、サッポロビールの顧客になるように誘導すればいいだけです」。

サッポロビールのデジタル・マーケティングチームは、これらのコンテンツとソーシャルマーケティングの取り組みが日本において新たな歴史を築き続けることを期待している。例えば、イノベーションの創造、顧客を意識したキャンペーン、例えばワインのような日本において顕著な成長を遂げている市場の開拓などである。「サッポロビール社内では既に、ソーシャルマーケティングの威力は十分に理解されている」と森氏は述べる。「経営陣もビジネス拡大のために、これらチャネルやツールは有効だと認識している」。

本記事はForbes.com OracleVoiceの以下の記事を抄訳しています:
http://www.forbes.com/sites/oracle/2016/05/26/sapporo-brews-new-beers-and-new-customers-with-social-and-marketing-cloud-ingredients/