日本オラクル特集記事

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DMP(データマネジメントプラットフォーム)の仕組みと導入のポイント

 

DMP利用で、顧客マーケティング最適化を図る

ここ数年、データマネジメントプラットフォーム(DMP)というキーワードが話題になっている。DMPを広義に定義すると、マーケティングのためのビッグデータ活用の仕組みと言える。ただ近年のDMPへの関心増加に伴い、多様なベンダーやサービスプロバイダーが異なる領域でDMPと名のつく製品やサービスを提供しており、製品の違いがわかりづらくなっている。この記事では、特にデジタルマーケティングの領域を扱う。その分野にどのようなDMPがあり、どう活用できるか、事例を含めて考えていこう。

マーケター向けとパブリッシャー向け、2つのDMPの違い

DMPを利用者の違いにより区分すると、マーケター向けとパブリッシャー向けの2つに分けることができる。

マーケター向けDMPとは、ECサイトのように自社の製品・サービスのマーケティングを目的としてDMPを利用する場合である。

これに対してパブリッシャー向けのDMPとは、オンラインメディアを持つ企業が利用するもので、ポータルサイトやニュースサイトのような自社のメディアで広告主が掲載する広告を表示する際に、その広告のパフォーマンスが良くなるようにDMPを利用するものである。たとえば自社メディアに訪問したユーザーのプロファイルから男性・女性ごとに広告のメッセージを変えてあげることにより広告の効率を良くし、自社メディアの広告枠の価値を上げていこうというものである。

これとはまた別の切り口で、そもそもの成り立ちからも分類することができる。たとえば広告配信プラットフォームであるDSP(デマンドサイドプラットフォーム)のサービスから始まって、それにDMPの機能を拡張していったタイプのDMP、サードパーティーデータのエクスチェンジを行うマーケットプレイスから派生したDMP、タグマネジメントの仕組みから生まれたDMPなど複数のタイプが存在し、それぞれに特徴がある。

マーケター向けDMPの3つの機能

では次に、一般的なマーケター向けのDMPがどのような仕組みとなっているか説明する。

マーケター向けDMPの目的は、広告主がオンラインで行う広告のパフォーマンスの最適化である。そのためにDMPでは、次の図の中の左側から右側に向かってあるように「データ・イン」、「データ統合」、「データ・アウト」の3つの機能を持っており、それぞれ以下のようなことを行っている。

「データ・イン」:マーケティングデータの収集

ここでは、マーケティングに必要となるさまざまなデータの収集を行う。

その際、ユーザーのWebサイトへのアクセスログのようなオンラインデータだけでなく、従来からあるCRMなどに入っているような顧客の属性情報、リアル店舗での売上情報などのオフラインデータも含めて収集を行う。

ここで収集されるデータは、そのデータの所有者によって3つのタイプ(ファースト、セカンド、サードパーティーのデータ)に分けられる。

ファーストパーティーデータとは、自社所有データで、これには自社のWebサイトへのアクセスから、自社保有ユーザーデータベースにある顧客のプロファイルデータなども含まれる。

セカンドパーティーデータとは、自社とパートナー関係にある会社と相互に共有するデータである。一般的なケースでは、メーカーと販売代理店のように、協業関係にある企業間でデータの共有を行う。

サードパーティーデータとは、自社やパートナー企業以外の第三者から購入可能なデータのこと。このようなデータを提供するデータプロバイダー企業は、ユーザーからあらかじめパーミッションを取得した上で、収集データを他の企業のマーケティング目的に提供するものである。

この「データ・イン」では、マーケティング活動に必要となる正確なデータをいかに複数のデータソースから迅速に収集できるようにし、それらを関連づけていくかが重要となる。

「データ統合」:ターゲットのセグメンテーション

「データ・イン」で収集されたデータは、整理・統合されDMPの内部に保存される。デジタルマーケティングで利用されるDMPには、ユーザー個人を特定できるような氏名、住所、メールアドレスなどの情報を通常は持たず、代わりにCookieのような情報をキーとして、「データ・イン」から収集したデータを紐づけて管理される。

そして次のステージである「データ・アウト」での広告出稿先で利用できるよう、ターゲットオーディエンスのセグメンテーションを行う。

このセグメンテーションには、「データ・イン」から取り込んだ年齢、性別のようなユーザー属性情報のほかに、Webサイトへのアクセス情報を利用することも可能である。たとえば、作成するセグメントとして、”20代の女性で、自社のECサイトに最近訪問して春物コートの情報を閲覧したユーザー”のように定義することができる。このときサードパーティーデータを利用すると、この条件に加えて”最近、他のWebサイトでファッション関係の情報を閲覧していた”などの条件を付け加えることができ、より詳細なターゲティングが可能となる。

「データ・アウト」:ターゲットへのメッセージ発信

最後の「データ・アウト」は、作成したターゲットユーザーのセグメントに対して、実際に各種広告媒体やデジタルメディアを利用してメッセージを届ける役割となる。

出力先は、ディスプレイ広告、検索、モバイル、ソーシャルなどの媒体広告や、メールによるメッセージ配信、自社Webサイトに来訪したユーザーに対しての動的コンテンツ切り替え表示がある。

DMPが他のビッグデータと大きく異なる点の1つとして、こうしたデジタルメディアに対する接続の容易性が挙げられる。

DMPの実際の活用事例:オンライン広告最適化

このような仕組みを利用したDMPが実際にどのような活用方法をされているかについて説明する。

たとえば、米国の某通信キャリアでは、DMPを利用してオンライン広告の最適化を行っている。日本の通信マーケット同様、米国でもこのマーケットは数社の企業による寡占状態であり、マーケットには既に自社のサービスを利用しているユーザーが多数いる。このような状態で、他の通信キャリアのサービスから自社サービスに乗り換えを即すキャンペーンを行った場合、適切なセグメンテーションをしなければ、既に自社サービスを利用しているユーザーに対しても広告が多く表示されることになり、無駄になってしまう。

DMPを利用して、このようなユーザーを広告表示ターゲットから外すことで、無駄になっていた広告費の大幅削減が可能となり、自社顧客には、乗り換えではなく追加サービス購入を即すようなメッセージを出すことで、より売上向上が見込めることになる。

DMP導入のキーポイントは3つある

今後DMPを有効活用していくためには、これまで自社内に存在していたがマーケティング目的で利用できていなかったデータや社外のデータソースをどう活用するか、知見を貯めていく必要がある。これにより、以前はわからなかった消費者のより深い趣味・趣向や行動、ライフスタイルの変化をとらえることができるようになる。

また最近のデジタルマーケティングでは、Webサイト、モバイルデバイス、Eメールなど複数のコンタクトポイントにまたがって、ユーザーとの接点を持つことが多い。DMPからさまざまな広告媒体やデジタルメディアに対して接続でき、適切なタイミングで適切なチャネルを通じてメッセージを届けることが、広告のパフォーマンスを上げていくために必要となる。

このようなクロスチャネルでのユーザーアプローチを考える際には、マーケティング組織がWeb担当、メール担当、ディスプレイ担当などと縦割りの組織構造になっていると、全体最適が難しい。そのため組織横断で顧客体験を最大化するよう、DMPをどう活用するか、考えていく役割も必要となる。

そのような意味から、DMP導入は“体制論” に至ることがしばしばあり、大掛かりになりがちである。大掛かりになれば、たちまち進捗が遅くなり頓挫してしまう流れは、想像に難くないだろう。

DMP導入のキーポイントを整理してみよう。大まかに言って、ポイントは次の3点になる。1「ミニマムスタート」、2「可視化」、3「コミュニケーションプランニング」だ。

キーポイント1「ミニマムスタート」で成功事例を積む

企業内でデータ活用の知見を蓄積するには、意思決定サイクルをクイックかつ数多く回すことが重要である。

いきなりすべてのデータ統合を推し進めるのではなく、“小さな成功事例”作りから始めることをお勧めする。成功事例を持つことで社内の他部署への協力要請がしやすくなり、同軸の施策の横展開がしやすくなる。

ほとんどの企業において、初期段階でDMP導入によって得られる費用対効果を正確に予測するのは、まず不可能だ。それでも“小さな事例”は、全体の費用対効果予測を精緻化させる一助になるだろう。

キーポイント2「可視化」でPDCAを回す

アクセスログや広告効果測定のみで、顧客を理解したつもりになっていないだろうか? 重要なのは情報ソースの数や種類ではなく、顧客の行動を把握し、“姿”を知ることである。

そのためにありとあらゆるデータが必要か? というと、そうではない。あくまで目的は、データから顧客とのコミュニケーションを設計するための根拠を得ることだ。

肌感を数値化し、顧客の姿を可視化することで、DMP運用のPDCAは可能になる。

キーポイント3「コミュニケーションプランニング」で接触の有効性を高める

顧客の姿が見えてきたら、それぞれ特性を持った顧客に対して“どのように接触したいか”考える。これが、プランニングと呼ばれる役割である。

筆者が現場でよく目にするのは、こういったプランニングなしに実行フェーズに入ろうとするプロジェクトだ。

“どんな人かが分かれば、何をするか考えることができる”というのが、DMPの基本概念になる。何をするか整理せずに顧客と接触してしまっては、DMPの本領が発揮できるはずもない。

個別化された「顧客との接触の形」は、その企業の顧客に対する姿勢や哲学を示すものになるだろう。プランニングの試行錯誤こそが、企業のデータ活用の知見を蓄積するために最も重要なファクターである。

以上3点が、DMP導入のキーポイントだ。マーケティングフローを考える上で基本的な流れではあるものの、現場は、テクノロジーが絡むことで手法論に陥りがちになる。この3点を参考に、デジタルマーケティングをぜひ実りあるものにして頂ければと思う。

なお、マーケティングに必要なデータをどのように整理して、活用するかの詳細な手法についてはこちらの「データ・マネジメント 強力なマーケティング構築のためのガイドブック」(※)も参照いただきたい。

※参照先Webサイト: http://demand.eloqua.com/LP=5519

中嶋 祐一(なかじま ゆういち)
日本オラクル株式会社
オラクルマーケティングクラウド
シニアソリューションコンサルタント

国内のWebテクノロジー企業、外資系スタートアップ企業を経て、2014年1月Responsysに参加。オラクルよるResponsysの買収により、2014年4月よりオラクルマーケティングクラウドにて、Oracle Data Management Platform(旧BlueKai)、Oracle Cross-Channel Marketing (旧Responsys、Elouqa)などの推進を行う。
福田 晃仁(ふくだ あきひと)
日本オラクル株式会社
オラクルマーケティングクラウド
プリンシパルソリューションコンサルタント

国内売上上位ECサイトの購買分析を多数担当。事業分析から施策とインフラ設計を行い、戦略構築支援を行うDMPコンサルタントを経て、現在、オラクルマーケティングクラウドの日本のOracle Data Management Platform(旧BlueKai)を担当する。