日本オラクル特集記事

目指すは日本代表選手団のユニフォーム!
メイドインジャパンの工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」の挑戦

日本オラクル 広報室
谷地田 紀仁

日本オラクル株式会社が2017年7月26日に、東京都が起業・スタートアップ支援に必要な各種サービスを提供する「Startup Hub Tokyo」の協賛を得て、「ソーシャルスタートアップとして起業する」をテーマにセミナーを開催した。

地域社会において、環境保護、高齢者・障がい者の介護・福祉から、子育て支援、まちづくり、観光などに至るまで、多種多様な社会課題が顕在化しつつある。このような課題解決に向けて、日本を、世界を変えていくと果敢に挑戦する「ソーシャルスタートアップ」の起業家2人がその熱い思いを語った。

講演者の1人目として登壇したのが、メイドインジャパンの工場直結ファッションブランド「ファクトリエ」を展開するライフスタイルアクセント株式会社 代表取締役の山田敏夫氏。2人目は日本オラクルの現役社員で、同社の兼業制度を利用しIoTの仕組みを活用した見守りサービス「biblle(ビブル)」を提供するジョージ・アンド・ショーン合同会社代表(G&S)の井上憲氏が、「社会課題を解く」自社の取り組みについて紹介した。


2012年に「ファクトリエ」を創業した山田敏夫氏。仏留学中に「ものづくりからしか本当のブランドは生まれない」ことを学んだ。

グッチ・パリ店での勤務から学んだ、ものづくりから生まれる本当のブランド

熊本市内にある創業100年の婦人服店の息子として育った山田氏は大学在学中、フランスへ留学。当時2000年代初頭はファストファッションが日本を席巻し、消費者は、ファッション性、リーズナブルな価格、知名度があればどこで生産されていようがあまり気にならない、山田氏もそのような大勢の一人であった。留学中パリのグッチで見習いとして勤務し、エルメスやルイヴィトンといった世界の有名ブランドは元々、小さな工場で職人の手がける傑作の一品を店頭で売るというシンプルな商売だったことを知る。そして、「ものづくりからしか本当のブランドは生まれない」ことを学んだ。

山田氏は2012年に「ファクトリエ」を立ち上げた。ファクトリエとは、「ファクトリー(工場)」と「アトリエ(集まる場所)」の造語。アパレル工場自らの“名前”が付いた商品を生み出すことで、新しい価値観として提案している。

「メイドインジャパン」復活を目標に掲げる背景には、国内のアパレル産業が直面する深刻な現状がある。ファクトリエのホームページから引用すると、アパレル製品の製造がコストの安い海外にシフトした結果、国内におけるアパレル品国産比率は1990年の50.1%から2009年には4.5%まで減少。世界の名だたるアパレルブランドは、メイドインジャパンへの信頼が高く、製造を日本の工場に委託しているケースがある一方で、世界から絶賛されるメイドインジャパンがまさに失われようとしている。アパレルだけでなく、ものづくり全般に言える、「赤字体質」、「下請け」、「若手不在」、「改善への意欲低下」といった「負のスパイラル」から脱却できない、山田氏はこの状況に強く危機感をいただき、ファクトリエの創業に至った。


工場と消費者を結び付ける「工場直販」でファクトリエは商品を提供。現在、国内50以上の工場と提携

現在、日本全国の厳選された50以上の工場と提携。工場が売上・利益を確保していくために中間業者を排除し、工場と消費者を結び付ける「工場直販」でファクトリエは商品を提供している。流通構造をシンプルにすることで、高品質な商品を従来の流通を通した場合の2分の1や3分の1というリーズナブルな価格で消費者に提供している。さらに、ファクトリエは工場が適正な利益を得られる仕組みも取り入れており、工場が出した原価の倍の価格で販売するという「販売価格の決定権」を工場に委ねている。つまり工場は、素材や縫製に徹底的にこだわり、さらに適正な利益も含んだ金額(原価)を設定できる。工場が原価を決めた時点で販売価格も決まるため、工場は価格の決定権を持つことになるが、これによって、工場に自主性が生まれ、下請けから脱却する一歩となる。

目指すは2030年までに国内アパレル産業従事者100万人、メイドインジャパンの復興

ベンチャー企業として数々の表彰を受けている山田氏であるが、軌道にのるまでは苦難の連続だったという。「ファクトリエの事業だけでは食べて行けず週末にアルバイトをして、夜行バスで地方に出掛け工場視察を行いました。近くの駅でタウンページを見て電話をかけて、ひとつひとつの工場へ直接訪問しました」と、通算600以上の工場を訪問した”現場主義”の原点を語った。「スーツの格好で工場のある農村を移動していたら、不審者に間違われ村内放送で注意喚起されたこともあった(笑)」と当時の苦労を語った。

山田氏は、工場と消費者であるお客様との距離を縮める弛まない努力を続けている。月に1回、職人とお客様が触れ合うイベントや、週末には工場の職人が店頭に立ち直接接客することで、お客様の声を聞く機会を得る機会も作っている。また、これまでは表に出ることが少なかったアパレル工場を訪問する”工場ツアー”や、提携工場で勤める若手と学生をつなぎ合わせる就活イベントも開催している。工場はこれまでメーカーから依頼された商品作りに専念していたため、高い技術はあるものの、販売は得意分野ではなかった。そこで、ファクトリエはこのように製造以外の部分を担うことで、お客様が知って、触れることのできる機会をつくる役割を担っている。

ファクトリエの販売は基本的にインターネット経由。銀座、横浜元町、名古屋・星が丘、熊本にある直営店で試着して購入することができるが、購入する場合でも、店舗に設置されたタブレット端末を使いネット経由で注文し、自宅に配送される。ネットとリアルを掛け合わせた仕組み。最近では”出張ファクトリエ”と呼ばれる取り組みも開始しており、「高品質な洋服の見極め方」などの勉強会を実施している。売上も確実に右肩上がりで成長しており、メイドインジャパンの工場も下請けから直売、赤字から黒字、若手不在から「20年ぶり採用」、意欲低下からモチベーションアップなど、「正のスパイラル」へと着実に歩み出している。 目指すは2030年までに、国内アパレル産業従事者を100万に増やすこと。そして、オリンピック日本代表選手団の公式ユニフォームをファクトリエのブランドでメイドインジャパンとして作り上げることと山田氏は講演を締めくくった。

認知症患者が少しでも暮らしやすい世界に - IoTの仕組みで見守りサービスを立ち上げ

次に講演を行った井上氏がソーシャルスタートアップに関わるようになったきっかけは身近に起こった出来事がきっかけだ。「祖母が認知症で、2年前に迷子になりました。どこにいるのか、元気でいるのか・・・祈る思いで探し回りました」と説明する。

井上氏は2016年3月にG&Sを設立した。「少しだけ優しい世界を創ろう」を理念に、同年10月、鍵や財布などに装着可能な小型デバイスとスマートフォンのアプリを連動させたIoT型の見守りサービス事業を開始した。「biblle(ビブル)」と名付けられたこのサービスは、小型デバイス「biblle tag」を大切なヒトに持ってもらったり、大切なモノにつけることで、「biblle app」と呼ばれるアプリから見守りができるようになる。およそ30から50メートル離れるとアプリ側でそれを感知し、離れていってしまっていることをアラームで知らせてくれる。(井上氏がG&Sを立ち上げた経緯などは、日本オラクル社員が語る、副業は「働き方改革」だけではない、「生活の仕方改革」をご覧ください)


日本オラクルに新卒社員として入社した井上憲氏は、同社の兼業制度を活用し、2016年にG&Sを創業。IoT型の見守りサービス事業「biblle(ビブル)」を開始

昨年11月には見守りネットワーク構築の実証プログラムを東京都三鷹市で実施、株式会社ジェーシービー、西日本電信電話株式会社(NTT西日本)の協力のもと、「biblle」で構築された「地域の見守りネットワーク」の体験プログラムとして認知症の方の徘徊捜索を模擬的に行い、100名強の一般市民の方が参加した。

2017年1月から、G&Sの起業理念に共感したnano・universeで「biblle tag」の販売を開始し数百個を売り切った。資金調達に活用したクラウド・ファンディングの返礼分と合わせると初回出荷は1,000個近くとなる。2月からはnono・universeの店舗およびWebサイトでも販売を開始している。

G&Sは8名の”仲間”で運営され、「全員が副業で、大学・大学院時代の友人が関わってくれている。全員30代でほぼ同年代」と説明する。8名の仲間が持つスキルは、アプル開発、システム開発、デバイス設計、マーケティング、サプライチェーンなどさまざまだ。

認知症の進行を予防する新たな取り組みを始動

井上氏は「デバイス単体での販売には利益はほとんど見越していない」としながらも、ソーシャルビジネスが着実なプロフィットを出すことがG&Sの社訓である「少しだけ優しい世界」の創造に必要不可欠だという。「NTT西日本が住宅向けに提供しているインターネットや動画をテレビで視聴できる端末でbiblleを検知するセンサーを試験的に導入した。その端末をケアサービス付き住宅に配布することで、住居者の出入りを感知することができる。その利用料は、実際のユーザーからではなくケアサービスの提供事業者から得ることで確実な収益モデルを構築することができる」と井上氏は説明する。

井上は認知症患者にとって暮らしやすい世界を創るのと同時に、認知症になる以前やなった後のケアも含めて、安心・安全な生活を行っていけるためのシステム開発を進めているという。