パーソナライズは、顧客またはオーディエンスの行動とニーズに関するインサイトに基づいて、エクスペリエンスをカスタマイズするものです。その目的は、カスタマー・エクスペリエンス(CX)を向上し、ビジネスの成果を上げることです。
急成長する企業はそうでない企業と比較して、パーソナライゼーションによって40%も多くの収益を得ている。- 2021年11月 McKinsey & Company
パーソナライゼーションは、単にデジタル・エクスペリエンスの向上だけでなく、苛立ちや疎外感と言ったネガティブな体験をさせないように考慮する必要があります。誰もが、マーケティングやサービスに関するメッセージにおいて、明らかに間違ったコミュニケーションや、コンテンツを受け取ったことがあるでしょう。
パーソナライズされたエクスペリエンスは素晴らしいものです。しかし、パーソナライズがうまくなされていないと、かえって顧客との関係を損なう恐れがあります。パーソナライゼーションは、少なくとも信頼性があり、顧客にとって重要かつコンテクストを意識した、デジタル・エクスペリエンスの創出を後押しするものであるべきです。おそらくさらに重要なことは、タイミングの悪い、調和のない、不快なメッセージによるブランド・ダメージを防止できることです。
パーソナライゼーションへの取り組みにおけるアプローチのひとつとして、パーソナライゼーションを3つの基本要素に分解するという方法があります。
コンテクストは、顧客が体験したことや、その内容が顧客の期待に沿っているかを理解する際に有用です。また、どのようなコンテンツや商品を推奨するかということも、コンテクストから把握することができます。コンテクストと、コンテクストがもたらすインテリジェンスは、迅速(理想としてはミリ秒以内)に提供されなくてはいけません。顧客が、自身の体験や企業からの推奨を関連性のあるものとみなす上で、このスピード感は必要不可欠なのです。コンテクストの重要度を最大化させるプロセスは、以下の3つのステップに分けることができます。
顧客データは、さまざまなソース(ウェブサイトのタグ、アプリ、取引システム、ロイヤルティ・プログラム、カスタマー・サービスソフトウェアなど)から取得され、共通化された信頼性の高い顧客プロファイルとして利用することができます。しかし、このデータの収集が1ミリ秒でも遅れると、データは陳腐化し、有用でなくなる可能性があります。また、顧客の同意やプライバシーに関する考慮事項に反する場合は、そのデータを使用してはいけません。そうしたデータは、そもそも収集すべきではなかったとも言えます。
収集・処理されたデータは、顧客の状況をリアルタイムに把握するために分析する必要があります。このように、どんな顧客が、どのような期待をしているかを把握し、カスタマー・エクスペリエンスのパーソナライズや、ルールとアルゴリズムを組み合わせてオーケストレーションを行うことで、最高のエクスペリエンスを実現することができます。そして、顧客とのタッチポイントの全てのデータを集約し、機械学習 (ML)を活用することで、顧客共通のジャーニーの理解や意図の把握、求める成果の最大化を実現することができます。
実際のエクスペリエンスの提供は、過小評価されるべきものではありません。適切なチャネルに、適切なタイミングで、適切なコンテンツを、大規模に配信するためには、自動化が必要不可欠です。さらに、パーソナライズする上で十分な情報がない場合(つまり、顧客がどのような人なのかについて十分な知識がない場合)は、パーソナライズせずに、デフォルトのエクスペリエンスに潔く舵を切ることも肝要です。
コンテンツをパーソナライズするには、デバイスや言語、チャネル、ジャーニーのステージ、時間、場所などのコンテキストとインテリジェンスが求められます。魅力的なコンテンツの構築・管理・配信においては、適切な戦略、プロセス、テクノロジーが必要です。
メタデータを改善し、アクセスを一元化して見つけやすくするだけで、既存のコンテンツをよりよいものにすることができます。また、アナリティクスを利用することで、コンテンツの利用状況や影響力を改善することができます。また、品質と一貫性を管理できる分散型のアプローチで、新規コンテンツの作成を迅速に、かつ自動化することができます。
パーソナライゼーション戦略において、重要な問いが2つあります。それは、「何を達成しようとしているのか」と、「達成したことをどのように確認するのか」ということです。その解がない場合、すべてのステークホルダーが納得する内容の合意に至るまでは、プロセスを中断する必要があるでしょう。
パーソナライゼーション戦略で求められる結果はさまざまですが、通常は以下3つのリストに分類することができます。
パーソナライゼーション戦略の多くは、マーケティングチームが主導する、成長に焦点を当てたものから始まります。しかし、パーソナライゼーション戦略には成熟曲線があります。第4の成果であるカスタマー・ロイヤルティと顧客生涯価値 (CLV)によってアプローチが定義されています。
残念ながら、パーソナライゼーションの成果の最適化には、ルールベースのシステム同様、人の意思決定力を大きく上回るものが求められます。複数の成果に対してパーソナライゼーション戦略を最適化するためには、AIやMLが必要です。AI/MLのアルゴリズムが必要なのは、膨大なデータと計算を処理しなくてはならないからです。そしてその実現は、人間の所要時間の数分の一で対応できてしまうものです。
最適化の複雑さが増すにつれて、アルゴリズムも高度化しなくてはなりません。そのためには、成熟したデータ・サイエンスのスキルと、戦略や規制要件に沿ったプログラムを維持するガバナンスも必要です。
データサイエンスのツールはパーソナライゼーションの実現において最適なツールです。しかし、こうしたツールはほとんどのマーケティング担当者にとっては手を出しづらいものです。しかし、その中でも、パーソナライズされたエクスペリエンスに向けた適切な戦略と、そのエクスペリエンスを可能にする適切なテクノロジーを必要としている担当者もいます。マーケティング担当者が求めているのは、大規模なパーソナライゼーションにも自動化によって対応でき、日常業務をサポートするパーソナライゼーション・ツールです。例としては、レコメンデーションやオーケストレーション、ターゲティング、テスト、測定などの業務が挙げられます。詳細は、次のとおりです。
マーケティング・チームがパーソナライズを推進する理由の大部分は、レコメンデーションと提案を実現するためです。Webサイトの「こちらもおすすめです」というセクションがよく知られているのは、このためです。これらのソリューションは、大量のコンテンツのインベントリ管理を行い、ルールとアルゴリズムを活用して、さまざまなチャネルとプラットフォーム(Web、モバイル、電子メール、検索結果など)に適切なコンテンツをプッシュします。また、各チャネルで最適なレコメンデーションが一貫して行われるようにします。
カートの中の商品をお忘れですか?お問い合わせフォームがそのままになっていませんか?異なるチャネルにまたがる複数のキャンペーンをパーソナライズするには、オーケストレーションが必要です。オーケストレーションは、単なる管理ツールではありません。マーケティング用のメッセージだけでなく、カスタマー・サービスなど、お客様とのコミュニケーションにおいて使用されるシステム間の繋がりと依存関係を管理します。
オーディエンスや顧客ターゲティングは、パーソナライゼーション戦略における成功に寄与します。ある群にとって有効なエクスペリエンスが、すべての人に有効なものとは限りません。そのため、特定のオーディエンスをターゲットにすることで、画一的なアプローチをとるよりも高いリターンを得ることができるのです。マーケティング・チームは、パーソナライゼーション・ツールにあるダイナミック・テンプレートとフィルターを活用し、適切な属性に基づいて調整し、1対1レベルの適切なエクスペリエンスを提供することができます。
最もインパクトのあるパーソナライゼーション戦略を決定する上で不可欠なのは、A/Bテスト と 多変量テストの両方が必要です。テストは、ほぼすべての種類のパーソナライズされたエクスペリエンスに対して行うことができます。これには、Webサイトをどのようにカスタマイズするか、どのようなEメール・コンテンツが特定の顧客とのエンゲージメント・レベルを最も高くするか、といったことが含まれます。何を検証するにしても、直感だけでなく、データに裏打ちされた判断ができるような、しっかりとしたアプローチが必要です。
さらに、テストは以下のことを留意して行う必要があります。
「測定できるものしか管理できない」というのは、ピーター・ドラッカーの言葉です。測定およびレポート作成ソリューションは、チャネル内またはチャネル間で、キャンペーンのバリエーション、成果の属性、機会の発見など、さまざまなレベルでデータを多面的に分析することができます。結果が出た後は、マーケティング担当者がステークホルダーと結果を共有し、全員が同じ見解を持つことで、正しい手順を踏んで、必要な軌道修正を行うことができるようにする必要があります。
パーソナライゼーションの実現には、多くの人が適切なツールやテクノロジーにアクセスできることが必要です。このような戦略はスピードが要求されるため、IT部門で実現することはもはや不可能です。しかし、良い知らせもあります。世の中には、ユーザーの使い勝手の良い、直感的なパーソナライゼーション・ツールも数多く存在します。
パーソナライゼーションの取り組みの一部は、さまざまなマーケティング・システムやCRMシステムで対応することができます。しかし、リアルタイムのパーソナライゼーションに特化して使えるアプリケーションでなければ、本当のパーソナライゼーション・ツールとは言えません。こうしたツールは、デジタル上の行動を収集・分析し、パーソナライズされたクロスチャネルのカスタマー・エクスペリエンスをリアルタイムに提供します。
Oracle Infinity Behavioral Intelligenceのパーソナライズ機能をご覧ください