アカウントベースド・マーケティング(ABM)とは

アカウントベースド・マーケティング(ABM)の定義

ABM戦略を少なくとも1年間実行した企業の60%は、そのおかげて収益が増加しています。」

需要メトリック: 「ABM導入ベンチマーク・レポート」(2015年9月

従来のB2Bマーケティングは、見込顧客の大きなグループに広く網を張って、リードを生成し、収益を上げるものでした。アカウントベースド・マーケティングは、よりターゲットを絞ったアプローチをとります。

ABMは、営業とマーケティングが一体となったB2Bマーケティングの的を絞った戦略的アプローチです。より多くのリードではなく、より適切なリードに焦点を当てます。ABMでは、マーケティング・リソースを特定のターゲット・アカウントとコンタクトに集中的に割り当てます。この高度にターゲットを絞った戦略では、マーケティング・チームとセールス・チームが連携し、アカウントの適切な人物に適切なメッセージとコンテンツを提供する必要があります。

アカウントベースド・マーケティングの仕組み

ABMの基本は、最も成功する機会の高いアカウントに焦点を絞り、それぞれを1つの市場として捉え、ターゲット・アカウントごとに、特定の人物をターゲットとします。一般的なインバウンドB2Bマーケティング・キャンペーンでは、可能な限り多くの潜在顧客に響くような、関連性が高く魅力的なコンテンツを提供します。一方、ABMキャンペーンでは、少数の高価値のアカウント(および主要な意思決定者)を対象に、パーソナライズされたコンテンツやメッセージングを提供します。

例えば、アカウントごとに関連性の高い高度にパーソナライズされたメールやコンテンツを提供し、最も興味を引きそうなイベントやオファーについてお知らせします。ABMでは、主要な意思決定者に直接マーケティングを行うことで、マーケティング担当者は、的を絞った効果的なアプローチをとることができます。そこからマーケティング担当者は、強固で継続的なビジネス関係を築き始めることができるのです。

どのクライアントや見込顧客を主要なアカウントとするかは、慎重に選ぶ必要があります。戦略的アカウントの条件を満たす人は多くありませんが、そのようなアカウントにのみABMの取り組みを集中させる必要があります。

優れたABMアカウントとは?

多くの営業・マーケティング担当者は、ABMキャンペーンで適切なアカウントをターゲット化することに苦労しています。

市場や業界によって基準は変わるかもしれませんが、理想的な戦略的アカウントは、最も収益が期待できるものであるべきです。ABMキャンペーンを実施するには、より多くのコストがかかるため、その投資の採算をあわせるためには、収益の可能性を確保する必要があります。

アカウントに関して、その他考慮すべきことは以下になります。

  • 過去の購入履歴および自社または競合会社との過去の取引関係
  • 営業ファネル内のポジション
  • 理想的な顧客像との一致

最後に、そのアカウントがあなたの目標達成に役立つものであるかどうかを確認する必要があります。より認知度の高いブランド・ロゴの獲得が必要なのか?一度失ったアカウントとの再エンゲージメントを図るべきか?地理的に、あるいは業界内で、フットプリントを拡大するべきか?

アカウントベースド・マーケティングとリード・ジェネレーションの違い

簡単に言えば、リード・ジェネレーションはアカウントベースド・マーケティングの構成要素であり、目標です。

リード・ジェネレーションとは、さまざまなマーケティング戦略を通じて、自社の製品、サービス、ブランドへの関心を喚起し、見込顧客を顧客に変えることを最終的な目標とするプロセスのことです。リードは、メール、ソーシャル・メディア、コンテンツ・シンジケーション、イベントなど、さまざまなチャネルで生成することができます。リードが生成されたら、すべてのリードにリード・スコアを割り当てて優先順位を付け、営業チームが焦点をしぼれるようにしましょう。

リード・ジェネレーションは、複数の業界にまたがるオーディエンスを対象に幅広く行なわれるのに対して、ABMは、いくつかの特定のアカウント内に存在するリードを生成することに重点をシフトします。目標は、これらのターゲット・アカウント内でフットプリントを広げ、さまざまなステークホルダーと効果的に関わることです。

リード・スコアリングとアカウントベースド・マーケティング

アカウントベースド・マーケティングにおいて、リード・スコアリングは重要な役割を果たします。ABMキャンペーンでリードが生成された際に、どの見込顧客とエンゲージメントするのが最適なのか、理解することが重要です。リード・スコアは、多くの場合、その人の行動データやエンゲージメント・データを使用して作成されます。スコアがあれば、アカウント内のリードに優先順位をつけ、誰が最も興味を持ち、購買意欲があるのか、より深く理解できます。

アカウントベースド・マーケティングのメリットとは?

ABM戦略を導入することで得られるメリットはたくさんあります。例えば以下のようなものがあります。

1

マーケティングと営業の連携

ABMでは、マーケティングと営業の両チームが集中的に取り組む必要がありますが、これを課題としている企業は多いでしょう。つまり、営業サイクル全体を通じてデータに基づく正しい意思決定が行われるように、ABMキャンペーンの開始時に営業とマーケティングが連携する必要があります。

2

ROIの向上

ABMは、従来のインバウンドやアウトバウンドのB2Bマーケティングキャンペーンと比べ、より正確で、よりターゲットが絞られ、よりパーソナライズされ、より精度が高くなります。そのため、B2Bマーケティング戦術の中で最も高いROIを生み出すと同時に、効率性もアップします。一般的なABMキャンペーンでは、オプトアウト数が少なく、レスポンス率が高くなります。

3

営業サイクルの短縮化

ABMでは、不適格な見込顧客をプロセスの非常に早い段階で排除するため、営業プロセスをスピードアップできます。マーケティング・チームと営業チームは、コンバージョンする可能性が最も高いアカウントに焦点を当て、そのアカウントに対し最もパーソナライズされた体験を提供することで、迅速なコンバージョンを促します。

ABMキャンペーンを成功させるには

ほとんどのABMキャンペーンは、以下のような基本的なガイドラインに沿って行われます。

  1. 目標を明確にし、マーケティングと営業を横断した行動計画を考案します。このステップの最後には、少なくともスケジュール、予算、成功を測るための主要業績評価指標(KPI)を決定しましょう。
  2. マーケティングを行いたいターゲット・アカウントを選択し、どのようにエンゲージメントするのかを決定します。適切なデータと、適切なマーケティング・チャネルを確保し、これらのアカウントと、どのようにコミュニケーションをとるかについての、適切なインサイトが得られたかを確認してください。
  3. 主要なステークホルダーを特定することで、アカウント内でのフットプリントを拡大します。ターゲットに合わせた、ステークホルダー用のコンテンツやメッセージングを作成します。
  4. アカウント内の適切なインフルエンサーに、タイムリーでパーソナライズされたメッセージングを提供しましょう。
  5. 活動の結果を測定します。インサイトを活用して、クロスセルやアップセルの機会に向けて支持者をふやしましょう。
  6. ABMキャンペーンの指標を確認し、調整し、最適化します。

ABMのKPI

  • マーケティング適格リード・マーケティング適格アカウント
  • リード単価
  • ページ滞在時間(デジタル・アセットのエンゲージメントの場合)
  • メール開封・返信率
  • アカウントごとの追加コンタクト数
  • アカウント別エンゲージメント(率)
  • パイプライン速度
  • マーケティング影響率
  • ファネル内のコンバージョン率
  • アカウントごとの営業会議・予約数
  • 提案書の送付数
  • 成約率・解約率
  • 平均販売価格・セールスポイント

BMC社の、ターゲットを絞ったB2Bマーケティングにおける最上位アカウントとのエンゲージメント方法

BMC Software社は、強固なアカウントベースド・マーケティング(ABM)戦略に則り、ターゲットを絞ったB2Bマーケティングとオラクル・ソリューションを使用して、トップクラスのアカウントとのエンゲージメントを拡大しました。

ABMにおいて、顧客データが担う役割とは

ABMユーザーの70%が、営業チームとマーケティング・チームはほぼ、または完全に連携していると報告しているのに対し、非ABMユーザーではその数字が51%となっています」

需要メトリック: 「ABM導入ベンチマーク・レポート」(2015年9月

アカウントベースド・マーケティングは、適切なアカウントを対象としなければ効果がありません。顧客データ管理は、ABMにおいて重要な役割を担っています。

ABMキャンペーンを成功させるためには、まず顧客データを評価し、理想的なカスタマー・プロファイル(ICP)を作成することから始めましょう。そのプロファイルがあれば、アカウントに優先順位をつけ、ABMキャンペーンでターゲットにするアカウントを決定できます。理想の顧客を持つことは、次の2点において有効です。

1.アカウント・リストを企業別にフィルタリングし、既知のコンタクトに対してよりターゲットを絞ったキャンペーンを実施することで、エンゲージメントとROIを促進できます。このようなキャンペーンには、収益や地域ごとにセグメント化された顧客やアカウントを追加して使用できます。

2.また、アカウント内で、デジタル・プロパティやアセットを訪問した匿名のユーザーとエンゲージメントすることも可能です。データ管理プラットフォーム(DMP)を使用しての、ルックアライク・モデリング、アクトアライク・マーケティング、オーディエンス・プロファイル分析により、ユーザー・データを活性化し、ユーザーとエンゲージメントするためのアウトリーチ・プログラムを開発できます。例えば、これらの匿名ユーザーがデジタル広告をクリックすると、カスタマイズされたランディング・ページが開きます。この体験は、ユーザーのために特別にパーソナライズされているので、ユーザーはブランドが取ってほしい活動をとる可能性が高くなり、これら匿名の訪問者をCRMで表示可能な既知の見込顧客に変えることができます。そして、その見込顧客がセールス・リードとしてふさわしいかを見極めるための、プロファイルを作成する機会を増やすことができます。

コンテンツ・マーケティングとABMの連携について

コンテンツ・マーケティングは、戦略的なマーケティング手法であり、見込顧客を魅了し、育成するために、価値や関連性がある一貫したコンテンツを作成し、配信することに重点を置いています。

ABMではコンテンツが大きな役割を果たします。ABMではすべてが高度にパーソナライズされているため、そのコンテンツの管理がより重要です。たとえば、業界固有のコンテンツを作成し(一般的なインバウンド・キャンペーンでは作成しません)、マーケティングおよび営業活動を横断してそのコンテンツを管理することで、カスタマー・エクスペリエンス(CX)が営業サイクル内で一貫して保たれるようにする必要があります。

アカウントベースド・マーケティングのためのコンテンツ目標

インパクトのあるコンテンツを作るには、目標を明確にすることです。多くのマーケティング・コンテンツでは、共有数、フォロワー数、トラフィックの増加といったソフトな指標が正しい指標と言えますが、ターゲットを絞ったABMでは、パイプライン速度、リード生成、収益の増加といった、より具体的な指標が必要となります。

営業とマーケティングの連携およびABM

マーケティングと営業が完全に連携していなければ、ABMキャンペーンはうまくいきません。一般的に、マーケティングと営業はサイロ化された状態で活動しており、対立が生じることがあります。両チームとも「売上」という同じ目標に向かっていることを忘れ、特定のKPIにしか目を向けていない可能性があります。マーケティングの役割は、ターゲットとなる顧客を説得し、行動を起こしてもらうための活動を行うことで、営業の役割は、人と人とのつながりを構築し、取引を成立させるための活動を行うことです。

ABMキャンペーンでは、各チームの役割を明確に定義する必要があります。例えば、マーケティングは、まず営業から重要なインサイトを得なければ、重要な見込顧客に向けたコンテンツを作成することはできません。営業以上にターゲットとなる顧客のことをよく理解している人はいません。また、営業からのインプットによって、生成されたリードが強力なリードであると確実にわかります。

さらに細かく言うと、マーケティング・チームは以下のことに注力するべきでしょう。

  • 高品質なコンテンツを開発し、営業が必要なコンテンツに容易にアクセスできるように管理する。
  • キャンペーンがどのように機能するか、営業チームに時間をかけて説明する
  • 信頼性の高いリード・スコアリング・システムを使用し、質の高いリードをタイムリーに営業に送り出す

営業チームは以下のことに注力するべきでしょう。

  • マーケティング・チームから送られてくるリードに対し、タイムリーな対応をとる
  • 顧客からの異議やメッセージング・ギャップをマーケティングチームに伝える
  • 営業取引の成功・不成功の理由と方法について透明性を確保する

ABM戦略を最適化するには

ABM戦略を最適化するには

ABM戦略の導入は、企業にとって一面的な変革ではありません。それは、運営方法への技術的、戦術的、そして文化的なコミットメントを要する変革です。

技術的には、マーケティング担当者が特定のアカウントをターゲットにして、キャンペーンとアセットの両方を調整し、セールス・リードを営業チームに効率的に送り出せるよう、企業の営業とマーケティングのシステムを設定する必要があります。戦術的には、理想的な顧客プロファイルに照らし合わせてアカウントをスコアリングする必要があります。文化的には、営業チームとマーケティングチームが一体となって取り組む必要があります。

マーケティング・クラウド・ソリューションは、アカウントベースド・マーケティングにどのように役立つのでしょうか?

マーケティング・オートメーション・プラットフォームを中核とするマーケティング・クラウド・ソリューションは、ABM戦略の導入をサポートします。理想的には、マーケティング・キャンペーンの構築、リードのスコアリングと管理、コンテンツの作成と管理、そしてキャンペーンの成功度を測定できるソリューションが必要でしょう。

セールス・クラウド・ソリューションは、アカウントベースド・マーケティングにどのように役立つのでしょうか?

CRMを中心としたセールス・クラウドでは、営業チームが営業サイクルを通じて見込顧客と関わる際に、見込顧客についてより深く理解できます。営業担当者は、アカウントに最も関与しているステークホルダーを把握し、誰がどのコンテンツ、メール、ランディングページに接触したかを確認できます。